第61話 準備、そして出発
ふぅ……山頂の満月湖へ向かう前にお札とか補給しておかないと。しかし上から神社を襲撃されなかったのは運が良かった、いや、ワザと行わなかっただけなのかな? ともかくクロや村の人達が無事で何よりです。
正面から襲撃を受けた形跡はありますが被害は軽微……鳥居や灯篭、石段の一部が壊れてるくらいです、クロや華ちゃん達が迎撃してくれたのでしょう。
おっと、到着と同時に二人が出迎えてくれました。
「マコト様! ご無事で……す、か? 」
『おぅおぅ元気そうで何よりだ……雰囲気変わったか? 』
二人とも私の姿を見て少し戸惑っていますね、何があったのか簡単に説明を……しようとしましたがシロがそれを制止、クロと二人きりで話をしたいと言われると私の中から姿を現し、クロの耳を掴んで引っ張っていきます。
「痛ッ!? イタタタタッ! し、シロ、自分で歩くから耳を引っ張らないで! 」
『……何かあったのか? 』
「えっと、実はですね――」
とりあえず華ちゃんに説明をしましょう、事の経緯を話し終わると彼女は難しそうな表情をしていました。考えているのは"元土地神が何故戻ってきたのか"と"土地神を墜とした存在"についての様です。
一つ目については相手に聞いてみないと分かりませんが、世界征服の第一歩をこの村から始めようとしてるのでは? と答えてみたら呆れられました。そして二つ目、こっちは皆目見当もつきません……予測を立てようにも机上の空論です。まぁ神様を墜とすくらいですし、相当力を持った人間か妖怪のどちらか、または同じ神様なのか。
『フム、その中だと神と言う線があるかもしれんな。ヤツと戦う際に聞き出すしかないだろう』
『せやねぇ、一緒に頑張ろうねマコトちゃん』
「あの、可能でしたら華ちゃんも一緒に来てもらえませんか? 」
安全が確保されたわけではないのであまり守りを薄くはしたくないのですが、此処は結界の札を新しくして、あとはクロとシズクさんで何とかなるかと思うんです。私の考える最善の案なのですが、華ちゃんは考え込んでいます。
『……そうだな、戦える奴は残しておかねばならん。守りの戦いに関してはクロに任せても問題は無いだろう、八頭は治療中だが戦闘の補助位はできると言ってる、彼女にはシズクの補助を頼むとしよう』
どうやら華ちゃんは一緒に来てくれるみたいです、流石に私も宮本武蔵のような二刀流はできませんので状況を見て華ちゃんと水ちゃんを使い分けるとしましょう。
おや、クロ達も戻ってきましたね。彼は少し浮かない顔をしてますが……あ、シロに小突かれて表情を変えました。少しぎこちないですが微笑んでくれてます。
「そちらの話は終わりましたか? 」
『あぁ問題ない。後はヤツを倒しに行くだけだ……気合いを入れろよ、主殿』
「華ちゃんと話したのですが、此処の守りは――」
「……」
「クロ? 」
「え、あッ! はい、大丈夫ですッ、お任せください! 」
私の話を半分も聞いていない感じですね。シロから小突かれたり、耳を引っ張られたりしてますが一瞬明るくなってはすぐに暗くなります。やはり私達の事が心配なのかな?
フム……シロには一旦落ち着いてもらって、クロを安心させましょう。
「クロ、おいで」
「え、えええ!? 」
おや? 私が間違ってたのかな、落ち着かせるにはハグするのが一番と本で読んだのですが……手を広げてジリジリと近づいてますがその分クロも後退するので膠着状態に。このままだと小動物を襲おうとしている熊にしか見えないじゃないですか、少し強引にですが――
ギュッ
「あわ、あわわわわ……」
「クロ、大丈夫です。私達はちゃんと戻ってきますし、貴方にはその為に此処を護ってもらいたいんです」
「わわわ、分かりました! 分かりましたので一度離れて――」
む、なにやら鼓動が早くなりましたね。ハグする力が足りなかったのかな?
「……少し強めに抱き着いたら気絶してしまいました」
『あらあら、こんなん見せられたらコッチが火傷しそうや』
『阿呆、クロも男だぞ? 少しは考えろ』
目覚めたクロに再度説明した後、私達は満月湖に向けて出発する事になりました。出発の直前にクロが刀の鍔を渡してくれましたが、おそらく離れていても一緒に戦ってると伝えたかったのでしょう。
道中はやはり多くの物ノ怪と遭遇しました……餓鬼、妖蜘蛛、空飛ぶ骸骨、死人、余程私達を近づけたくないのでしょう。森の中なので華ちゃんの能力は使えませんが、この程度の相手ならば使わなくても問題はありません。水ちゃんも水の刃で援護してくれた事もあったので特に止まる事もなく進めました。厄介だったと言えば色の濃い物ノ怪でしょうかね、どうやら共食いをする事で強化された個体のようです。俊敏さや力、防御面は上昇しているようですが、肝心の知力は残念なようでした。
まぁ物ノ怪の他にも落とし穴や丸太、蜘蛛の巣等の罠もありましたがどれも自滅してましたね……私が上司だったら頭が痛くなりそうです。
そして満月湖に到着すると、その中央には自称土地神の暗鬼さんがスサノさんの腕を掴んで持ち上げ、何かを指示している姿がありました。
あけましておめでとうございます、作者のKUMAです。
今回は少し短めですが、決戦前の準備と言う事で話を書いてみました。……まぁ道中は省略しましたが、到着した満月湖にて元土地神だった暗鬼が何かをしようとしている所でしたね。一応捕捉ですが、彼を初めの方ではギシンと呼んでましたが、堕ちて変異してしまった事で暗鬼と名を変えた感じになります。
出発直前にクロが刀の鍔を渡した意味、そして彼はスサノを使って何をしようとしてるのでしょうかねぇ……しかし、これ以上お話するとネタバレになってしまいますので次回の話をお待ちください。
今回の後書きはこれ位に……また機会があれば次回の後書きでお会いしましょう。
ではでは~




