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土地神ライフ  作者: KUMA
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第60話 圧倒的な力


 さてさて、シロと一心同体を成してパワーアップしたんですがどのように戦いましょうか? 正直な事を言いますと薙刀はほとんど使った事がありません。中学生くらいの時に似たような長さの物干し竿を振ったくらいですかね……あ、いえ、此方に来てから丁度良い感じの木の棒を見つけて神社の裏で振りまわしました。それをシロに見られてからかわれたんだっけ。


『ふむ、そんな事もあったな主殿。しかし心配するな、薙刀を振るう際はアチキが補助を入れよう』

『ほいなら攻撃面はシロちゃんに任せた方が良さそうやねぇ、ウチは霊力の調整と防御に気ぃ配っとくわ』


 自分の中で二人の声が聞こえてくるのは不思議な感覚です。シロと水ちゃんは初対面のはずですが、特に意見が衝突する事も無く作戦は決まっていきます。どうやら私はガンガン前に出れば良いみたい、相手が弾幕を展開しても水ちゃんが撃ち落とし、接近した相手は薙刀で薙ぎ払ったりお札で対処すると……おっと、そろそろシロ(偽)も我慢の限界のご様子。犬歯むき出しで此方を睨みつけています、何やら黒いオーラみたいなのも出てますね。


「そ、そんなに怒らないでくださいよ」

「五月蠅い、ちょっと姿が変わっただけで強くなったつもりか? ……ならば、その力を見せてみろ! 」


 シロ(偽)は武器に力を溜めながら接近してきます、薙刀の刃には黒い靄の様なモノが宿っています。十分な距離を詰める前に武器を振るうと黒い刃が放出されました。それは近づくにつれて分裂していき、無数の刃となってこちらに迫ってきます。

 あれはシロの使う真神流薙刀術(まがみりゅうなぎなたじゅつ)の壱ノ段、繊月(せんげつ)と言う技の様です。本来は霊力の刃を1つ放出するのですが、相手はそれを瘴気で代用したことで変化したのだろうと説明してくれました。


 私に宿る彼女は同じ技を使うように言ってきます、まずは慣らしだそうです。すると薙刀を持つ腕が引っ張られるような感覚が……逆らって力を入れずに身を委ねるように指示を受けました。


『アチキと主殿ならあの程度"へ"でも無いわ! 』

「わ、わわわ……身体が勝手に動くと言うのは不思議な感覚ですね」

『薙刀へ霊力を送れ、水那斬!』

『はいはい……せや、シロちゃんも気軽に"水ちゃん"って呼んでもええんよ? 』

『今はそれどころではないだろう? まぁ、全部終わったら考える』


 戦闘中というのになんとマイペースな会話を……技の構えが整うと薙刀に霊力が供給され、刃に青白い光が宿ります。十分に溜まると薙刀を横に振るい、霊力の刃を放出……数は1つだけですが言葉の通り大きさが違う。


「ッ!? 」


二つの技はぶつかりましたが私達の放った繊月はシロ(偽)の分裂した繊月を全て飲み込み、勢いは衰えることなく進んでいきます。相手はこの攻撃を防御不可と判断したからか上方向に軌道を変えて回避、繊月が地面に当たると大きな亀裂を作りました。


『む、避けたか』

『アンタを基に作られたんやろ、アレぐらい当然やないの? 』

『まぁそうなんだがな。しかし今ので大体の性能は分かった、次は外さんぞ主殿』

「は、はいッ! 」


 えっと二人で勝手に会話を進めているようですが、村を直すの私なんですよ? 後々の事も考えて被害を大きくしたくはないと伝えると二人は口を揃えて"多少壊れるのは仕方がない"と言ってきました。さらに水ちゃんは周囲に人の気配は全く無いから安心して力を振るってほしいと……私は静かに頷く事しかできませんでした。


 さてここからは技の出し合いが始まります。基本は後攻めになりますが、同じ技を使って対処し体勢を崩した所に一撃を与え離脱するのを繰り返す感じですね。一通りの技を出しましたが威力は全て此方が上……まぁ1対3ですからね、当然の結果なのでしょう。

 さすがに不利と感じたシロ(偽)は瘴気の弾幕を展開しながら逃走を試みます。


「一度撤退して――」

「逃がしません! 」

「なぁ!? 」


瞬時に回り込んで腹部へ蹴りを放ち、くの字なっている所を薙刀ではたき落としました。相手には瞬間移動したかのように見えたのかもしれませんが、ちゃんと弾幕の間を進んできたんですよ? まぁシロが突っ込んだ方が早いって言ったから実行したんですがね……しかし普通の状態では絶対に不可能な行動ですよ、まず弾幕が遅く見えるなんてありませんから。基礎能力が全体的にググーンと伸びているからでしょう。


「ぬ、ぐぅぅぅ……」

『我ながらしぶといな』

『油断はアカンよ、どうやら変化(へんげ)するみたいや』


「ウォォォォォッ!! 」

 

シロ(偽)は叫びながら立ち上がると空を仰ぐように身体を逸らせました、骨が割れる音、軋む音、肉が千切れるなど不快な音が聞こえてきます。見る見るうちに身体は変わっていき、相手の姿は人と獣の中間ともいえる状態となりましたよ。あの顔つきは柴犬と言うよりは狼ですね……えっと、たしか海外に似たような妖怪が居たような気がします。


「あれは狼男……いえ、狼女でしょうか? 」

『どちらでも良いだろう。それよりも見ろ、奴は最後の賭けなのか大技を仕掛けてくるつもりらしい』


 シロは流派の七ノ段、中秋名月を使ってくると推測……予想は当たっているみたいで、溜めが長い。接近して中断させる事も可能ですが、姿を変えて使う事に嫌な予感がします。例えば近づいて、間合いに入った瞬間に中断してガブリとかね。

 となれば此方も同じ技で迎え撃つのが最善なのでしょう、この事に対して二人も賛成してくれます。薙刀を構え、霊力を集中させると青白い光はやがて金色へと変わり始めます。従来であれば回転を利用して増幅させたり、その場で長い溜めを行っていたようですが、この状態ではそのような事をしなくても簡単に溜まるそうですよ。


『主殿、これはまだ1段階目。確実に仕留めるならば最大火力を狙うべきだ』

「それはどれくらいで溜まりますか? 」

『一心同体の状態ならば三分程、そしてアチキは水那斬と共に霊力の調整を行う事になる』


 その間は二人からの支援は得られないと。フム、ここが踏ん張りどころみたい。

 水ちゃんに確認を取りましたが霊刀の力の使用方法は通常時と同じとの事、皆さんに分かり易く言いますと脳内でイメージをする……壁を思い浮かべれば水の壁が攻撃を防ぎ、槍を思い浮かべれば水の槍が敵を貫く、と言った感じですね。


「……大丈夫、何とかしてみせます」

『よし、では任せ――』

「グルルルッ! ウォォォォォォンっ!! 」


 彼女が"任せた"と言い切る前に相手は宙を蹴りながら接近してきました、どうやら此方の狙いは分っているみたいですね。霊力が溜まりきる前に仕掛けて技を中断させる、あわよくば命を奪うといった所でしょう。

 私は周囲に水の刀や槍を展開し、シロ(偽)に射出……しかしさすがにこの程度の攻撃では止まりません、薙刀ではなく瘴気を纏わせた腕を振るって撃ち落としながらグングン近づいてきますね。


「じゃあこれは防げますか? 」


 片腕を上げ、私の真上に巨大な水球が出現させます。そこに複数のお札を投入し、水球から計八本の水流がシロ(偽)目がけて放出されました。

 途中でお札を起動させると、炎と螺旋を描く水流や、岩や木、氷の混じった水流、内部で風を発生させて水の刃を形成させた水流、雷を纏った水流等々……出し惜しみ無しです。


「くッ……この程度! 」


 相手は強気な口調で攻撃を避けていますが、こちらの複雑な軌道に対応できず徐々に被弾し始めました。あっという間に押し流され地面へと押し付けられたようです、そしてこのタイミングでシロ達から準備が整ったと報告が来ました。

 薙刀を見ると刃を覆う金色の光は更に輝きを増し、収まりきらない霊力は細かい粒子となって溢れ出ています。


「二人とも、行きますよ! 」

『思いっ切りかましてやれ、主殿』

『一発ドーンと決めてきぃや』


 光輝く薙刀を両手で持ち、技の構えを取り狙いを定めるとその場から

 シロ(偽)はなんとか体勢を持ち直し、迎撃として瘴気の弾幕を放ちますが狙いが定まっていない様子……当たりそうなモノだけ避け、遂に間合いに入り込みました。

 

「これで、終わりです! 」

「死んで、たまるかぁぁぁぁ!! 」


 黒と金、二つの刃が衝突すると火花のような光が激しく撒き散らされます。おそらく相反する力が相殺し合っているのでしょう。シロ(偽)の気迫は凄まじく、それに呼応するかのように刃から溢れる瘴気は激しさを増します……しかし出力は此方の方が遥かに上の様です。


「たぁぁぁぁぁッ!! 」

「ガフっ!? 」


 押し込む力を強めると徐々に喰い込んでいき、半分ほど進むと相手の武器は限界を迎え、ヒビが入る間もなく砕け散ります。同時にそのまま薙刀を振るうとシロ(偽)の身体を袈裟斬りにし、後方へと斬り抜ける形となりました。


 薙刀の血を掃って振り向くとシロ(偽)はそのまま倒れ、全身が黒く染まると少しずつ塵となって消えていく様子が見えました。


「……終わったの、かな? 」

『あぁ、アチキ達の勝利だ。だが感傷に浸っている暇はないぞ、次はヒノモト山の山頂……満月湖に向かうんだ』


 シロの話が終わると身体が勝手に浮き上がります、どうやら彼女が動かしているようですね。しかしこのまま突っ込むのは得策ではないと思った私は一度神社で降りてもらうように頼みました。

 とても嫌そうな顔をしていましたが万全の準備をしていくべきと進言すると、渋々了承してくれます。くれぐれもクロには見つからないようにと言われましたが……何か問題でもあるのかな?


ふぅ……もう2020年も終わりかぁ。

あ、ど~もKUMAです。


今回は一心同体を成したマコト達がシロ(偽)を倒すお話でした。さすがは神使と霊刀の力を受け取った状態と言いますか、圧倒的な力で勝利を収めましたね。

シロ(偽)についてはベースは狼になっています、なので変化した際も顔つきは狼っぽいと描写しました。いやまぁ、柴犬も怒った際の顔はおっかないですがね、偽者であるという事を明確にしたかったのでこのようになった感じです。使う技についても大きく変化させてまして、本物が単体への攻撃が多いのに対して、瘴気の影響で技が変化し広範囲に攻撃するようになっています。


ちょっとしたネタバレですが、一応クロと一心同体の状態も設定としてあります……ありますが暫く登場の予定はありません。今回はシロがメインなので仕方がないのです、ゴメンねクロ。


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