【13】 デビュー戦5日目② ~魔の周回展示~
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『ボートレース戸田』5日目・第7レース(予選/男女混合一般戦)
【出走表】
1号艇 吉川 聖 (45)A2 勝率5.48 モ○ 2 - 1 3 5 6 2
2号艇 乙川 康文(45)A1 勝率6.38 モ◎ 1 5 6 5 3 1 1
3号艇 原島 加那(25)B2 勝率0.00 モ△ 5 - 3 4 2 6 5
4号艇 石河 正人(63)B1 勝率5.26 モ- 6 6 3 - 4 2 3
5号艇 大柳 和高(38)B1 勝率5.13 モ× 1 4 4 4 4 – 5
6号艇 速水 爽香(20)B2 勝率0.00 モ- 6 - 6 - 5 6 6
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本日2回目の出走。
本番レース直前に行われる「周回展示」。全艇が1艇ずつ間隔を空け、コースを2周して仕上がりを観客に見せる、競馬でいうパドックだ。
ビギナー客「おいおい! 第7レース、もう『1―2』で決まりじゃねぇか! 吉川と乙川のワンツーだろ!」
スタンドで、今日が本場デビューだというビギナーの客が競艇新聞を握りしめて叫んだ。
ビギナー客「くっそー! 固いレースなら最初から買ってありゃよかった!」
ベテラン客「あの……お客さん」
隣のベテラン客が優しく声をかける。
ベテラン客「それ、本番じゃなくて周回展示ですよ」
ビギナー客「えっ……? あ、ハハハ! そうだよね! 1着と6着がこんな離れてるわけないもんね! ハハハ……照れるなぁ」
ビギナー客が汗をかきながら笑って誤魔化そうとした、まさにその時だった。
速水爽香「きゃっ――!?」
2周目の第2ターンマーク。
艇群の一番後ろを走っていた6号艇・爽香のボートが、急激な向かい風をへさき(艇首)に受けた。
煽られたカウリングが一瞬で浮き上がり、空中へ舞い上がる――!
バッシャーン!!
豪快な水煙とともに、6号艇がひっくり返った。
ビギナー客「うわあああ!? 展示で転覆したぞ!?」
ビギナー客が目をむいた。
ベテラン客「ありゃりゃ……あの6号艇、今節デビューの新人なんですよ」
ビギナー客「マジかよ! 本番前にひっくり返るなんてパンツの替え持ってんのかな?」
ベテラン客「持ってるでしょうねぇ……」
◇
冷たい水の中に放り出された爽香は、必死で水面へ浮き上がった。
速水爽香(やっちゃった……やっちゃった……!!)
スタンドからの視線が、針のように突き刺さる気がする。恥ずかしさと情けなさで頭が破裂しそうだ。
ブォォォンと音を立てて、救助艇が近づいてくる。
救助隊員「大丈夫か!? ケガはないか!?」
速水爽香「だい、大丈夫です……!」
救助隊員に力任せにデッキへ引き揚げられた爽香は、膝を抱えて小さくなった。レスキュー艇がピットへ向かって滑走していく間、彼女は二度とスタンドの方を見ることができなかった。
……ボートレースの規定により、展示航走で転覆・水没したエンジンは整備が間に合わないため、本番レースは即「欠場」となる。
ピットの奥で、爽香は膝に顔をうずめて肩を揺らしていた。
速水爽香(欠場……返還金……事故点……。半端なく怒られた。惨めだ。悔しい……!)
涙が次から次へと溢れて止まらない。
速水爽香(松木教官……ごめんなさい。『絶対に泣くな』って言われてたのに……約束、破っちゃいました……)




