王都リンデン
数日後、俺たちは、ついに、王都リンデンへと辿り着いた。
「…これが」
セラが、感嘆の声を漏らした。
帝都エルアヴィスのような華美さはないが、王都リンデンには、質実剛健な、確かな風格があった。石畳の道、整然と並ぶ建物、そして、街の中心に聳える、白亜の王城。
俺は、その光景を、静かに見つめていた。前世で、何百回と目にしてきた景色。だが、こうして改めて眺めると、胸の奥に、言葉にできない感情が込み上げてくる。
「―リド」
フィアが、静かに、隣に並んだ。
「大丈夫か」
「ああ。……ただ、少し、感慨深いだけだ」
俺たちは、街の中心部へと向かった。道行く人々の服装、話し方、街並みの至る所に、俺の知る、アルドレアの文化が息づいていた。
「―まずは、宿を確保しよう」
俺の言葉に、皆が頷いた。
その日の午後、俺たちは、宿での休息もそこそこに、王城への謁見の手続きについて、情報を集め始めた。
「王太子殿下への謁見は、通常、厳格な手続きが必要なようね」
セラが、集めた情報を整理しながら言った。
「冒険者風情が、簡単に会えるような相手じゃない、ってことか」
ガロが、腕を組みながら言った。
俺は、静かに考えを巡らせた。正式な手続きを踏めば、時間がかかりすぎる。だが、別の方法がないわけではなかった。
「一つ、案がある」
「どんな」
「騎士団の訓練場に、直接、足を運んでみる」
「訓練場?」
「アルドレアの騎士団は、実力主義の気風が強い。……もし、実力を示すことができれば、然るべき人物との接触の機会が、生まれるかもしれない」
フィアが、興味深そうに頷いた。
「面白そうだな」
その夜、宿の外に出た俺は、ゼインと顔を合わせた。
「王都に、着いたな」
ゼインが、静かに言った。
「ああ」
「約束、覚えているな」
俺は、静かに頷いた。
「もちろんだ。……だが、もう少しだけ、時間をくれないか」
「理由は」
「この国で、確認しておきたいことがある。全てが繋がった時、お前にも、より正確な形で、真実を伝えられるはずだ」
ゼインは、しばらく黙り込んでいたが、やがて、静かに頷いた。
「―分かった。だが、あまり、長くは待てない」
「約束する。近いうちに、必ず」
その夜、俺は、静かに、これからの計画を練り直していた。
エドヴァルドとの再会。それは、単なる懐かしさだけでなく、俺自身の正体を証明する、確かな手がかりにもなるはずだった。
かつての教え子が、今の俺を見て、どう思うのか。その答えを、俺は、まだ知らない。
窓の外、王都リンデンの夜景が、静かに広がっていた。
前世の祖国、その中心地で、俺の旅は、新たな局面を迎えようとしていた。




