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裏切られた英雄、奴隷剣闘士として本物の絆を選び直す  作者: CHARA
第二部「金の影、諜報の網」
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王国境の街


旅は、順調に進んでいた。


アルドレア王国との国境に近い街―エルンストに到着した頃には、旅の疲れも、仲間との連携で自然と和らいでいた。


「ここまで来れば、王国まではあと数日だ」


俺は、地図を確認しながら言った。


「随分と、あっという間だったな」


ガロが、周囲の街並みを見渡しながら言った。


エルンストは、帝国とアルドレア王国、双方の文化が入り混じった、独特な雰囲気を持つ街だった。


「アルドレアの建築様式、初めて見るわね」


セラが、興味深そうに、石造りの建物を見上げた。帝国の華美な装飾とは違う、質実剛健な造りが目立つ。


俺は、その光景に、静かな懐かしさを覚えた。前世で、何度もこの様式の建物を見てきた記憶が、鮮明に蘇る。


「リド、また、難しい顔してるぞ」


フィアが、小声で言った。


「ああ、少し、な」


「無理に隠さなくていい。……あんたのペースで、いい」


フィアの言葉に、俺は、静かに頷いた。


その夜、俺たちは、宿での夕食を終えた後、それぞれの部屋へと戻っていった。だが、俺は、一人、宿の外に出て、夜風に当たることにした。


「―付き合おう」


ゼインが、静かに、俺の後をついてきた。


「珍しいな、お前がついてくるとは」


「たまにはな」


俺たちは、静かに、街の外れまで歩いた。国境に近いこの場所からは、遠くに、アルドレア王国の山々が、月明かりの下、静かにその稜線を浮かび上がらせていた。


「綺麗な景色だな」


ゼインが、静かに呟いた。


「ああ」


「なあ、リド」


ゼインが、静かに切り出した。


「王国に着いたら、お前は、何をするつもりだ」


俺は、しばらく沈黙した後、静かに答えた。


「―向き合わなければならない過去がある、と言っただろう」


「ああ、覚えている」


「その過去と、正式に、向き合うつもりだ」


ゼインは、静かにこちらを見た。


「その過去に、俺も、関係があるのか」


俺は、答えられなかった。だが、その沈黙こそが、何よりの答えだったのかもしれない。


ゼインは、しばらく黙り込んでいたが、やがて、静かに息を吐いた。


「急かすつもりはない、と言ったはずだ」


「ああ」


「だが、正直に言えば……お前と初めて会った時から、ずっと、妙な既視感があった」


俺の心臓が、大きく跳ねた。


「既視感、とは」


「言葉にするのは難しい。……ただ、お前の戦い方、物事の考え方、時折見せる仕草…どれもが、俺が知る、ある人物と、重なる瞬間がある」


ゼインの声には、隠しきれない緊張があった。


「その人物は、俺が、この手で殺した」


沈黙が、二人の間に、重く落ちた。


「―ゼイン」


「答えなくていい」


ゼインは、静かに、しかし確かな覚悟を込めて言った。


「今はまだ、その時じゃないんだろう。……だが、いつか、必ず、聞かせてもらう」


俺は、静かに頷いた。


「約束する」


ゼインは、静かに踵を返した。


「―王国に着いたら、な」


彼は、それだけ言い残し、宿へと戻っていった。


俺は、一人、月明かりの下に立ち尽くしていた。


胸の奥に、これまでにない緊張が、静かに広がっていく。だが同時に、確かな覚悟も、そこにはあった。


もう、逃げるつもりはない。


俺は、静かに、遠くに見える王国の山々を見つめながら、来るべき告白の時への、静かな決意を固めていた。


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