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裏切られた英雄、奴隷剣闘士として本物の絆を選び直す  作者: CHARA
第二部「金の影、諜報の網」
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奪われた力


ガレスの体から放たれる圧力が、これまでとは比較にならないほど、強く膨れ上がった。


「…これが、本気か」


俺は、その圧力に、思わず息を呑んだ。


「まだ、序の口だ」


ガレスは、静かに、周囲に横たわる実験体たちへと、視線を向けた。


「彼らの力を、少し借りるとしよう」


杖の紋様が、より強く輝き始める。横たわっていた若者たちの体から、淡い光が、まるで吸い上げられるように、ガレスの杖へと集束していった。


「―やめろ!」


俺は、思わず叫んだ。


「彼らを、これ以上犠牲にするな!」


「犠牲、か。……そう呼ぶのは簡単だが、大きな目的のためには、必要な過程だ」


ガレスの体が、これまで以上の力を纏い始めた。


「―くっ……」


フィアが、その圧力に、僅かに顔を歪めた。


「リド、あの若者たちを、先に助けないと……このままじゃ」


「分かってる」


俺は、素早く思考を巡らせた。ガレスを倒すだけでなく、実験体にされている若者たちを救出する必要がある。二つの目的を、同時に達成しなければならない。


「フィア、時間を稼いでくれ。俺が、彼らの拘束具を外す」


「一人で、あいつを抑えるのか?」


「短い時間でいい。頼む」


フィアは、一瞬躊躇ったが、やがて、力強く頷いた。


「―分かった。存分に暴れてやる」


フィアが、大剣を構え、ガレスへと突撃した。俺は、その隙に、横たわる若者たちの元へと駆け寄った。


「くそ、複雑な仕組みだ」


拘束具には、精緻な魔法陣のような紋様が刻まれている。俺は、素早くその構造を分析した。


(顕在化の流れを、強制的に操作する仕組み……それなら)


俺は、自己数値化の理論を応用し、拘束具の"数値的な弱点"を探った。前世で培った分析力が、この危機的状況でも、確かな武器となる。


「…ここか!」


俺は、拘束具の一点に、剣の切っ先を突き立てた。紋様が、大きな音を立てて砕け散る。


「な……!」


一人目の若者が、静かに意識を取り戻し始めた。


「くそ、あと何人だ……!」


俺は、次々と拘束具を破壊していった。だが、その間にも、フィアとガレスの戦いは、激しさを増していく。


「―ぐ、う……!」


フィアの声に、俺は、思わず振り返った。


ガレスの一撃を受け、フィアが、大きく吹き飛ばされていた。


「フィア!」


「大丈夫、だ……!」


フィアは、痛みを堪えながら、なんとか立ち上がった。だが、その顔には、明らかな疲労の色が浮かんでいる。


「そろそろ、決着をつけようか」


ガレスが、静かに杖を掲げた。その先端に、これまで以上の力が集束していく。


俺は、素早く状況を分析した。残る拘束具は、まだ数個。だが、悠長にそれを解いている時間は、もうない。


「―フィア、俺と入れ替わる!」


「リド……!」


俺は、フィアの前に躍り出た。ガレスの放った光の奔流が、俺目掛けて放たれる。


「くっ……!」


俺は、剣を盾のように構え、その衝撃を受け止めた。全身に、凄まじい痛みが走る。


「まだだ……!」


俺は、痛みを堪えながら、なおも前へと踏み出した。


前世で失った、多くのもの。この世界で積み上げてきた、確かな絆。その全てを胸に、俺は、目の前の敵と、真っ向から対峙し続けた。


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