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裏切られた英雄、奴隷剣闘士として本物の絆を選び直す  作者: CHARA
第二部「金の影、諜報の網」
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帝都エルアヴィス


帝都エルアヴィスは、これまで見てきたどの都市とも、一線を画す規模だった。


高く(そび)える城壁、その内側に広がる、整然と区画された街並み。中央には、ヴァレンス帝国の威光を象徴するかのような、壮麗な宮殿が聳えている。


「…圧巻ね」


セラが、感嘆の声を漏らした。


「これが、帝国の中心地、か」


ガロも、周囲を見渡しながら、感慨深げに呟いた。


俺は、静かにその光景を見つめていた。前世でも、これほどの規模の都市を訪れたことは、そう多くはなかった。


「入市には、身分証の確認が必要だそうよ」


セラが、事前に調べていた情報を伝える。俺たちは、冒険者証を提示し、無事に帝都への入城を果たした。


「さて、まずは拠点を確保しよう」


俺の言葉に、皆が頷いた。


帝都の冒険者ギルド本部は、これまで見てきたどの支部よりも、遥かに大きな建物だった。俺たちは、正式な手続きを済ませ、当面の宿を確保した。


その夜、俺たちは、今後の方針について話し合った。


「影楔の中枢、帝都のどこにあると思う」


ガロの問いに、俺は、レンドルの資料を広げながら答えた。


「まだ、明確な場所は分からない。だが、帝都という土地柄、恐らく、政治の中枢に近い場所に、隠れ蓑を持っているはずだ」


「政治の中枢……つまり、貴族や官僚の中に、協力者がいる、ってことか」


「可能性は高い」


セラが、深刻な表情で言った。


「かなり、危険な調査になりそうね」


その時、宿の窓の外で、小さな物音がした。俺は、素早く警戒態勢を取った。


「―誰だ」


窓を開けると、そこには、フードを目深に被った人物が立っていた。


「静かにしろ。俺だ」


聞き覚えのある声―ゼインだった。


「随分と、危険な訪問の仕方をするな」


「表立って会うわけにはいかない立場でな」


ゼインは、静かに部屋の中に入ってきた。


「お前も、帝都に?」


「ああ。監査の一環という名目で、帝都に戻ってきた。……それに合わせて、独自に調べたことがある」


ゼインは、静かに一枚の地図を取り出した。


「導師の正体について、手がかりを掴んだ」


俺たちは、緊張しながら、その地図に目を凝らした。


「帝都の貴族街―その中でも、特に警戒が厳重な、とある屋敷がある。表向きは、引退した高官の隠居所ということになっているが」


「そこが」


「導師の、隠れ家である可能性が高い」


俺は、静かに拳を握りしめた。


「屋敷の主は」


ゼインは、一瞬、躊躇うような表情を見せた。


「―元帝都補給局長官、ドレイファス」


その名に、俺とガロは、揃って息を呑んだ。


「ドレイファス……ガロの、あの一件の」


セラが、驚いたように呟いた。


ガロが、拳を強く握りしめた。


「繋がった、か。全部」


俺は、静かに頷いた。


「レイストンを操っていた黒幕、そして影楔の導師―同一人物である可能性が高い」


ゼインが、静かに続けた。


「もしそうなら、奴は、帝国の腐敗そのものの中心にいることになる。……相当な権力を持っているはずだ」


沈黙が、部屋を包んだ。


「簡単な相手じゃない、ってことだな」


ガロが、低く呟いた。


「ああ」


俺は、静かに、しかし確かな決意を込めて言った。


「避けては通れない。……ここまで来た以上、決着をつける」


仲間たちが、静かに頷いた。


窓の外、帝都の夜景が、静かに広がっていた。その煌びやかな光の奥に、俺たちが挑むべき、大きな闇が潜んでいた。


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