表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切られた英雄、奴隷剣闘士として本物の絆を選び直す  作者: CHARA
第二部「金の影、諜報の網」
PR
49/60

フィアの記憶


「…無属戦役、か」


その夜、フィアが、珍しく自分から、静かに口を開いた。


「気になるのか」


俺の問いに、フィアは、小さく頷いた。


「……あんたたちの話を聞いてて、思い出したことがある」


俺たちは、静かに彼女の言葉に耳を傾けた。


「私の故郷、辺境の小さな村だったんだが……村の大人たちが、あまり大きな声では話したがらない出来事があった」


「言い伝え?」


「"かつて、この村の者たちは、才能のない戦士たちと共に、帝国の大軍を退けたことがある"って話だ」


俺は、思わず息を呑んだ。


「それは……」


「子供の頃は、ただのおとぎ話だと思ってた。でも」


フィアは、静かに続けた。


「顕在種として生まれた私は、村の中でも異質な存在だった。……あの戦いのことを知る年配の者たちは、時々、私を見て、複雑な顔をしてた」


セラが、真剣な表情で尋ねた。


「複雑な顔、というのは」


「まるで……あの戦いに関わった血筋に、何か特別な意味があるみたいな、そんな目だった」


俺は、静かに考えを巡らせた。無属戦役―俺自身が、かつて指揮を執った戦い。もし、フィアの故郷が、当時共に戦った「辺境の一部族」そのもの、あるいはその近しい血縁だとしたら。


「フィア、その村の名前は」


「―ケイルダ村。……もう、随分と前に、出てきたきりだが」


俺は、静かにその名を、記憶の中で探った。前世の記憶の中に、微かに、その名に近しい響きがあった気がする。だが、確信は持てなかった。


「その村、今もあるのか」


「分からない。……村を出てから、一度も戻ってない」


フィアの声には、複雑な感情が滲んでいた。


「戻りたいのか」


俺の問いに、フィアは、しばらく沈黙した。


「……正直、分からない。追い出されるようにして出た場所だ。今更、戻る資格があるのかも分からない」


セラが、静かにフィアの肩に手を置いた。


「でも、気になってるんでしょう」


「……ああ」


フィアは、小さく頷いた。


俺は、静かに言葉を選びながら言った。


「もし、お前の故郷が、無属戦役に関わりがあるなら―影楔の目的とも、無関係じゃないかもしれない」


フィアが、驚いたように顔を上げた。


「どういうことだ」


「影楔は、無属戦役の理論を追い求めている。もし、その理論の起源に、お前の故郷が関わっているなら……いずれ、影楔が、お前の村に目をつける可能性もある」


フィアの表情が、強張った。


「それは、まずいな」


「ああ」


俺は、静かに頷いた。


「一度、機会を見て、お前の故郷を訪ねてみないか。真相を確かめる意味でも、村を守る意味でも」


フィアは、しばらく考え込んでいたが、やがて、静かに頷いた。


「……分かった。いつか、必ず」


ガロが、静かに口を挟んだ。


「まあ、今はまだ、優先すべきことが山積みだけどな」


「ああ、分かってる」


フィアは、小さく笑った。


「でも……いつか、あんたたちと一緒に、あの村に戻れたらいいと思う」


その言葉に、俺たちは、静かに頷き合った。


窓の外、夜空に、無数の星が輝いていた。


セラの父の救出、ゼインとの新たな関係、そしてフィアの故郷を巡る謎。幾つもの物語が、少しずつ、一つの大きな流れへと収束していく予感があった。


「さて」


俺は、静かに気を引き締めた。


「次は、導師の正体、そして影楔の中枢に、より深く迫る番だ」


仲間たちが、揃って頷いた。


新たな決意と共に、俺たちの旅は、次なる局面へと進んでいく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ