表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切られた英雄、奴隷剣闘士として本物の絆を選び直す  作者: CHARA
第二部「金の影、諜報の網」
PR
36/46

告発


翌朝、俺たちは、レイストンが滞在する宿へと向かった。


「本当に、これでいいんだよな」


ガロが、緊張した面持ちで確認してくる。


「ああ。証拠を示し、正式な機関への告発を促す。それだけだ」


宿の前には、護衛と思しき兵士が数名、警戒に当たっていた。


「レイストン殿にお目通り願いたい」


俺が申し出ると、兵士は怪訝な顔をした。


「連絡は」


「ない。だが、これを見せれば、話は変わるはずだ」


俺は、ガロが持つ告発状の写しの一部を提示した。兵士は、しばらく躊躇った後、宿の中へと取り次いだ。


しばらくして、俺たちは応接間へと通された。


「何用だ」


現れたレイストンは、恰幅の良い、脂ぎった中年男だった。ガロの拳が、僅かに震える。


「久しぶりですね、レイストン殿」


ガロの声は、想像以上に落ち着いていた。俺は、その成長に、静かな誇らしさを感じた。


レイストンは、ガロの顔を見て、一瞬、明らかに動揺した。


「……お前、まさか、ガロか。生きていたのか」


「ええ、おかげさまで」


ガロは、静かに証拠の束を差し出した。


「これは、あなたが帝国軍在籍時、複数回にわたり物資を横流ししていた記録です。私が告発した際、あなたは逆に、私を濡れ衣で陥れた」


レイストンの顔から、みるみる血の気が引いていった。


「な……何の話だ。言いがかりも―」


「言いがかりかどうかは、正式な機関で判断してもらいましょう」


俺が、静かに口を挟んだ。


「今回は、あなたに私的な報復をするつもりはありません。この証拠は、正式に帝国軍の監査機関へ提出させていただきます」


「な……」


「ただし」


俺は、レイストンの目を見据えた。


「もしここで、素直に非を認め、然るべき償いをする意思があるなら、告発の内容に、多少の情状酌量の余地を加えることも検討します」


レイストンは、しばらく葛藤するような表情を浮かべていたが、やがて、崩れ落ちるように椅子に座り込んだ。


「……もう、いい。認める。……全て、私が仕組んだことだ」


その一言に、応接間が、静まり返った。


「なぜ、ガロを陥れた」


俺の問いに、レイストンは、力なく答えた。


「あの時、私自身も、上からの圧力に追い詰められていた。物資の横流しは、私の独断ではない。……もっと上の人間からの、指示だった」


「その人間の名は」


レイストンは、一瞬躊躇ったが、やがて、震える声で名を告げた。


「……当時の、帝都補給局長官だ。名は、ドレイファス」


セラが、素早くその名を書き留めた。


ガロは、レイストンを見下ろしながら、長い沈黙の後、静かに口を開いた。


「……もう、いい」


「ガロ?」


「恨みは、消えねぇ。だが、これ以上、この男に構ってる暇はねぇ。俺には、会いに行くべき娘がいる」


ガロの声には、深い、しかし確かな決意が滲んでいた。


「証拠は、正式な機関に提出する。それで、十分だ」


俺は、静かに頷いた。


「レイストン殿。この件は、正式に監査機関へ報告させていただきます。以後の対応は、そちらでご判断を」


俺たちは、レイストンを残し、宿を後にした。


外に出ると、ガロが、大きく息を吐いた。


「……終わったな」


「終わった、というより、始まったんだと思う」


俺は、静かに言った。


「ドレイファスという新たな名前が出てきた。この件も、帝都の腐敗と、無関係ではないかもしれない」


セラが、深刻な顔で頷いた。


影楔(えいけつ)との繋がりも、あり得るわね」


ガロは、しばらく沈黙していたが、やがて、小さく笑った。


「上等だ。どこまでも、腐った根っこを掘り返してやる」


俺たちは、互いに顔を見合わせ、静かに頷き合った。


一つの因縁に、確かな区切りをつけたガロの表情には、これまでにない晴れやかさが浮かんでいた。


「さて、北へ向かうか」


ガロの言葉に、俺たちは、静かに歩き出した。


セラの父を救い出すため、そして、まだ見ぬ真実に近づくため。旅は、新たな手がかりと共に、次の段階へと進んでいく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ