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裏切られた英雄、奴隷剣闘士として本物の絆を選び直す  作者: CHARA
第二部「金の影、諜報の網」
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ガロの影


第三隔離施設を目指し、北への旅路につく前に、俺たちは一度、拠点となる街道沿いの町で態勢を整えることにした。


「装備の補充と、情報収集だ。北の山岳地帯は、これまでとは勝手が違う」


俺の言葉に、皆が頷いた。


その日の午後、ガロが一人、町の外れにある酒場から、険しい顔で戻ってきた。


「どうした」


「……偶然、聞いちまった」


ガロは、拳を握りしめながら、低い声で言った。


「俺を陥れた元上官、レイストン。奴が今、北方国境の視察で、この近くの町に立ち寄ってるらしい」


空気が、一瞬にして張り詰めた。


「本当か」


「酒場の噂話だ。確証はねぇ。だが……」


ガロの目に、抑えきれない感情が滲んでいた。


「もし本当なら、この機を逃す手はねぇ」


セラが、心配そうにガロを見つめた。


「ガロ、落ち着いて。証拠を突きつけるにしても、慎重にやらないと」


「分かってる。分かってるさ」


ガロは、深く息を吐いた。


「だが……もう何年も、あの野郎の顔を思い浮かべるだけで、腸が煮えくり返ってきた。目の前にいるかもしれないと思うと、平静ではいられねぇ」


俺は、静かにガロの肩に手を置いた。


「気持ちは分かる。だが、感情に任せて動けば、証拠の効力すら失いかねない」


「……そうだな」


ガロは、拳を震わせながらも、静かに頷いた。


「どうすればいい」


俺は、少し考えてから答えた。


「まず、その噂の真偽を確かめる。もし本当にレイストンがこの町にいるなら―正式な手続きを踏んだ告発の場を、俺たちで作る」


「正式な手続き、とは」


「今のガロは、既に自由民だ。名誉回復の申請も進んでいる。この状況なら、単なる私怨ではなく、正当な告発として動ける」


セラが、頷きながら付け加えた。


「証拠の写しも、私が整理してある。監査人への提出用に作ったものが、そのまま使えるはず」


フィアも、静かに口を開いた。


「私は詳しい事情は知らないが……ガロ、あんたが決着をつけたいなら、私たちも力を貸す。それだけは、はっきりしてる」


ガロは、三人の顔を順に見つめた。その目に、次第に落ち着きが戻っていくのが分かった。


「……悪いな。取り乱した」


「気にするな」


俺は、静かに言った。


「お前がずっと抱えてきたものだ。冷静でいろというほうが、無理な話だ」


その夜、俺たちは町の中を慎重に聞き込み、噂の真偽を確かめた。結果、レイストンという名の高官が、確かに近隣の宿に滞在していることが判明した。


「本物、か」


ガロの声が、僅かに震えていた。


「明日、正式な手続きで接触する。感情ではなく、証拠で語る」


俺の言葉に、ガロは深く頷いた。


「ああ……分かった」


その夜、俺は一人、宿の窓辺に立っていた。


ガロの積年の想いと、セラの父を巡る旅、そしてフィアの抱える謎。それぞれの過去と向き合いながら、俺たちの旅は、幾つもの糸が絡み合うように、複雑さを増していた。


そして、俺自身の過去―ゼインとの因縁、そして前世の秘密も、いずれ必ず、この旅の中で向き合わなければならない日が来るだろう。


「…積み上げてきたものが、また一つ、試される」


俺は、静かに呟いた。


北の山々の稜線が、月明かりの下、静かにその姿を横たえていた。


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