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裏切られた英雄、奴隷剣闘士として本物の絆を選び直す  作者: CHARA
第二部「金の影、諜報の網」
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カレイルの町


カレイルは、想像していたよりも、ずっと静かな町だった。


小さな教会と、こぢんまりとした市場。旅人が一晩の宿を求めて立ち寄る程度の、目立たない中継地。だが、その静けさこそが、隠れ拠点として選ばれた理由なのかもしれない。


「拠点は、町の外れにある古い倉庫、って話だったな」


ガロが、情報屋から得た地図を確認しながら言った。


「表向きは、廃業した商会の倉庫らしい。だが、夜になると、人の出入りがあるとか」


俺たちは、町に到着してすぐ、目立たないよう別々に情報収集を始めた。セラは市場で世間話を装いながら、ガロは酒場で、フィアは冒険者ギルドの支部で。


夕刻、宿の一室に集まった俺たちは、それぞれの成果を共有した。


「市場の商人によると、あの倉庫、月に数回、夜間に荷馬車が出入りしてるらしいわ。荷の中身は誰も知らない」


セラが、羊皮紙にメモを取りながら報告した。


「酒場じゃ、あの倉庫に近づくなって噂が流れてた。何年か前、興味本位で覗いた若者が、二度と戻らなかったって話もある」


ガロの報告に、俺たちは顔を見合わせた。


「ギルドの支部でも、似たような話を聞いた。あの倉庫周辺は、依頼の対象からも外されてる」


フィアの言葉に、俺は静かに頷いた。


「つまり、公然の秘密として、危険視されている場所というわけだ」


「潜入するには、絶好の条件とも言えるな」


ガロが、不敵に笑った。


「どういうことだ」


「誰も近づかない場所なら、逆に警備は薄いはずだ。表向きの脅しだけで、人払いができてるんだからな」


俺は、ガロの読みに一理あると感じた。


「だが、油断はできない。影楔(えいけつ)は、末端の情報屋にすら容赦しない組織だと聞いている。倉庫の警備が薄くとも、内部に潜む脅威は別だ」


俺たちは、夜の潜入計画を詰めていった。


「セラは、周辺で見張りを。何かあれば、すぐに合図を送ってくれ」


「分かった」


「ガロとフィアは、俺と共に内部へ。役割分担は…」


俺は、これまでの経験を踏まえ、細かく指示を出していく。フィアは、その様子を興味深そうに見つめていた。


「……随分と、手慣れた指示の出し方だな」


「そうか」


「まるで、何十人もの部下を率いた経験があるみたいだ」


図星を突かれ、俺は僅かに言葉を詰まらせた。


「……剣闘士として、多くの試合を分析してきた経験の応用だ」


フィアは、それ以上追及しなかった。だが、その目には、これまでと同じ、微かな疑問の色が浮かんでいた。


深夜。月明かりだけを頼りに、俺たちは倉庫へと近づいた。


外観は、確かにただの廃倉庫にしか見えない。だが、近づくにつれ、微かに、人の気配が漏れ聞こえてきた。


「…内部に、複数の気配がある」


俺は、声を潜めて仲間に伝えた。


「数は」


「少なくとも、四、五人」


ガロが、拳を握りしめた。


「潜入か、それとも強行突破か」


「まずは潜入だ。情報を集めることが優先だ」


俺たちは、倉庫の裏手にある、小さな通気口を見つけた。


「ここから」


「狭いな……」


ガロが、自分の体格を見て顔をしかめた。


「俺とフィアが先に入る。ガロは、外で異変があった際の対応を頼む」


「分かった」


俺とフィアは、慎重に通気口から倉庫の内部へと侵入した。


薄暗い倉庫の中、木箱が整然と積み上げられている。だが、その奥――地下へと続く階段が、微かな灯りと共に見えた。


「地下、か」


俺は、静かに呟いた。


「行くぞ」


フィアが、大剣の柄に手をかけながら、俺の隣に並んだ。


地下へと続く階段の先に、俺たちが求める真実の一端が、確かに待ち受けているはずだった。


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