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裏切られた英雄、奴隷剣闘士として本物の絆を選び直す  作者: CHARA
第二部「金の影、諜報の網」
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遺跡調査の護衛


「―というわけで、この依頼、一緒にどうだ」


翌朝、俺はフィアに、昨日受理した依頼書を見せた。


「近郊の森の遺跡調査、護衛任務……悪くないな」


フィアは、依頼書に目を通しながら頷いた。


「あそこの遺跡、噂じゃ古代顕在民の遺構だって話だ。私も、前々から気になってた」


「詳しいのか」


「詳しくはない。だが……顕在種の起源が、古代顕在民に関わってるんじゃないかって、勝手に思ってるだけだ」


フィアは、少し照れくさそうに言った。彼女なりに、自分の出自に関わる何かを、探し求めているのかもしれない。俺は、それ以上は深く聞かなかった。


「決まりだな。四人で行こう」


セラとガロも、それぞれ準備を整え、俺たちは森へと向かった。


依頼主は、学者組合に所属する初老の研究者だった。


「近年発見された、小規模な古代遺構でしてな。護衛をお願いしたいのは、内部調査の間、モンスターの襲撃から我々を守ってもらうことです」


「了解した」


森の奥、木々に埋もれるようにして、苔むした石造りの遺構が姿を現した。入り口には、見覚えのある紋様が刻まれている。


「―これは」


俺は、思わず足を止めた。


「知ってるのか、この紋様」


フィアが、怪訝な顔で尋ねてきた。


「……いや、どこかで見た気がしただけだ」


俺は、誤魔化しながら遺構の中へと足を進めた。


内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。研究者たちが慎重に足を進める中、俺たちは周囲を警戒しながら随行した。


「来るぞ!」


ガロの声とともに、闇の奥から、複数のモンスターが姿を現した。遺跡ガーゴイル―古代顕在民文明の守護兵器の成れの果てと言われる、石像型のモンスターだった。


「三体か」


俺は、素早く状況を分析した。


「ガロ、正面を頼む。セラは後方で研究者たちの護衛。フィア―」


「言われなくても分かってる」


フィアは、既に大剣を構えていた。


「派手にやらせてもらう」


彼女の身体が、淡く輝き始めた。顕在化の力が、全身に漲っていく様が、はっきりと見て取れた。


「行くぞ!」


フィアが、まっすぐにガーゴイルへと突撃する。大剣の一撃が、石の身体を容易く砕いた。


圧倒的な、力任せの強さだった。俺の積み上げてきた分析型の戦い方とは、対照的な戦闘スタイル。


だが、俺はその戦いぶりの中に、僅かな違和感を覚えた。


(…今の一撃、必要以上に力が乗っていた)


フィアの動きに、微かな制御の乱れが見える。まるで、力そのものが、彼女の意志を超えて暴走しかけているような。


「フィア、無理をするな!」


俺は、思わず声をかけた。


「うるさい、黙ってろ!」


フィアは、苛立たしげに叫び返しながら、二体目のガーゴイルへと斬りかかった。今度の一撃は、更に過剰な力が込められていた。石の破片が、勢いよく飛び散る。


「―ッ、あ……」


一瞬、フィアの膝が、僅かに折れた。


「フィア!」


俺は、素早く駆け寄った。彼女は、肩で荒く息をしながら、額に汗を滲ませていた。


「な、なんでもない……」


「なんでもない顔じゃないぞ」


セラも、心配そうに駆け寄ってきた。


「今の、力の使い方、明らかにおかしかった」


フィアは、しばらく黙り込んでいたが、やがて、小さく呟いた。


「……時々、あるんだ。力が、自分の制御を超えて溢れる瞬間が」


彼女の声には、隠しきれない不安があった。


「顕在種特有の症状、ってやつなのかもしれない。……でも、詳しいことは、私自身にも分からない」


俺は、静かにその言葉を受け止めた。かつて自己数値化理論で、無属としての限界と向き合ってきた経験が、脳裏をよぎる。


「その症状、もう少し詳しく聞かせてくれないか」


「……なんで」


「もしかしたら、力になれるかもしれない」


フィアは、驚いたようにこちらを見た。


その時、残る一体のガーゴイルが、俺たちに向かって突進してきた。


「―話は後だ!」


ガロの声とともに、俺たちは態勢を立て直し、最後の一体を協力して撃破した。


戦いの後、研究者たちは無事に調査を終え、感謝の言葉と共に報酬を支払った。


森を出る道すがら、俺はフィアに向き直った。


「さっきの話、詳しく聞かせてくれ」


フィアは、しばらく躊躇っていたが、やがて、静かに頷いた。


「……分かった。おまえになら、話してもいい気がする」


夕暮れの森に、四人の足音が静かに響いていた。新たな謎と、新たな絆が、確かにこの旅の中で紡がれ始めていた。


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