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タイトル未定2026/06/03 18:37

 市役所のインターンと言うことで、市役所の玄関前に、決められた時間の十分前に流花と渚と田中の三人が到着していた。

 三人共スーツ姿で、見た感じ特に緊張をしている様子はなかった。

「おはようございます。学生さんですね。こちらへどうぞ」

 職員に声をかけられ、流花たちは個室に案内され、荷物を置いた。

「本日担当する、朝倉あさくらです。宜しくお願いします」

 小柄な女性職員の朝倉は、軽く頭を下げた。

 流花達も、頭を下げた。

 顔を上げた流花は、朝倉の胸元に付いていた名札に目を向けた。

 名札には「朝倉しのぶ」と書いてあった。


 市役所でのインターンが、無事終了した。

 大学に提出する報告書は、市役所で書いたので、このまま帰ることができた。

「どうする?どっか寄っていく?」

 渚の言葉に、流花が素早く言った。

「ごめん!この後、用事があるんだ」

 流花はそう言うと、駆け出した。

 

 病院の建物の建設現場のバイトをしていた佐野は、一日の仕事を終えた。

 病院の設計を担当している設計事務所の職員と、建設現場のプレハブから佐野は一緒に出てきた。

 佐野が建築科の大学に通っていることを知った設計事務所の職員は、すっかり佐野こと気に入り、落ち着いたら設計事務所に顔を出すように勧めていた。

「すっかり、逞しい身体になったね」

 職員は、佐野の日焼けをした身体を眺めながら言った。

 バイト中炎天下の中、佐野は機材を抱えて歩き回っていた。

「バイトをしながら、病院の建物ができていく過程が見ることができて、凄く参考になります」

「落ち着いたらって言ったけど、一日も早く事務所に顔を出しなよ」

 

 設計事務所の職員と別れた佐野は、繁華街を歩いていた。

 暗くなり、明るくなった繁華街を歩いていた佐野は、ふと立ち止まった。

「流花……ちゃ……」

 流花に声をかけようとした佐野の大きな声は、小さくなった。

 流花は、一人ではなかった。

 流花の隣には、自転車のハンドルを手にして立っていた男がいた。

 男は背が高く、紫色のティーシャツにジーパンとスニーカーと言う格好をして、黒色の縦長のリュックを背負っていた。

 男も流花も終始笑顔で、男は流花の肩を抱き寄せた。

 やがて男と流花は、繁華街の中をゆっくり歩きだした。

 ……あの流花ちゃんが、男に寄り添っている!

 流花ちゃんと一緒にいた男……なぎちゃんが言っていた、流花ちゃんの彼氏のマスターか?

 佐野は驚きのあまり、しばらく立ち尽くしていた。


 佐野は背中を叩かれ、我に返り振り返った。

 そこには、市役所のインターンを終えた渚と田中がいた。

「佐野君、ぼんやりしてどうしたの?」

「今さぁ……いや、なんでもない」

「なによ、もぉ~」

 渚と佐野と田中の三人は、肩を並べて歩きだした。


 田中と別れて渚と二人きりになった時、佐野は切り出した。

「実は、さっき流花ちゃんが男と一緒のところを見たんだ」

「流花ちゃんが、男と?……それって……」

「つきあっているって言っていた、マスターだと思う」

「それで流花ちゃん、慌てて帰ったんだ!」

「流花ちゃん、凄い笑顔だった。あの男……マスターに寄り添って、あんな流花ちゃん初めて見た」

「私は、大学の入学式が終わった後、少しだけマスターを見たけど、背が高くて優しそうな人だった」

「俺、思わずマスターに見入っていたよ。あのマスター、人を引きつけるオーラが凄く出ていたよ」

「田中君……流花ちゃんが好きなんだよね」

「田中を推してやりたいけど、相手が悪い。あれじゃ、無理だな」


 市役所のインターンが終わり、渚の誘いを断った流花は、今朝電話で約束をした待ち合わせ場所へと急いだ。

 待ち合わせ場所の大手デパートの玄関前につき、流花はマスターが来るのを待っていた。

 空は真っ暗だったが、繁華街のネオンが眩しく輝いていた。

 今朝マスターが、突然流花にかけてきた電話を思い出す。

 今日一日の疲れが癒される思いで、流花は繁華街のネオンを見上げた。

 その時「チリンチリン」と言うベルの音で、流花は我に返った。

 目の前には、自転車に乗ったマスターがいた。

「……マスター」

 マスターは自転車から降りて、自転車を引きながら、流花の隣に立った。

「マスター……自転車……?」

「最近、自転車通勤をしています」

「どう言う、風の吹き回し?」

 ……流花を守る為に、鍛えているんです……。なんて、そんなこと言えません。

 流花に本音を言えないマスターは、流花の肩を抱き寄せた。

 照れながらも嬉しそうに、流花はマスターに寄り添った。

「マスター、あの時買った紫色のティーシャツ着てる」

「似合って、いますか?」

「とっても」

「流花は、大学の入学式の時に着たスーツですね」

 ティーシャツと言うラフな格好のマスターと、黒色の上着とパンツとローファーに、白色のブラウスのスーツ姿の流花。

 誰が見てもわかる、学生と社会人のアンバランスな二人。

 マスターは自転車を引きながら、流花と歩きだした。

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