表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/12

タイトル未定2026/06/03 18:43

 翌日の朝。

 目が覚めたマスターはベッドから起き上がり、ティーシャツにジーパンに着替えて顔を洗った。

 リビングに行くと、着替えを済ませた大門が朝食を取っていた。

 数年前は寝泊まりしていた家政婦のまちこが朝食を作り、大門がマスターを起こしていた。

 現在まちこは、平日の昼間掃除と夕飯の下ごしらえをするにとどまり、大門は一人で出来ることは全てやっていた。

 一人で留守番ができるまでに、成長していた。

 もう、マスターを起こしにも来ない。

 マスターが台所に立つと、ラップがかかったお皿に、スクランブルエッグと焼いたベーコンのお皿が流し台に置いてあった。

「これ、ボクのですか?」

 トーストをかじりながら、大門が言った。

「冷めちゃったから、レンジで温めてね。冷蔵庫にサラダがあるよ」

 すっかり朝食を食べ終えた大門は、流し台に立つとお皿やコップを洗い出した。

 隣でマスターは、大門を見つめていた。

 食器を洗い終えた大門は、隣に立っていたマスターに言った。

「休みの日の朝ご飯、七海はあんまり食べないから、ちゃんと食べてよね!」

 そう言った大門は、台所を出てリビングにある大門専用の棚からゲーム機を出すと、ソファーに座ってゲームをやりだした。

 マスターは大門が作ったスクランブルエッグが乗ったお皿を、レンジの中に入れて温めた。

 その間に冷蔵庫から牛乳を出してコップに注ぎ、立ったまま牛乳を飲んだ。

 飲み終わった頃に温めが終わり、スクランブルエッグが乗ったお皿をレンジから取り出し、テーブル席に座って食べ始めた。


 マスターは、大門が作ったスクランブルエッグとベーコンだけ食べた。

 食べ終わると食器を洗い、洗濯カゴの中から洗濯物を洗濯機の中に入れ、洗濯機を回した。

 洗濯が終わり、洗濯物を干しにリビングからベランダに出る時、ソファーに座ってゲームをやっていた大門は、ゲーム機を棚の中にしまっていた。

 大門は台所に行き、冷蔵庫の中から緑茶が入ったポットを出し、水筒の中に緑茶を注いだ。

 ポットを冷蔵庫に入れると、ツバのある帽子をかぶって、ベランダで洗濯物を干しているマスターに、声をかけた。

「游太君と、遊びに行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 洗濯物を干しながら、マスターは答えた。


 大門が自転車を出して、マンションの目の前にある公園に行くと既に游太が大門を待っていた。

「おはよう!」

 游太の傍らにも自転車があり、首には大門と同じような水筒がかかっていた。

「おはよう」

 大門が自転車を引きながら游太の側に駆け寄ると、大門を追うように、游太の母親が小走りにやってきた。

「游太、帽子忘れているわよ」

 游太の母親は、游太が忘れた帽子を持ってきて、游太に手渡した。

「ありがとう」

 母親から帽子を受け取った游太は、帽子をかぶった。

「行ってきます」

 大門と游太は揃って言い、自転車に乗った。


 自転車に乗って商店街を走り、コンビニ寄って駄菓子を買う。

 それぞれ好きな駄菓子を買い、自転車のカゴの中に入れた。

 大門と游太が自転車のサドルにまたがると、顔を見合せた。

 大門が覚悟を決めたように、游太に言った。

「行こうか」

「うん。行こう」


 商店街を走り抜け、大通りを走る。

 日曜日のせいか普段より交通量は少ないが、大門と游太は慎重に自転車を走らせる。

 初めての住宅街を、自転車で走る。

 道幅が狭いところもあるので、慎重に走る。

 なんでもない住宅街だが、まるで迷路のような住宅街だった。

 やがて住宅街を抜けると、河川敷が見えてきた。

 自転車から降りて、崖のような斜面を自転車を引きずりながら降りる。

 斜面を降りきると、二人の目の前に広い河が流れていた。

 太陽の光に反射して流れる河を、大門と游太は見つめていた。

 危ないからこの河には近づかないように、普段から言われていた。

 しかし、どうしても行きたくなり、天気が良い日曜日に行くことに決めた。

 行ってはいけないことは、わかっていた。

 しかし目の前に広がる河を見つめると、普段言われていた決まりごとを破った罪悪感より、達成感の方が大きかった。

 まるで冒険を制した、戦士になった気分だった。

 大門と游太は石の上に腰を下ろし、河を見ながらコンビニで買った駄菓子を食べだした。

 駄菓子を食べながら、大門が言った。

「帽子を持ってきてくれたりして、游太君のお母さんって優しいね」

「うん。帽子を持ってきてくれて、助かった」

 夏の太陽は容赦なく、暑さを感じさせていた。

 游太は、遠慮がちに聞いてきた。

「大門君、お母さんがいないんだよね。淋しくない?」

 游太の家族と一緒に遊園地に行った時、游太の両親を見て游太が羨ましいとその時は思った。

 大門は、笑顔で答えた。

「淋しくないよ。七海がいるし、流花お姉ちゃんだっているし!」

「流花お姉ちゃん……?」

「七海の友達。時々三人で、出かけたりしたよ」

「楽しそうだね。流花お姉ちゃんって、どんな人?」

「可愛くて、とっても優しいよ」

「良いなぁ。僕も流花お姉ちゃんに、会ってみたいなぁ」

 少し誇らしい気分になった、大門だった。

 駄菓子を食べ終え、既に水筒の中身は空だった。

 大門と游太は立ち上がると、河に向かって石を投げて遊んだ。

 どちらともなく、「帰ろうか」と言い自転車を引きながら斜面を登り、斜面を登り切ると自転車に乗って走り出した。

 こうして、小さな戦士達の冒険は終わった。


 游太と別れた大門は、「ただいま」と言いながらリビングに入って行った。

 台所にある食卓のテーブル席で、マスターがノートパソコンに向かって顔を上げず「お帰りなさい」と言った。

 台所に入った大門は、横目でパソコンの画面を見た。

 画面には、文字がいっぱい並んでいた。

 水筒を洗いながら、大門は言った。

「七海、流花お姉ちゃんに会ってる?」

「あぁ」

 マスターはパソコンの画面を見つめたまま、キーを打って返事をした。

「良いなぁ。僕も流花お姉ちゃんに、会いたいなぁ」

「あぁ」

 マスターは相変わらず、パソコンのキーを打つのに集中していた。

 水筒を洗い終えた大門は、マスターの側に行くと、大きな声で言った。

「七海!聞いてる?」

 大きな大門の声で、マスターは初めて顔を上げた。

「あっ、大門お帰りなさい」

 やっと大門の存在気がついたマスターに、大門は笑ってしまった。

 バカバカしくて、怒る気にもなれない。

「七海ぃ。お腹すいたよ」

 マスターは、パソコンの画面に表示されている時刻を見た。

「もう、こんな時間なんだ。そうですね。お昼にしましょう」

 マスターは今まで作っていた文書を保存すると、テーブル席から立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ