1・探す者
新しい章です。
森をぬけた先にある崖は深く、確かに下に川は見えるが到底下りられるようなものには見えなかった。
「いや……これはないんじゃないかな~」
谷をのぞき込んで彼が言えば、彼女がその彼の襟首をつかんで引き寄せてから口を開く。
「でも父様達は村に来る時にこの崖を登ってきてる。多分、もっと向うにいけば登りやすいところがあるんじゃない?」
「登れるところなら下りれる筈、ってこと?」
「そう」
森へ逃げた村人達はまだ捕まっていない――それをナグラックの連中が話しているのを聞いた段階で彼女は思った、もし彼等がちゃんと逃げ延びているのなら、谷の下に下りたのではないかと。
婆様や女性陣がいるのなら、かつて村へ旅してきた道を逆に辿ってみようと思うものがいる可能性は高い。
「いやでも、ちょっとくらい登りやすくなってたとしても結構厳しそうだけど……」
「この谷を見たらそう思うのが普通でしょ。という事はナグラックの連中もまさか下に下りたとは思わない。つまり、下りられれば逃げられるって言えない?」
「そりゃそうだけど……」
「とりあえず下りられそうなところを探して、崖沿いをずっと進んで見るしかないでしょ、文句あるの?」
「いえ、ないです」
そうして二人は崖沿いの森の中を歩き出した。
キリの関係で1話は短いですので、2話も一緒にあげます。
この章はアルス側がメインの話になりますが、次回はゼラのお話。




