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クリュース建国記  作者: 沙々音凛
一章:旅立ち
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7・聞いてない2

 最悪だ。

 逃げようとしてもレガンの取り巻き達が前を塞いでいる。それでも自分一人なら逃げる事は可能だろうが今日はシオールがいる。こちらが逃げないとわかったのか、レガンはじっとシオールを見て、それから言った。


「お前の奴隷、強いって話を聞いたんだが、とても強そうには見えないな。別のご奉仕で認めて貰ったとかなら別だけどな」


 正直、アルスはドン引きした。シオールの容姿がいいからそれを揶揄ってこちらをムキにさせようとしているのだろうが、それにしても品がない。

 これは怒っているだろうな……と思って横をちらと見たアルスは、そこで銀髪の少年が完全に無表情でレガンの言葉を無視しているのにちょっと驚いた。彼はプライドが高そうだからてっきり殺気でも放ってるんじゃないかと思ったのだ。ただ彼がそういう態度でいてくれるなら、こちらとしてはどうとも対処できる。

 どうせ、この脳筋馬鹿が次にいいそうな言葉なんてわかってるのだから。


「よし、俺がお前の奴隷の実力を見てやる。ついてこいっ」


 呆れるくらい予想通りで、その言葉が言い終わる前にアルスは返した。


「断る」


 レガンは断られると思ってなかったのか、そこで顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。


「ふざけるな、今日はいつもみたいに逃げられると思うなよっ」


 確かに今日は逃げられない。だがだからといってこの馬鹿の言う通りにする気はなかった。アルスはレガンの目を見て、あくまで冷静に言葉を返す。


「レガン、まず第一に、何故お前に俺の護衛の実力を見てもらう必要があるんだ? このシオールは我が父サリドが実際に武器を交え、腕を見た上で『強い』と言っているんだ、お前はその言葉を疑うのか?」


 英雄の発言を疑う事は、この村の人間なら余程の理由がない限り許される事じゃない。しかも既に戦士として功績を上げている者ならまだしも、レガンはまだ戦いに出た事もないひよっこだ。

 案の定、レガンの顔色が変わっていく。


「そもそもお前は我が父、もしくは同等の戦士の誰かから『強い』と言われた事があるのか? ないのなら父から直接『強い』と認められているこのシオールとどちらが強いのかなんて試すまでもない。それにシオールの立場上、俺を守るため以外の理由でお前に怪我をさせたら罰せられる事になる。だから、ただの手合わせでもお前とシオールが戦う事は許可出来ない」


 そこですかさずシオールが目を伏せて冷静に言う。


「我が主であるアルス様が許可しないのであれば、俺は戦う事は出来ません」


 別に打ち合わせた訳でもないのだが、いいタイミングだ。


「我が父の発言を疑っていないのならそこをどけ。……分かるだろ?」


 言うとレガンの手下達はレガンを見ながら僅かに退くが、レガンからの指示がないからまだ完全にどいてくれはしない。

 レガンは顔を赤くして暫く黙っていたが、まだ諦めずに怒鳴ってきた。


「ならっ、訓練だ。今日こそお前も訓練に出ろっ。だからついてこいっ」


 成程今度はそうきたかと思ったが、そこでアルスはへらっと笑ってみせる。


「あぁ、俺はもう父上公認で戦士の道は諦めていい事になったんだ。だから訓練する必要なしっ」


 それにはレガンと、ちょっと離れて事の成り行きをみていたマーナも口をあけてぽかんとした。


「いやー、とうとう父上も俺を鍛える事を諦めてくれてさ、だから俺の代わりに戦える強い護衛をつけてくれたって訳なんだよ」

「ちょ……あんたそれでいいの?」


 そこで口を出してきたのはマーナで、レガンはまだ間抜け面で口を開けていた。


「いいのもなにも、やっと父上も俺にへんな期待をしなくなってほっとしてるところさ」

「だってそれって、見放されたも同然なんじゃ」

「いや、戦士として俺が使えないのなんて、皆もう分かってる事だろ」


 それで黙ってこちらを睨んでいる彼女にひらひらと気楽そうに手を振って、アルスはその場を離れる事に成功し……たように見えたのだがそうはいかなかった。というか、今度はレガンのようにテキトウに流す訳にもいかない、本気の災難というか厄災とも言える事態がふりかかってきたからだ。


「おい、サリドの息子っ」


 その声に、アルスだけではなく、レガン一行やマーナ姉妹も姿勢を正す。今までのひよっこ同士のやりとりと違って、その声の主はこの村の六英雄の一人、クォーラのものだった。彼の家は村の中でもここから離れているため、この辺りで彼を見かけるのは珍しい。そのため、その場の連中は皆『何故ここに』という顔をしていた。


「あ、はい。なんですか?」


 さすがにアルスも姿勢を正せば、クォーラは近づいてきてシオールの前で足を止める。それから彼を上から下までじっと見て、何か意味ありげな不気味な笑みを浮かべてからアルスを見て言ってきた。


「サリドから話は聞いているな、勝負は八日後、次のソトの日だ」

「え?」

「必ず勝って、こいつは俺が貰うからな」


 それだけ言ってこちらに凄んでみせる。父とは違うタイプだが実績も実力も確かな男であるから圧がすごい。鍛えていないアルスは体格的に気押されるのは仕方がない事ではあるが、問題はそこじゃない。


――いや俺、何も聞いてないんだけど。


次は父のところへ抗議(?)に。

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