51・旅の仲間
この章はこの話で終わりとなります。
「さて、話を戻すけど。そういう事で、彼女は俺達の土地の外の人間だから当然こっちの勢力争いなんて関係ない、勿論ナグラックと繋がってる訳もない、これはいいよね? それで彼女が信用出来るかって話だけど、じゃ、信用出来ない場合彼女が俺達相手に何をすると思うのかな?」
アルスのその言葉にはレガンの顔が怯んだが、それでも彼はすぐに返してくる。
「ど、動物避けの結界なんていって何もしない、とか」
「自分もいるのにしないとかないだろ」
「間違った道を教えて危険な場所につれていく、とか」
「それも、自分も同行するならやらないよね。そもそも俺達を危険な目に合わせるメリットが彼女にない」
「なら、言う通りの道をいったら仲間が待ってて俺達を捕まえる、とか」
「仲間がいたらそんな回りくどい事しなくても、昨日の夜にでも呼べば皆簡単に捕まえられたと思うよ」
「いやだがっ、俺達を油断させて利用しようと……」
そこまで言って言葉を詰まらせたレガンに、アルスはわざと大きなため息をついてみせた。
「いいかレガン、俺達が今第一に優先すべき事はナグラックから逃げ切る事だ。そして逃げ切った先で村を再建、もしくは村を取り戻せるくらい力をつけること。そう考えれば、たとえ彼女が俺達を利用してても別にいいんじゃないかな。むしろ、彼女の土地の人たちに接触して交渉出来たらって俺は思う」
「だ、だがっ……その女のところがもしあの辺り一帯支配する気なら、俺達をナグラックに差し出して有利な交渉を持ち掛ける可能性とかもあるじゃないかっ」
――レガンとしてはがんばっていろいろ考えた、ってところだけどね。
そこでアルスはわざと笑い声をあげてみせた。それで顔を赤くして黙るレガンに、今度は冷静な声で告げてやる。
「それってさ、彼女達の側にメリットがあるのかな?」
レガンは当然として、シオール以外の皆、黙ってみているだけの女性陣もジェアも真剣な顔でこちらをじっと見てくる。自分でも芝居ががってるなぁと思いつつも、ここは彼等に印象づけなくてはならないところだ。
「まずだよ、彼女のいるところは俺達よりずっと技術が進んでる、当然ナグラックよりもだ。俺達のいた地域一帯を支配したいなら、別にナグラックと手を結ぶ必要なんかないんじゃないか?」
その言葉が示す意味――つまり、彼女のきた土地の技術があればナグラックに勝てるかもしれない――その可能性に気づいた皆の表情が変わる。
本当はこれをシェノン本人がいる前で言いたくなかったが、この可能性を教えておけば今後彼女の事で文句を言ってくるのは減るだろう。ちらと彼女を見れば、目を閉じて沈黙を守ってくれていた。あとでフォローは必要だろうが、彼女の聡明さに感謝だ。
「って事で、俺達の状況、そして俺達が最優先すべき事を頭に置いて判断してほしい。さっきいった条件で、彼女を同行させてもいいだろうか?」
その場の皆の間に、一瞬の沈黙が下りる。
だがすぐに、声があがる。
「俺はいいと思う」
真っ先にそう言ったのはジェア。そこから次々に声が返ってくる。
「私も」
「私も、いいと思う」
反対の声は上がらない、当然婆様達も賛成してくれた。さすがにこの状況だとレガンも黙る。とはいえ心情的にはまだ納得しきってないらしく、彼はこちらを睨んでから顔を逸らした。周りは皆歓迎ムードだから一人で不機嫌な彼は浮いてしまっている。皆の同意を得られたのはいいとして、レガンのこの状態はあとでどうにかした方がいいだろうとアルスは思う。
ただともかく、彼女との繋がりを作る事は、自分たちの目的に向けて一歩前進したと言える筈だった。
「という訳でシェノンさん、暫くの間よろしくお願いします」
最後に彼女にそういえば、彼女は立ち上がってずっと閉じていた口を開いた。
「あくまで私は情報を得たいだけだ。そして同行するからには、あなた方が無事逃げられるよう協力しようと思っている」
言いながら彼女は、優雅ともいえる所作で一礼した。
そこで視線をこちらに向けてきたから、仕方なくアルスも立ち上がって彼女に礼を返した。
何故か拍手が起こる。いや本当に困るんだけどと思っても、特に女性陣は全員拍手をしてきてアルスは笑顔をひきつらせた。
これでこの章は終わりです。長かったですが、ここからの旅を共にする重要キャラのシェノンが合流するところまでを他旅立ちの章とさせて頂きました。
2章はアルス達の旅の道中の話も入りますが、ゼノ陣営の話の方がメインとなります。




