45・夜の見張り
結局村人全員が下りたころには辺りは薄暗くなっていて、かろうじて真っ暗ではないと言えるくらいになってしまった。それでも無事に全員、荷物も含めて今日の内に下ろし切れた事に本当にアルスは安堵した。
「今日はゆっくり眠れるね!」
ずっと不安そうな顔だった子供達が嬉しそうにそう言っている。それを見て、アルスもなんだかどっと疲れが出てついあくびが出てくる始末だ。
谷には川が流れていたので皆体や服を洗う事が出来た。また、こちらが下りた場所より少し前のあのでっぱっている場所の下は大きくくぼんでいて……というか抉れたようになっていて、全員が入れるくらいの広い空間があった。そこなら雨が降ってもしのげて、上からも見えない。おまけに風も川にそって流れているから煙を気にせず火も使えた。先に下りていた者が魚を取ってくれていたのもあって、夕飯はあたたかいものがちゃんと食べられた。
まだ安心できる状況ではないといえ、体の汚れが拭えて食事と睡眠がちゃんと取れれば、結構人間というのは元気になれるものだ。
「よし、昨日より見張りは少なくていいだろ。今日は半分づつ交代にしよう」
見張り役を集めてレガンがそう言っていたから、アルスがそれに付け足した。
「あー……皆疲れてるだろうし、とりあえず何もなければ明日一日はここにいてもいいんじゃないかと思うんだ。移動を考えるのは明後日以降にしよう。今夜は見張り役の皆もまとまった時間寝たいだろうし、夜中に交代じゃなく、まだ体がもちそうな人に今から朝までがんばってもらって、そこで交代したほうがいいんじゃないかな。勿論、言い出しっぺだから俺は朝までの見張りをするよ。シオも大丈夫だよね?」
自分とシオールはセットのつもりだから確認すれば、シオールはすんなり、大丈夫です、と返してくれた。一応、アルスとしても、彼の様子を見て余裕がありそうだと思ったから発言している。
「では私もこのまま見張りをします」
ドゥトスが手を上げて言ってくる。
「今の私の主人はアルスロッツ様ですから」
と言われてしまうと、アルスとしてはちょっと困る。いや、彼女とは結構長い付き合いだし身近な存在と認識してはいるのだが、だからこそ父の部下から自分の直接の部下になるとどういう距離感で接すればいいのかがよく分からないのだ。
「あー、なら逆にドゥトスは先に休んでもらえないかな。で、昼間に俺達が寝てるのを守っててもらいたいかなっ」
苦し紛れの言い訳ではあるのだが、そういえば彼女は納得して、了解しました、とあっさり引いてくれた。いや彼女とは一度ちゃんと話さなくてはならないと思っているが、今はまだそっちまで気を使ってられないというのが正直なところだ。
「じゃー私も彼女と一緒にあんた達が間抜けに寝てるのを見ててやるわよ」
その言い方はちょっと引きつるが、マーナにはさっさと寝てもらいたいから何も言い返さない。
「ま、まぁ、何かあったら皆を起こすだけだから、夜の見張りは俺達だけでもいいくらいだし。寝たい人は寝てくれていいんじゃないかな」
……と言ったのだが、さすがにそれはだめだろうと、結局その日はアルスとシオール、それにジェアと彼の奴隷のトレックが見張りに起きて、あとは寝る事になった。
今回は短くてすみません。次回は夜の見張り組の話。




