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クリュース建国記  作者: 沙々音凛
一章:旅立ち
12/19

11・ハンデ

「えーと、トレック、だったよね。ジェアのとこの」


 アルスより年下の少年は、ジェアのお付きの奴隷だ。

 ジェアはアルスの一つ上で戦士未満組の一人な訳だが、彼はレガンとは別のもう一つのグループのリーダーである。つまるところジェアも六英雄の息子な訳で、彼の父親はあのクォーラだ。

 で、この場合、十中八九ジェアが用事があるという事だろう。つまりここで無視して逃げれば、この奴隷の少年が咎められる可能性がある。


「我が主、ジェアレア様が貴方にお話したい事があるそうです。来ていただけますか?」


 断る、といつものように言いたいのを我慢してアルスは笑顔を作った。


「えーと、ここから近いのかな?」

「はい、すぐそこです」

「分かった」


 呼び止めた時は不安そうだった少年の顔が安堵で緩む。うん、やっぱり断られたらどうしようとか思ってたんだろうなーなんて考えてしまって、行くしかないとあきらめた。


「では、こちらへ」


 言われるまま、アルスはトレックについて行った。勿論シオールも一緒にだ。

 幸いな事に言った通り目的地はすぐで、道から逸れて建物の裏に入っただけで彼は足を止めた。当然、そこにはジェアが待っていた。わざわざここに連れてこさせたのは、人目を避けたかっただけだろう。

 とはいえ、そこでまずは挨拶でもと口を開きかけたところ。


「まずは、うちのバカ親父が迷惑をかけて悪かった」


 そう、いきなりジェアに頭を下げられて、アルスは狼狽えた。


「あ、いや……」

「本当にあの親父は欲しいと思い込むと恥もなくて……六英雄の一人のくせに、子供相手に勝負とかどんだけ恥知らずなんだかっ」


 まー確かに『英雄』なんて肩書ついてる人間が、正式な戦士でもない子供相手に普通に勝負をするのはおかしい。身内からすれば恥ずかしいと思われても仕方がないが、子供に『バカ親父』といわれるからには普段からいろいろあるんだろうなーとも思う。クォーラは六英雄の中でも最年少で、頭を使うより力任せというタイプだし……うん、確かにいろいろやらかしていそうだ。


「さすがに同条件での勝負は恥ずかしすぎるから、何かハンデをつけたければ俺が親父に言い聞かせる。いや、そもそも勝負を無い事にしたいなら、俺……では無理でも母が絶対に言う事を聞かせるから言ってくれっ、本当にすまないっ」

「あーいや、謝らなくてもいいからさっ」


 六英雄の息子として地位は同列とは言っても、年上に頭を下げられるとアルスも困る。ちなみにジェアはアルスたちのいる地区とは違うグループのリーダーであるから、こっちのグループのリーダーのレガンとは仲が悪い。滅多に会う事はないが顔を合わせれば言い合いをしているくらいだ。その時の彼のイメージがあるのもあって、ここまで下手に出られるとなんだか気まずい。

 ちらと後ろにいるシオールを見れば、彼は全く興味がなさそうにこちらを見ていて、目が合うと目礼を返してきた。ジェアの言ってきた事に関してはこちらに任せる、という事だろう。


「えーと、ジェア、うちの父上が一度了解しちゃってるし、今更勝負をなしにするのは多分、状況的にも無理だと思うよ。結構もう広まっちゃってるしね」

「ならハンデをつけよう、なんでも言ってくれ」

「ハンデも……まぁ、いいかな」

「いやでも、流石に子供相手に同等の勝負はないっ、なんならそっちは二人がかりでもいいんじゃないか?」


 それにはアルスも自分の事とはいえ笑ってしまった。


「いっやー、ないない、俺がいてもシオールの邪魔になるだけだしっ。シオールの後ろから石や砂投げたりするくらいしかやれる事ないし、そんな事やったらもし勝てても大顰蹙だろ、きっとさ」


 それにはジェアが顔を引きつらせて黙る。普通にまっとーな戦士を目指している彼には今のアルスの発言は理解できないのだろう。だから何を返せばいいのか分からず彼が固まっている隙に、アルスは話を切り上げる事にした。


「じゃ、俺達は訓練があるからっ。こっちを気にしてくれてありがとうっ」


 笑顔で手を振って、アルスは自慢の逃げ足でそこから離脱する事に成功した。シオールもアルスが逃げる気なのは分かっていたらしく即座についてきて、一気に一緒に村を出た。

 ただ、村を出てほっとしたところでシオールはアルスに聞いてきた。


「いいのですか?」

「何が?」

「ハンデの件は、少し考えてみてもよかったのでは?」


 確かに、ハンデの付け方によっては実力差を多少は埋められるかもしれない。勝つためにどんなハンデをつけてもらうのがいいか考える余地はあるだろう、だが。


「そうだね、でも今回みたいな場合は、へたにハンデをつけない方が勝機があるんじゃないかな。それにハンデつきだと勝っても認めてもらい難いし」


 シオールはそれに僅かに口角を上げて答えた。


「そうですね」


 一応勝つためにいろいろ考え、それに合わせてシオールには訓練をしてもらっている。今更何か有利になる条件を指定したところでそれで訓練し直す時間はない。それに、ハンデがない事で相手に余裕があるからこそ生まれる勝機というのもあるものだ。


次回は実際の勝負の日となります。

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