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クリュース建国記  作者: 沙々音凛
三章:森の住人
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15・オーレアの話

 今ここにアルスがいないのなら、疑う役目は自分だろう――ジェアはレガンに恨まれるのを覚悟の上で、レガンの兄オーレアの行動に対して全てをまず疑ってみることにしていた。


「生き残ってる連中は奴らの下でそのまま村で働かされてる。監視の兵はいるがそこまで多くはない。頭領のゼラがいる時は直の部隊がいるから近づくのもヤバイが、ゼラは忙しくていない事も多いそうなんだ。だからゼラが留守の時なら、村にいるウチの連中と連携をとれれば村を取り返せるんじゃないかと俺は思う」


 オーレアは合流した次の日、皆に折り入って話があるといって朝食後に人を集めた。それがこの話だ。


「もし取り返せたとしても、父達六英雄を失って戦力が大幅に低下した我々では、村を守り切れないんじゃないですか?」


 一応ジェアはそれを単なる疑問のように聞いてみた。


「なに、壊れた門は奴らが修理してくれたみたいだから、もしまた連中がやってきても今度はちゃんと門を閉じて戦えば撃退出来るさ」


 疑おうとしているのをなしにしても、ジェアにはオーレアの話は見通しが甘すぎるとしか思えなかった。


「そんなに生き残ってる人間は多いんですか?」

「あぁ、村の戦士の半数くらいは生きてる。最初はそれこそ門の修繕とか、戦いで壊れたものの修理をやらされてたみたいなんだが、それが一段落してからは森に連れていかされて狩りだったり、木を切ったりさせられてるらしい」


 オーレアの話では、こちらを探しつつ、ナグラックの追手を見る度に隠れて話を聞き、彼等の情報を集めていた、という事だが……疑えばいくらでも疑える話ではある。


「よしっ、ならさっそく救助に向かおう」


 血の気の多い連中はこぞってそれで盛り上がる。ジェアは迷っているふりをしていたが、自分のグループの人間も助けに向かおうと言っている者は多い。


「なんだジェア、何迷う事あるんだよ、助けに向かう一択だろ!」

「そうだよジェア、ここで行かなきゃ戦士じゃないぞ!」


 更にはこっそりだが、アルスの慎重さがうつったんじゃないかと言い出す者までいる始末だ。まぁそれは否定できないが。


「いや、もしかしたら連中がわざとそういう話をして俺達をおびき寄せようとしてるって可能性もあるじゃないか」


 ここでいきなりオーレアを疑えば反感を買う。だからまずそう言ってみれば、オーレアは明らかに不機嫌そうな顔をした。


――やっぱりオーレアさんがこっちを自力で探し当てられたとは思えないんだよな。


 ジェアはそこまでオーレアを知っている訳ではないが、よくも悪くも普通に『戦士らしい』タイプの男だったと思う。目立って記憶にないという事はそういう事だ。アルスみたいな変わり者や、セルマみたいにやたら気を遣う人間だったらもっと印象に残っている筈だ。


「ならまず、その状況が本当なのか行って確かめてみればいいんじゃないか?」

「そうだ。とりあえず戦闘要員以外はここに残って、戦えるものだけ村に戻って確認する。そこでゼラが部隊を率いて村を出る事があれば皆を助ける行動に出ればいい」


 それでいいだろ、と戦いたくてしょうがない連中が言えば、そこで婆様の一人、最年長のエリグアが声を上げた。


「お前達、結論はまだお待ち」


 さすがに皆が一旦黙る。


「いいかい、どうするか結論を出すのはアルスが帰って来てからだよ。なにせ今はアルスがリーダーだからね、その意見も聞かないで勝手に行動したらだめじゃないか」


 不満そうな顔をしている者は多いものの、それで村へ戻る話は一旦終わりとなった。それでも戦士らしい思考の連中はそのままオーレアにべったりで、もっと詳しい村の話を聞こうと彼についていった。六英雄の奥方連中はオーレアの案に乗るのは賛成ではないのは表情で分かる。


「ジェア、あんたがそんな臆病者とは思ってなかったよ」


 そんな捨て台詞を吐いてジェアのグループからも数人、オーレアの方についていった。それでもジェアが乗り気でないのを察した半分以上は困惑したまま解散していったが。

 ただこういう状況ならまず真っ先に、村に行くべきだと騒ぐ筈のレガンは意見を言わずにずっと黙っていた。ジェアとしては、昨日こちらが言った事を受けて彼は慎重に兄を観察している……と思いたいところだ。


「トレック」


 皆があらかた解散してから、ジェアは後ろに控えていた少年に小声で声を掛ける。


「はい、何でしょう?」

「今回、村に行きたがっていた奴を覚えておいて、そいつらがへんな動きをしてたら教えてくれ」

「はい、分かりました」


 ジェアは自分付きの奴隷であるトレックを、アルスのように常時傍に置いてはいない。いわゆる『お使い』要員としていろいろ仕事を頼むのもあるが、こうして周囲の人間の動向を探ってもらう事もあるからだ。


――まったく、アルスがいないだけでこんなに神経的に疲れるとは思わなかった。


居残り組、今回はジェアから見た状況。まぁ、明らかにオーレアはオカシイです。

次回はレガンから見た話。


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