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クリュース建国記  作者: 沙々音凛
三章:森の住人
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9・まさか

 アルス達が調査に出ている間、待機している村人達の方は……いまのところは平和そのものだった。

 自分達が来た方の崖はまだかなり高いからそちらから動物やらの敵がくることはまずないだろうが、今いる側の岸はもう崖という高さはないから身軽な動物なら下りてくる可能性はある。だからレガンは当然気を緩めていなかったし、他の警備役の者達も皆、気を引き締めて周囲に注意を払っていたのだが……。


「ほーら、カルカ、それ以上はいっちゃだめよ」

「はーい」

「かーさん、この石きれいっ」

「まぁほんとね、これは宝物ね」


 目の前で繰り広げられるのは、子供達と女性陣が楽しそうに川で水遊びをしている図だった。いや、一応女性陣は洗濯をしているのだが、子供達が遊んでいるのを見ながらだからやけに楽しそうだ。


「ほーら、夕飯は確保したぞー」

「お、五匹とはなかなか」

「こっちはまだ三匹でなぁ」


 爺さん連中は釣りに夢中でこちらも楽しそうだ。いや、子供達はおいておいて、皆それぞれ遊んでいる訳ではない。それは分かっていても、自分達以外があまりにも平和で楽しそうにしているから、レガンは思わず苦笑してしまう。皆、気が緩みすぎだと。


 ただ彼は、そこで自分の変化に気づいた。


 崖から下りてすぐの場所でこうして見張り役をやっていた時は、やけに楽しそうに気を緩めている連中に怒りが湧いた。この状況で笑えるのがおかしいと思っていた。

 ただあの大イノシシを倒して、皆から口々に感謝の言葉をかけられた時、レガン達は言われた言葉がある。


『今回だけじゃなく、いつも体を張って皆を守ってくれてありがとうね。私たちが笑っていられるのは、貴方達がちゃんと守っていてくれるからよ』


 それからは、村人達が笑っていても不思議とレガンはムカつかなくなった。彼等が笑っているのが、自分達がこうしている成果なのだと考えれば誇らしくもあった。


 その心境の変化のせいか、あれだけ言ってる事の何もかもが気に入らなかったアルスの意見が多少は分かるようになった。つまるところ、アルスは皆が助かる事を第一に考えているのだと。

 だから彼がリーダーに選ばれるのは当然だと、それも納得できるようになった。ただ彼は自分が戦闘指揮は取れないと分かっているから、そちらはレガンに任せた。つまりそっち方面では自分が一番優れていると認められている、とも言える。


 だから、認められているところでは、皆の期待を裏切ってはいけない。


 アルス達の調査は、様子を調べてすぐ戻ってくる可能性もあれば、実際に現地の人間と交渉して数日かかる可能性もあるそうだ。だからレガンも長期になる場合を考えて、見張りの人間は交代制にしていた。勿論レガン自身もジェアと交代で休む事にはなっていたが、何かあればすぐに起きられる自信はある。もし戦闘が起こるような事があれば、どんな時でも即対応できるつもりだった。


 そんなレガンが誰よりも早く、一番最初に、こちらに向かってくる人影を見つけた。

 見つけると同時にレガンは周りにまず声をかけた。


「誰か来る、皆警戒しろっ。モルっ、ジェアに知らせてくれ。ネクス、パルダはついてこいっ」


 いいながらすぐに人影に向かって走り出す。見たところ相手は一人だ、だが隠れて複数人いる可能性もある。盾を構え、剣を持ちレガンは走る。

 ……だが、相手の姿がよく見えるようになった段階で、レガンの足は止まった。そして向うも、こちらに気づいたらしく声を掛けて来た。


「おーい、お前まさかレガンか? 無事か? 他の連中も皆いるのか?」


 目を見開いて、驚きながらもレガンは呟いた。


「オーレア兄さん……生きて、たのか」


 向うが走って近づいてきて更に顔がハッキリ見えるようになった、間違いない。やってきたのはレガンの二番目の兄であり、戦士としてあの戦闘に参加していた筈のオーレアだった。


って事で、残っていた連中の方にも重要なイベントが起きます。

次回はアルス側の話。

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