挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第6章 遺跡の扱い

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

113/122

(13)タケルの成果?

 フィロメナの返答を聞いたラウラは、再び貴族たちに向き直った。
「それでは、わたくしたちは、これ以上用はないので、これで失礼させていただきます」
「なっ!? どういうつもりだ! そんなことが許されると……」
 貴族のひとりが半ば叫ぶようにそう言ってきたが、途中でフィロメナが割り込んだ。
「お前たちが許す許さないは関係ない。私たちに用が無いのだから、もう下がらせてもらう。それとも力で私たちを押さえつけるつもりか?」
 強めの口調でフィロメナがそう問いかけると、貴族たちは黙り込んだ。
 シゲルたちからすればお花畑思考の彼らも、フィロメナを武力で押さえつけるという難しさは、しっかりと理解しているようだった。
 その反応を見たシゲルは、余計な犠牲者が出なくてよさそうだと、内心で安心していた。

 ラウラとフィロメナの言葉を聞いたミカエラが、この時点で立ち上がって言った。
「やれやれ。結局無駄な話し合いだったわね。もうちょっと実のある話が聞けると思ったんだけれど」
 敢えてそれが何かを言わなかったミカエラに、マリーナが同じように立ってから応じた。
「仕方ないわ。彼らは、自分たちの利益しか考えていないのだもの」
 サクッとそう返したマリーナを見て、シゲルは苦笑することしかできなかった。
 話している内容はもっともなことなのだが、それを聞いている貴族たちからすれば、喧嘩を売っているとしか思えない。
 現に、何人かは青筋を立てそうな顔になっている。

 マリーナの言葉は、裏を返せば自分たちに利が得られれば、実りのある話ができたと言っているのだが、それに気づく者はいなかったようだ。
 少なくとも、そのことについてこの場で言及してくる者は、一人もいなかった。
 その様子を見て、最後まで座っていたフィロメナが立ち上がった。
「本当に話が無いようなので、これで失礼させてもらう。次があるかは分からないが、今度はこのようなことが無いようにしてほしいものだな」
 二度と会うつもりはないが、フィロメナはそんなことを言って締めの言葉とした。

 フィロメナの言葉を最後に、シゲルたちは呼ばれた部屋から出て行った。
 そして、シゲルたちをその場に呼び出した貴族たちは、それをただ黙って見送ることしかできないのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 貴族たちとの話し合いから半ば無理やりに終えたシゲルたちは、すぐに次の国へ向かうのではなく、オネイル山脈へと向かった。
 目的は勿論、タケルの研究室へ行くためだ。
 アマテラス号の定期検査をしてもらうということもあるし、何よりもフィロメナがタケルの研究資料を見たがった。
 主に来たがったのはフィロメナだが、他の面々もタケルが残した物には興味がある。
 これまでの各国訪問の息抜きを兼ねて、満場一致で訪問が決まったのである。

 アマテラス号がドック(もどき?)に入ると、すぐに艦橋にエアリアルが姿を見せた。
「よく来たわね、シゲル」
「はい。お手数をお掛けしますが、船のチェックをお願いします」
「手間だなんてことは思っていないわよ。私が好きでやっているんだから」
 シゲルの言葉にそう答えたエアリアルは、その言葉を証明するかのように、操縦席へと座っていろいろといじり始めていた。
 その姿を見れば、本当に好きでやっているんだということがわかる。

 これ以上は話を出来る状態ではないと判断したシゲルは、皆を促してタケルの研究室へと向かった。
 その途中、ラウラが神妙な顔つきになって言った。
「――話には聞いていましたが、実際に目の当たりにするととんでもないことだと実感しますね」
 そのラウラの言葉に、きっちりと着いてきていたビアンナとルーナが頷いていた。
 ラウラたちは、フィロメナから大精霊の威圧を話として聞いていたのだが、今回初めてその力を実感することが出来た。
 そのこと自体も驚きではあったが、それ以上にシゲルが何気なく大精霊と会話していたことが、あり得ないことだった。
 改めて、シゲルは精霊に関しては、規格外なのだということを認識させられたのである。

 そんなことを考えていたラウラたちに、ミカエラがため息交じりに言った。
「もう、シゲルはそういう生き物だと思って対処するしかないわよ」
「いや、生き物って……。間違いじゃないけれど、もう少し、こう言い方ってものが……」
 間違っていないことだけに、シゲルとしても反論する言葉に勢いがなかった。
 ミカエラの「生き物」発言も、別にシゲルを排除するために言っているわけではないことは分かっているので、無理に訂正させるつもりもないのだ。

 フィロメナは、そんなシゲルを見て少しだけ笑った。
「まあまあ。シゲルに関しては、これから嫌でも慣れていくだろう。こんなことを言っているミカエラだって、ブツブツ言いながらも順応しているからな」
「……好きで慣れていったわけじゃないわよ」
 そう言いながら頬を赤くしてそっぽを向くミカエラを見たシゲルは、内心で「ツンデレ?」などと考えていた。
 勿論、そんなことを口にしようものなら、大反撃を喰らうことが分かっているので、実際に言う事はなかった。
 ついでに、ツンデレという言葉が、この世界で通用するかどうかは不明である。

 
 そんな会話をしつつも、シゲルたちはタケルの研究室へと入った。
 その部屋に入るなり、フィロメナが目を輝かせて資料を手に取り始めたのを見て、シゲルは微笑ましく見守っていた。
 フィロメナの様子を見れば、本当に魔道具の研究が好きなのだということが分かる。
 ミカエラやマリーナも、以前来たときに目を付けていたのか、フィロメナと同じように資料に手を付け始めた。

 それらを見ていたラウラは、少し遅れて資料の一枚を手に取った。
「――日記を見た時にわかっていたのですが、本当に知らない文字で書かれていますね」
「まあ、自分たちの故郷の文字だからね。タケルは、こっちの文字も書けたみたいだけれど、やっぱり慣れた文字で書いた方が、思考がしやすかったんじゃないかな?」
「そうでしょうね」
 シゲルの説明に、ラウラは頷きながらそう答えた。

 そうして何枚かの資料をめくっていたラウラだったが、ふとしたところで手を止めた。
「――――あら? この資料はどこかで見たような気が……?」
 そう言って首を傾げているラウラに、フィロメナが反応した。
「何? どの資料だ?」
「これです」
 ラウラがそう言いながら差し出した資料を、フィロメナは受け取ってからすぐに目を通し始めた。

 資料を見ていたフィロメナは、何度か頷いてからそれをラウラへと返した。
「恐らくだが、それはアイテムボックスのことを書いてある資料だな。多分、作り方も書いてあるのではないか?」
「へー、どれどれ?」
 フィロメナの言葉に興味を覚えたシゲルが、ラウラの手に移っている資料を覗き込んだ。
 その先に、シゲルが急接近してきたことにラウラが顔を赤くしていたが、残念なことに資料に目が行っていたシゲルは気付くことはなかった。

 ラウラの様子に気付かないまま、シゲルは資料に目を通していた。
「確かにそうみたいだね。ただ、完成品じゃなくて、研究途中のことが書かれているみたいだ」
 シゲルが見た限りでは、タケルは既存のアイテムボックスをより使いやすくするための研究をしていたようだった。
 具体的には、より小さな物に、より多くの物を詰め込めるように出来ないかを検討している。
 残念ながらラウラが持っている資料では、上手くいったところまでは書かれている様子はなかった。

 シゲルの言葉に頷いたフィロメナは、
「なるほど。上手くは行っていないのだが。……ところで、そろそろ離れてやったらどうだ? ラウラの息の根が止まりそうだぞ?」
「えっ?」
 フィロメナの言葉に驚いたシゲルは、ラウラを見た。
 すると、いつからそうしていたのか、顔を赤くしながら息を止めているラウラと視線が合った。

 そこでようやく状況に気付いたシゲルは、パッとその場から一歩身を引いた。
「いや、ゴメン。全く気付かなかった。近すぎたよね」
「い、いえ。その、別に嫌ではありませんでしたから……」
 小さな声ながらもそうはっきりと主張して来たラウラに、シゲルとしては「そう」としか答えることしかできなかった。
 そのやり取りをみていた外野の者たちは、生暖かい視線をふたりに向けるのであった。
今のところよほどのことが無い限りは、貴族家をつぶして「ざまあ」をするつもりはありませんw
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ