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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第6章 遺跡の扱い

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(14)ドックの調査

 タケルの研究室――『作業部屋』には、日本語で書かれた資料しか置かれていなかったため、フィロメナは描かれている絵などをもとに調査を行っていた。
 ほかの者たちは、残されている道具などについて、いろいろと調べたりしている。
 そんな中、シゲルはラグとシロを伴って、アマテラス号が泊まっているドックへと来ていた。
 別にエアリアルに会いに来たわけではなく、こちらにも何かないかと考えて、調査をしに来たのだ。
 そもそもアマテラス号が入っているだけあって、ドックの広さはかなりある。
 以前来たときは、そこまで詳しく調べられなかったので、こちらの調査も大事だと考えたのである。

 そして、シゲルが一時間ほどドック内をウロウロしていると、マリーナがラウラ一行を連れてやって来た。
 ちなみに、ラウラ一行というのは、ビアンナとルーナを含めた三人のことだ。
 アマテラス号が入ってきたときに一度見ているはずだが、ラウラたちは興味深げに辺りを見回していた。
 そんな彼女たちを横目に見ながら、マリーナがシゲルに聞いて来た。
「どう? 何か見つけたかしら?」
「まあね」
 シゲルがそう答えると、ラウラたちもシゲルに注目して来た。

 それに気付いたシゲルは、とある方向を指しながらさらに続けて言った。
「当然といえば当然だけれど、あっちの方に、船を整備するための道具が置かれた部屋があったよ。それから、恐らく作業員が待機するための部屋とか」
「ああ、なるほどね」
 今はメンテナンスをエアリアルが行っているが、タケルが生存していた当時はきちんと人の手で行っていたはずである。
 その者たちが作業を行うための環境が、ドックに整っているのは当たり前のことだ。

 マリーナは、シゲルの説明を聞いて何度か頷いてから聞いた。
「それで? その部屋にはなにがあったの?」
「いや、流石にそこまでは調べ切れていないよ。部屋数だけでもかなりあるから」
「あら。そんなにあるのね」
 シゲルが指していた方角は、タケルの作業部屋と繋がっている通路とは真逆の場所にある。
 以前のシゲルたちは、扉の存在には気づいていたが、その奥までは調査していなかったのである。

 マリーナの言葉に頷いたシゲルは、続けて言った。
「うん。だから、みんなを呼びに行って調べてもらおうかと思ってね」
 一人で調べるには限界があるので、頭数で解決しようとしていたのだ。
「そういうことならミカエラも呼びに行きましょう。……フィーは来るかどうか分からないけれど」
 現在のフィロメナは、タケルが残した資料にくぎ付けになっている。
 下手をすれば、呼びかけても生返事しか帰ってこないような状態なのだ。

 既に何度かその状態のフィロメナを見たことがあるシゲルは、笑いながら答えた。
「まあ、それならそれで、ミカエラを呼びに行くだけでいいんじゃないかな?」
「それもそうね。じゃあ、私が呼んでくるから、シゲルたちはそのまま調査を続けていて」
「わかった。それじゃあ、お願いね」
 シゲルがそう言うと、マリーナは任せてと言いながら右手を上げて、再び作業部屋へと戻って行った。


 アマテラス号を回り込むように反対側に移動をしたシゲルは、金属製の扉を示しながら言った。
「あの奥に部屋があるんだよ」
「そうですか。……かなり重そうな扉ですね」
「やっぱりそう思うよね? ところがどっこい――」
 シゲルがそう言いながらドアノブに手を掛けてひょいと押すと、ほとんど重みを感じさせない動きで扉が開いた。
「あまり重く感じないんだよね。これも特殊な素材で出来てるのだと思う」
 シゲルがそう言うと、ラウラは少しだけ驚いたような表情をしてから興味深そうに扉を見た。
 そして、シゲルに場所を変わってもらい、自分でも簡単に動かすことが出来ることを確認し始めた。

 何度か扉を押し引きしていたラウラは、非力な自分でも簡単に動かせるとわかって、感心した顔になっていた。
「本当にあまり重さを感じませんね。扉の素材自体がそうなのか、そうなるように作られているのか」
 中々鋭いことを言うラウラに、シゲルは一度だけ頷きながら返した。
「自分としてはどちらも――と言いたいところだけれど、特に変わった仕掛けがあるようには思えないんだよね」
 扉の上下を見ながらシゲルがそう言ったが、ラウラは少しだけ微妙な顔になった。
「あの……魔法がかけられていることは考慮されていますか?」
「あ……」
 ラウラの指摘に、シゲルはばつが悪そうな顔になった。
 これだけ魔法に囲まれた生活を送っているのに、シゲルは未だに根本的なところでは以前の世界での思考から抜けきれていないのだ。

 気まずそうな顔になっているシゲルに、ラウラは慌てて手を振った。
「いえ、わたくしも確信があって言っているわけではありませんから。もしかしたらそういうこともあるかも知れないと考えただけで……」
「あー、うん。フォローありがとう。でも、本当は真っ先に疑わなければならないことだからね。今回は自分が悪いよ」
 ラウラのフォローをあり難く思いつつ、シゲルは苦笑しながらそう答えた。
「まあ、いいや。とりあえず、この先に部屋がたくさんあるからそれを調べて行こうか」
「はい」
 シゲルの言葉に素直に頷いたラウラは、ビアンナとルーナを連れて一つの部屋へと入った。
 それを見ていたシゲルも、同じように別の部屋へと入ったのである。

 
 マリーナはすぐにミカエラを連れて戻ってきた。
 シゲルにとって意外だったのは、フィロメナが一緒に着いて来ていたことだ。
「あれ? フィロメナも来たんだ」
「うむ。タケルが残した資料は興味深いが、こちらには私が読めるかもしれない物があるかも知れないからな」
「ああ、なるほど」
 フィロメナの答えに納得したシゲルは、そう答えながら頷いた。
 シゲルもまだそういった資料は見つけていないが、確かにタケルの作業部屋に籠っているよりは研究が進むと考えてもおかしくはない。

 廊下から見えるいくつかの扉を身ながらシゲルはフィロメナたちに言った。
「それじゃあ、それぞれの部屋を見てみればいいよ。とりあえず、今自分が見ている部屋には、そんな資料はなさそうだけれどね」
「うむ。そうだな」
 フィロメナがそう答えたのを皮切りにして、ミカエラとマリーナもそれぞれの扉に向かって動き始めた。
 そして、今度こそ全員でのドック内の調査が始まった。

 
 シゲルの見ていた部屋は、ほとんど生活感がない場所だったが、他の部屋はそうでもなかったようだ。
 ある程度自分が見ていた部屋の調査を終えたシゲルが、ラウラたちがいる部屋に入ると、揃ってなにやら本を読んでいた。
 シゲルが声を掛けるまえに周囲を見回すと、部屋の持ち主が読書家だったのか、壁際に本棚があり多めの本が収まっていた。
「何か興味深い本でも見つけた?」
 ラウラたちは、すぐに部屋か出られるように、扉を開けながら部屋を調査していたため、シゲルが入ってきたことに気付いていなかった。
 そのためラウラは、シゲルがいきなり声をかけてきたことに驚いていた。
 ルーナだけは本に目を通しながら気配を感じていたのか、特に驚いた様子は見せていない。

 驚きでバクバクいっている心臓の辺りに手を当てながらラウラが、本からシゲルへと視線を向けて答えた。
「ええ。こちらの本は、わたくしたちでも読める古語で書かれています。……本当に古い書き方のようですが」
「へー、そうなんだ」
 滅びた文明の文字が読めるなんてことがあるのかと、少しだけ不思議に思ったシゲルだったが、実際に読めているようなので嘘だと言っても仕方ない。

 どういうことなのかと思いつつも、シゲルは本棚に刺さっていた別の本を取り出してみた。
「……読めない」
 残念ながらシゲルには、その本の文字を読むことは出来なかった。
 古語で書かれているというのは本当のようで、言い回しが難しすぎて理解することが出来ないのだ。
 日本でいえば、古語の知識もなしに源氏物語の原書に目を通している感じだ。

 早々に読むことを諦めたシゲルは、ラウラを見ながら聞いた。
「ここにある本は、どんなことが書かれているの?」
「一部技術書のような物がありますが、ほとんどが物語などの創作物のようです。面白くて、つい読みふけってしまいました」
「いや、別に面白いんだったらそれでいいんじゃないかな? ……フィロメナだって、自分が楽しくてやっているんだし」
 興味の赴くままに目を輝かせているフィロメナを思い出しながら、シゲルはそう言った。
 同じようなことをラウラも想像したのか、クスリと笑っている。

 ちなみに、ラウラの部屋を出たシゲルが、フィロメナが調査していた部屋に向かうと、そこで想像通りの姿をしているのを見つけたが、彼女の名誉(?)のために誰かにいう事はなかった。
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