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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第6章 遺跡の扱い

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(3)見慣れた存在?

 エルフの里は、シゲルの思っていた通り、森の中にある。
 ただし、ある程度の森林を切り開いて農業を行っているところは、微妙にイメージと違っていた。
 その代わりに、安定して作物が手に入るためか、数千人単位のエルフが生活を行っている。
 それだけの人数が集まれば、中には里を出て外の世界に旅立とうとする者が一定数出てくるのも当然といえるだろう。
 ついでに、この傾向は別にミカエラの故郷だけではなく、他のエルフの里でも似たような状況になっているそうだ。
 この大陸においてエルフは、森に隠れ住む引きこもり種族ではなく、単に住んでいる場所を限定している種族とみられているのだ。

 考えていたよりも広い里を見て、シゲルは感心した顔で頷いていた。
「これがエルフの里か。思っていた以上にひらけているんだね」
「なによ。シゲルは、もっと田舎だと思っていたの?」
「いやまあ……ぶっちゃけ?」
 少し呆れた顔で睨んできたミカエラに、シゲルは肩を竦めながらそう告白した。

 そのシゲルの答えにため息をついたミカエラは、里を見回しながら続けて言った。
「まあ、だいぶ昔はシゲルのイメージする里そのものだったみたいだけれどね。それじゃあ他の種族に飲み込まれるということで、大陸中で意識改革が起こったみたいよ?」
 以前のエルフは、シゲルがイメージする通りの森の中で狩猟採取を行って細々と生活を行っている集団だった。
 だが、ヒューマンの数が増えてくるにしたがって、このままでは数に飲み込まれると農耕も行うようになったという。
 そのお陰で、なんとか飲み込まれないだけの人数を確保することが出来たというわけだ。

 エルフは、幼少期を除けば、ほぼすべての者たちが精霊術を使える。
 もしどこかの国が軍隊を伴って攻めてきたとしても、その全員でダメージを与えれば、大損害を与えることは確実である。
 そうなれば、攻めてきた国は、弱ったところを他国から攻め込まれることもあり得るので、エルフの里を攻めるのを躊躇するというわけだ。
 まあ、そんな極端なことにはならないにしても、十分に国を相手に交渉することが出来る。
 そうして現在のエルフは、勝手にされないような立場を手に入れているのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 里の中に入ったシゲルたちは、ミカエラに誘導されるまま長老がいるという家に向かった。
 さすがにこれだけの規模の里を導いているだけあって、長老の家はそれなりの広さがある。
 エルフらしく木組みが基本となっているその家は、シゲルの感覚ではどこかの武家屋敷のようにも見えた。

 長老の家に来たのは、ミカエラの挨拶があるからで、そこまで込み入った話があったわけではない。
 ただし、シゲルにとっては少しだけ気になる会話がされていた。
 それは、久しぶりに里に戻ってきたミカエラに、長老がとある質問をした時のことだ。
「今回は何の用があって、里に戻ってきたのじゃ?」
 長老とはいっても見た目はほとんど老けていない長老にシゲルが内心で戸惑っている間に、ミカエラが何故かシゲルを見ながらその問いに答えた。
「自分の立場が分かっていない者がいるので、少しばかり常識というものを教えようかと思いまして」
「ほほう。なるほどじゃ」
 ミカエラの答えを聞いた長老は、シゲルの傍に控えていたラグを見ながら納得した顔で頷いていた。

 シゲルは、里に入る前にミカエラから上級精霊の誰かを最初から表に出しておくようにと言われていた。
 エルフの里では、契約精霊がいる者は、一定の敬意が払われる。
 しかもその精霊が上級となれば、憧れ以上のものを抱く者もいるだろう。
 そのため、余計なトラブルを巻き込まないように、上級精霊を見せておいた方がいいというのがミカエラの弁だった。
 残念ながらこれだけの人数がいれば、エルフであってもおかしい考え方をする者は出てくるのである。

 そこまでの会話であれば、シゲルもごく普通の内容として聞き流していただろう。
 だが、聞き捨てならない会話がされたのは、その後のことだった。
 頷いていた長老が、少しだけ首を傾げてミカエラにこう聞いた。
「じゃが、常識を教えるだけなら其方がいれば十分ではないか?」
「知識として教えるのであればそうなのですが、どうにも実感が湧いてくれないようでして。ここはひとつ現物を見せた方がいいだろうという話になったのです」
「現物……なるほどな。じゃが、現物か……」
 ミカエラの言葉に一応の納得の色を見せた長老だったが、途中から何やら考え込むような顔になった。
 そして、なぜかそれに合わせるように、ミカエラも渋い顔になっている。

 ミカエラは、長老に向かってため息をついた。
「仕方ありません。今のところ上級精霊と契約しているのは、あの人しかいませんから」
「まあ、そうじゃろうな。あんなのしかいないのは歯がゆいところだが……仕方あるまい」
 何やらこれから誰かを会うことになるのだと察したが、どうにもその人物がミカエラと長老が揃ってこんな評価をしている者らしい。
 さらにいえば、言葉を発していないフィロメナやマリーナも笑いをかみ殺すような顔をしていた。

 どうにも嫌な予感がぬぐえないシゲルだったが、ここまで来た以上は、その人物と会うことは確定事項だ。
 逃げようとしても、フィロメナたちが許さないだろう。
 フィロメナたちを揃ってこんな顔にさせる人物とは一体どんなものなのか。
 いろんな意味でシゲルの興味をそそられる出来事になっていた。

 
 そして長老の家を辞して目的の人物と会ったシゲルは、内心でなるほどと大いに納得していた。
 シゲルに嫌な予感をさせたその人物は、右手の人差し指を顔の横に立てながら、何やら腰をくねらせている。
「あらん。上級精霊を連れているなんて、珍しいこと。私とお仲間ねん」
 シゲルを興味深そうに見ながらそう言ってきたのは、鎧のような筋肉を身に付けた長身の男性だった。
 確かに、目の前にいる彼(彼女?)を代表として会わせるのはと、ミカエラと長老が渋い顔をしていたのも理解できる。

 とはいえ、シゲルはテレビを通してだが、こういった人物には免疫がある。
 そのため変な偏見は持たずに、いつも通りに挨拶をすることが出来ていた。
「初めましてシゲルと申します。ということは、貴方も上級精霊と契約しているのですね?」
 そう言って右手を差し出してきたシゲルに、その男性は少しだけ目を丸くしてからニッコリと笑った。
「あらあら。こちらこそ初めまして~。エバエルよ。何だったら親しみを込めてエバと呼んでねん」
 エバエルは、そう応じながらシゲルの右手を握り返してきた。
 ギュッと握ったりにぎにぎされたりすることもあるのかと構えていたシゲルだったが、ごく普通に握り返してきたので、少しだけ拍子抜けをしていた。
 ちなみに、この世界には、握手の習慣は普通にある。

 初対面の自分にごく普通の対応を見せたシゲルを見て、エバエルは嬉しそうな顔をしながらミカエラを見た。
「随分と良い男を連れてきたじゃない? もしかして、私に譲ってくれるの?」
 そのエバエルに、ミカエラは渋面を作りながら答えた。
「そんなわけないじゃない。単に上級精霊を連れている精霊使いを見せたかっただけよ」
「あら残念ねん」
 渋い顔をしたままそう言ってきたミカエラに、エバエルは心底残念そうな顔になりながらそう答えた。

 そして、ミカエラとエバエルがそんな会話をしている一方で、フィロメナが驚きながらシゲルに聞いて来た。
「ちょっと待てシゲル。なぜそんなに普通でいられるんだ?」
「いや、普通って――」
 少しだけ苦笑しながらどういうことだと続けようとしたシゲルだったが、フィロメナが固まっているラウラを示したのを見て思いとどまった。
「あー、籠の鳥のお姫様には刺激が強すぎたかな?」
「いや、そういう問題じゃないだろう?」
 呆れたような顔でそう言ってきたフィロメナに、シゲルは苦笑を返すことしかできなかったのである。
だ、出してしまった……。
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