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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第6章 遺跡の扱い

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(2)次の目的地

 ホルスタット王国の王都での話し合いを終えたシゲルたちは、フィロメナの家に戻って次の候補地の話し合いをしていた。
 味噌や醤油は、一国だけで広めても仕方ないと考えているので、次をどこにするかが重要なのだ。
 その話し合いの中で、ミカエラがふと思い出したように言った。
「そういえば、そろそろ行っておいたほうがいいわよね?」
 そう言いながら何故だが自分を見てきたミカエラに、シゲルは首を傾げた。

 ただし、フィロメナとマリーナは、それだけで何のことが分かったような顔をしていた。
「確かに、ここがちょうどいいタイミングかも知れないな」
「移動にさほど時間がかからなくなったのも大きいわね。折角だからついでに寄って行きましょう」
 そう言って三人で頷き合っているフィロメナたちに、首をかしげたままのシゲルが聞いた。
「あの……? 何の話?」
 自分に関係することだとはわかっても、具体的に何のことだかは全く見当がつかない。

 不思議そうな顔をしているシゲルに、ミカエラが少しだけ呆れたような顔になって言った。
「前にね、あなたの精霊に関する常識のなさをどうするべきかと話し合ったことがあるのよ」
「そうだ。特に契約精霊に関してだな」
 フィロメナがミカエラに続いてそう言うと、ラウラが納得した顔で頷いていた。
 たったこの数日で、ラウラ姫にもシゲルが精霊に関しては常識外の存在であると、既に理解されているのである。
 当たり前のように、上級精霊がうろついているのが見られるので、それも当然だろう。

 ちなみに、シゲルはビアンナやルーナがいるのにも関わらず、契約精霊の存在を隠していない。
 それは、契約精霊が一体だけではなく複数いることを示して、抑止力にするという方針に変わったためだ。
 ただし、『精霊の宿屋』のことに関しては、まだラウラにも話していない。
 とはいえ、ラウラは何となく契約精霊以外の何かがあるのではと考えているようなそぶりを見せている。

 とにかく、フィロメナたちの話で、シゲルが契約精霊に関して常識知らずだということは、この場での共通の認識になっていた。
 これに関しては、シゲルも反論できないので、無駄な反発はしない。
「とはいっても、シゲルさんに常識が身に付かないのは、多分に皆様方のせいだとも思えるのですが?」
 多少控えめに、けれどもしっかりとそう主張したのは、ラウラだった。
「わかっている。だからこそ、どうにかしてシゲルに常識を身に付けさせようと、以前に話し合っていたのだ」
 ラウラの言葉に、フィロメナが渋い顔になりながらそう応じた。
 自分たちが世間一般から見て常識外な存在であることは十分に理解しているからこそ、フィロメナはラウラに反論することはしなかった。
 それは、ミカエラやマリーナも同じで、僅かに視線を逸らした。

 そんなフィロメナたちを見ながら、ラウラはクスリと笑って頷いた。
「そうでしたか。それで、どちらに向かうのでしょうか?」
 ラウラの言葉に、ミカエラが頷きながら答えた。
「それは勿論、私の故郷よ」
 ミカエラがそう答えると、ラウラは納得の顔で頷いた。

 ただ、そもそもミカエラの故郷のことをほとんど話にも聞いたことが無かったシゲルは、再び首を傾げた。
「ミカエラの故郷?」
「そうよ。一言でいえば、ほぼエルフだけで住んでいる里ね」
 この世界でのエルフは、森に完全に引きこもっているわけではないため、そこそこ大きな町では比較的見ることができる。
 ただ、昔から森の中で生活を続けている集団もあり、ミカエラはその森の中の出身なのである。
 ミカエラは、遺跡調査の旅に出る前はその故郷に身を寄せていたので、別に仲が悪いとかいうことはない。

 イメージ通りに森に住んでいるエルフがいると聞いていたシゲルは、納得した顔で頷いた。
「ミカエラがどこに住んでいたのは聞いていなかったけれど、前は森にいたんだ」
「まあね。別に隠していたわけじゃないけれど、特に言う必要も感じなかったから」
 一度そこで言葉を区切ったミカエラは、シゲルを見ながらさらに続けた。
「とにかく、シゲルにはその里に行って、一般的な精霊との関係を見てもらうから!」
 そう言いながらビシッと人差し指を突きつけてきたミカエラに、シゲルは無作法だと指摘するかどうか迷った。
 この世界では、人に指を突きつけるのが、失礼に当たるかどうかが分からなかったのだ。

 それはとにかく、シゲルに常識的な契約精霊との関係を見せることについては誰にも異存が無いようで、途中でミカエラの里に寄ることは決定事項となった。
 シゲルも、自分以外の契約精霊持ちを間近で見たことがないので、特に反対することはしない。
 さらにいえば、森に住んでいるというエルフも見るのは初めてなので、それを楽しみにしているということもある。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 その話し合いから数日後。
 シゲルたちは、アマテラス号に乗ってホルスタット王国の王都から目的地であるエルフの里へと向かっていた。
 その途中である国にも寄って行くという話も出たのだが、まずはシゲルを優先しようということになったのである。
 それは勿論、各国の王と会う前に、多少なりともシゲルに常識を身に付けさせた方がいいという、全員の一致した意見に基づいてのことだ。
 シゲルとしては、若干納得のいかない部分もあったが、この件に関しては孤立無援なことを理解しているので、それを口にすることはしていない。

 王都から里へと向かう途中のアマテラス号の中で、ミカエラが感心した様子で外の景色を見て言った。
「それにしても、本当に便利よね。ホルスタットの王都から一日もかからずに里に戻ることが出来るなんて」
 既に何度か同じ台詞を言っているミカエラだったが、他の面々も飽きることなく同調している。
「本当にね。もし、この乗り物が量産できたら、世界が変わるわね」
「あー、それは確かに」
 実際に飛行機の登場によって世界が変わっていることを知っているシゲルは、実感の籠った言葉でそう返した。

 そのシゲルの雰囲気を読み取ったのか、フィロメナが興味深げな顔になっていた。
「なんだ。シゲルはそういう世界を知っているのか?」
「知っているというかなんというか……自分がいた世界は、これよりも速くてもっとたくさんの人を運べる乗り物があったから。この飛空艇とは、原理は全く違っている物だけれどね」
 シゲルがそう答えると、他の面々は一斉に視線を向けてきた。
 その顔は、そんな話は聞いたことがないという顔をしている。

 シゲル以外の皆を代表して、フィロメナがずいと顔を近づけながら聞いて来た。
「そうなのか? そんな話は聞いたことがないぞ?」
「あれ? そうだっけ? アマテラス号を見た時に、似たような話をしたと思ったけれど?」
 最近加わったばかりのラウラはともかく、フィロメナたちには飛行機の話をした記憶がある。
 ただし、今のような具体的な話をしたかと聞かれれば、確かにしていなかったかもとシゲルは思い直した。

 記憶を探ってもその辺りのことを思い出せなかったシゲルは、改めて(?)飛行機のことを話すことにした。
「うーん。なんといったらいいのかな? とにかく、さっきも言った通り、アマテラス号とは違った原理で空を飛ぶ飛行機と呼ばれるものがたくさんあって、世界中の空を飛び交っていたんだ。それこそ何百何千と」
「――何というか……全く想像が出来ないな」
 シゲルの話を聞いて少しだけ考えるような顔をしていたフィロメナだったが、最終的には首を左右に振りながらそう返してきた。
 他の面々もそのフィロメナと同じような顔をしている。

 それらの顔を見て、シゲルが真顔で頷いた。
「まあ、そうだよね。自分だって魔法がまったくない世界から来て、こっちでみたものは、想像とは全然違っていたから」
「そんなものか?」
「そんなものだよ。まあ、とにかく、自分がいた世界は、空を飛ぶものに限らず、乗り物が非常に発達していた世界だと思って間違いないかな。少人数、大人数に限らずね」
 シゲルがいた地球という世界では、交通手段が非常に発達した場所だった。
 それらの交通手段を駆使して、文明が発達していたといっても過言ではない。

 そこまでのシゲルの話を聞いたラウラが、おずおずとした様子で切り出してきた。
「それらの乗り物をこちらで再現することは出来ないのでしょうか?」
「あー、理論がまったく違っているからねえ。一からその技術を作りだすんだったら、まだアマテラス号を再現できるように目指した方が早いと思うよ?」
「そうですか」
 この世界では、アマテラス号でさえ再現できるかどうか分からないのだ。
 それ以上に難しいと言われてしまえば、期待をすることが間違っている。

 シゲルの言葉を聞いてあっさりと諦めたラウラを見てから、フィロメナが宣言した。
「どちらにせよ、遺跡のこともこれから明らかになっていくはずだから、魔道具研究も進むはずだ。とりあえずは、目指せアマテラス号だろう」
 目標として一番身近にあるアマテラス号を目指すのは、悪いことではない。
 それがわかっている一同は、フィロメナの言葉に大いに納得した顔になるのであった。
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