81話 勧誘失敗
「くっ、何が望みだ……!」
オールバック君が俺を睨みながらそう叫ぶ。
いやいや、その発言は明らかにおかしいよ? 君たちが先に仕掛けてきたんだからな?
「とりあえず、名前は?」
3人を跪かせた俺は3人を見下ろして少し威圧的にそう聞いた。
何とか怖がらせてやろうと思っての事だったが、あまり怖くはなかったようで、3人は睨むのを辞めない。
しかし、流石に俺に逆らってもいいことがないということくらいは理解しているようで、しばらくするとオールバック君が渋々口を開いた。
オールバックの名前はどうやら健司というらしい。
金髪君は庄司、肩にかけていた学ランがなくなってしまったせいで特に特徴がなくなってしまった一般ヤンキー君は康二というらしい。
「え、君たち3Gって言われたりしない?」
「は? 何言ってんだよ」
「うんまぁ、なんでもない」
ちょうど3Gが始まった頃だしそう呼ばれてもおかしくはないとは思ったが……まぁ、うん、本人達が呼ばれていないというのなら、心の中で呼ぶ程度に留めておこう。
「それで、俺たちをどうすんだよ!」
「どうって……別にどうもしませんけど」
「はぁ!? じゃあなんで喧嘩なんてしたんだよ!」
「え、いや、そっちから仕掛けて来たんでしょ!?」
俺がそういうと3G達は少し考えた後、確かにと納得していた。
まぁ、別になにかして欲しかったわけでは無いが、今だったら割と何でも聞いてくれそうなので、折角ならこの状況を利用してみるのもいいかもしれない。
「……そういえば、皆さんって部活には入ってないんですよね?」
「あぁ? だからなんだよ」
「いや、ちょっとお願いしたいことがありまして……」
俺がそう言うと、3G達は揃って身構えた。
どうやら、俺が何か無茶な要求をすると思っているらしい。
まぁ、これからするお願いも人によっては無茶な要求に分類されるのかもしれないけどね。
「皆さん、うちの科学技術部に入りません?」
「…………は?」
三人の声が綺麗に重なった。
「いやいや、嫌に決まってんだろ!」
「そーだそーだ、俺達が部活なんて出来るわけねぇだろ!」
「そうだぞ! そもそも科学技術部ってなんだよ!」
どうやら、3人とも入部する気は全くないらしい。
まぁ、それもそうだろう。
何しろ、つい先程まで喧嘩していた相手から突然部活に誘われたのだ。
むしろ、素直に入部すると言われた方が驚く。
…………だが、こちらとしても簡単に諦めるわけにはいかない。
「ちなみに、皆さんはゲームがしたくてうちの部室に来たんですよね?」
「あぁ? そうだけどなんだ?」
「なら、うちの部活は結構合ってると思うんですけどねぇ……」
「はぁ? さっきゲームする部活じゃねぇって言ってただろ!」
まぁ、そうだ、ゲームをする部活ではない。
だが、発想の転換だ、ゲームを作ると言ってもそれに辿り着くまでの道筋は俺からすればかなり楽しいものだ。
しかも、勉強してどんどんできるようになるあの感覚はゲームをやる楽しさに通じるものも無くはないような気もする。
もちろん全然違うものなのだが、口車に乗らせるということは出来るかもしれない。
「……皆さん、RPGってやったことあります?」
「あぁ? そりゃあるけどよ」
「じゃあ、レベル上げとかは好きですか?」
「まぁ、嫌いじゃねぇけど……」
「なら、プログラミングも似たようなものですよ」
「…………は?」
俺がそう言うと、3Gは何を言っているのか分からないといった表情を浮かべた。
「最初は簡単なことしかできませんけど、覚えれば覚えるほど色々なことができるようになるんです。最初は画面に文字を表示するだけだったのが、次は絵を動かせるようになって、その次は自分で操作できるようになって……」
「……ふーん」
「そして、最終的には自分だけのゲームを作ることだってできるんですよ! これはもはやゲームと言っても過言ではない!」
「…………」
「…………」
「…………」
…………あれ?
俺がそう説明すると、3G達は何故か揃って微妙な表情を浮かべた。
「……いや、それの何が楽しいんだよ」
「へ?」
「そんなことしたらゲームがつまんなくなるだろ」
「そーだそーだ、そもそも俺達はゲームがしたいんであって、作りたいわけじゃねぇし」
「それに、そんな面倒くせぇことしなくてもゲーム買えばいいじゃん」
まあ確かに正論だ。
何とか言いくるめようとしたが、失敗してしまったらしい。
「……それじゃあ、入部は?」
「するわけねぇだろ!」
「だよなぁ……」
俺は思わず大きなため息をつく。
せっかく三人も部員候補を見つけたというのに、そう簡単にはいかないものらしい。
「……もう帰っていいか?」
「あぁ、はい、別に引き止める理由もありませんし……」
「ふん、最初からそう言えってんだ!」
そう言いながら、3G達は立ち上がり、校舎裏から立ち去っていく。
俺はそんな三人の後ろ姿を眺めながら、再びため息をついた。




