82話 新入部員
82話
「………で、なんでまた来たの?」
俺はコンピューター室で土下座する3Gをジト目で見つめる。
悪態をついて入部を断ったのが昨日だっただけに全く理解できない。
そのため、その真意を問うためにそう聞いた。
すると、3Gの中ではリーダー的役割を担っているオールバック君が勢いよく起き上がり、青あざの目立つ顔で懸命に語りかけてきた。
「そ、それが………」
それから語られたのは俺に負けて逃げ帰った後の話だった。
あの後、どうやら3Gは俺に何とか復讐するためにこの学校の番長的な存在に俺の事をチクリに行ったらしい。
俺の事を話し、敵討ちをしてもらおうという魂胆だったようだが、その交渉が見事に失敗したらしい。
なんでも、番長は俺の事について知っているらしく、小柄でかわいらしい見た目の男に負けるのはあり得ないと三人の事を更にボコボコにしたらしい。
なんというか、自業自得とはいえ少し可哀そうには思うが………。
「いや、だからってなんでうちに来たわけ? それならもう諦めた方がいいと思うんだけど………え、なに? またやろうっての?」
俺が心底面倒そうにそういうと、3Gはやや大げさに首を振った。
「いやいや、そうじゃないです!」
「じゃあ何?」
「そ、それは………」
三人は互いに顔を見合わせ、俺を真剣な眼差しで見つめた。
「「「お、俺たちを舎弟にしてほしいんです!」」」
「………はぁ?」
舎弟と言えばよくヤンキー漫画とかで見る、兄貴分の言うことを聞いて色々と雑用をしたりするあれだよな?
あまりの変わり身に意味が分からず、俺は思わず気の抜けた声を上げてしまった。
「いや、急になにさ、気持ち悪いんだけど………」
「そ、そこを何とか! 兄貴の力がなきゃ俺たち………もうおしまいなんすよ!」
そのただならない様子を見て俺は思わず眉をひそめた。
確かにこいつらは昨日俺に喧嘩を売ってきた馬鹿どもではあるが、だからといってここまで必死になる理由が分からない。
それに、よく見れば三人の顔に浮かぶ青あざは昨日俺がつけたものだけではないようで、特に健司に至っては片目が腫れ上がってしまっている。
「……とりあえず、事情を説明してくれる?」
「は、はい!」
俺がそう促すと、健司は少し安堵したように息を吐き、再び口を開いた。
それから三人が語った内容をまとめると、どうやら昨日俺に負けたことを報告しに行った際に、番長とやらに二度と学校に来るなと言われてしまったらしい。
なんでも、この学校に弱い奴は必要ないというのがその番長の考えらしく、次に学校で見かけたらただでは済まさないと脅されてしまったようだ。
中学校は義務教育だし、そんな一人の一存で来なくさせるようなことはできるはずもないのだが、どうやら3人は本気で怯えているようだった。
不良なのだから学校に来れなくなってしまっても別にいいじゃないかと思わなくもないが、よくよく話を聞いていくと、衝撃の事実が発覚した。
「俺、母ちゃんに高校まではちゃんと卒業してるのを見せたくて…………」
「お、俺も……」
「俺は家に母ちゃんしかいないから転校とかもできねぇから、ここで卒業できなきゃやばいんだよ」
そう、こいつらは不良のくせしてかなりお母さん思いなやつだったのだ。
いや、不良のくせしてっていうのは良くないかもしれないが、ともかく、ここまで親不孝な行いをしているにもかかわらず、それでも親を喜ばせたいと思っているということらしい。
なんというか、こいつらの不良としての方向性がよく分からなくなってきた。
母親を大事に思っているのなら、そもそも不良なんてやめて真面目に学校生活を送ればいいと思うのだが………。
「……ちなみに、なんで不良なんてやってるの?」
「そりゃあ、かっこいいからっすよ!」
「…………」
うん、ただのバカのようだ。
だが、こいつらが心の底から悪いやつじゃないというのがわかった以上、少しは助けたいと思う気持ちも芽生えてくる。
「わかったわかった、それじゃあ助けてはやるが……舎弟ってのはやめてくれるか?」
「な、なんでですか!?」
「なんでって、そもそも僕は不良じゃないし、舎弟なんて必要ないからね」
「そ、そんな! そこをなんとか!」
「だから、代わりにこの部活に入ってくれない?」
「………へ?」
俺の提案に、三人は揃って間抜けな声を上げた。
「いや、だから科学技術部に入部してほしいんだよ。ちょうど部員を募集してたところだしね」
「そ、それだけでいいんすか?」
「うん、まぁ、入部するからにはちゃんと活動してもらうけどね」
俺がそう言うと、三人は再び顔を見合わせる。
どうやら、あまりにも簡単な条件だったことに拍子抜けしているらしい。
「そ、それならもちろん、死ぬ気で活動させて貰います!」
「いや、別に死ぬ気でやる必要はないけどね……」
ともかく、これで科学技術部に新たな部員が三人加わることとなった。
正直、こいつらがどの程度役に立つのかは未知数だが、まぁ、人手が増えるのはありがたいことだ。
「それじゃあ、これからよろしくね」
「「「はい! 兄貴!」」」
「……だから兄貴はやめてってば」
……こうして、俺は三人の新入部員を手に入れた。




