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一日一善を繰り返していたら人生が変わった件 〜現代日本に赤ちゃんとして生まれ変わったら、善い行いをするとスキルが獲得できるようになった〜  作者: 黒飛清兎
乳幼児編

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8話 今日からここが俺の家



「それじゃ、なんかあったら連絡してね」

「……うん、ありがとう、またね」


 別れを告げると、女性は去っていった。

 玄関の扉が閉まる音が無人の部屋に響き渡り、静かな時が流れる。

 俺は抱き抱えられ、奥の方の部屋に連れていかれた。


「凄い……流石みこちゃん、全部用意されてる……やっぱ敏腕だなぁ」


 お母さんは奥の部屋に置かれている赤ちゃん用のベッドやおもちゃなどを見て感嘆の声をあげた。

 みこちゃん……さっきの運転をしてくれていた女性のことだろうか?

 関係性はいまいち分からないが、ここまで良くしてくれるということは、少なくともただの知り合いってだけでは済まされなさそうだ。


「よしよし、今日からここがはじめ君の家だよ〜」

「ぁぅ、ぁぅ〜」

「そう、嬉しい? 良かった!」


 お母さんは嬉しそうにしながら俺をベッドに寝かしつけた。

 背中に病院のベッドとは違う、これまた心地の良い感触の柔らかさを感じ、思わず声を漏らす。

 そんな俺の様子を見て、お母さんも嬉しそうだ。

 お母さんは俺をひとしきり眺めたあと、ちょっと待っててねと言い残して部屋から出て行った。


 …………さて、1人になった所で、本題に入りましょう。

 病院から家に移ることによって、恐らくはかなり別種の情報が得られるようになった。

 病院でもかなりの事を知ることはできたが、あそこはある意味俗世間から隔離された場所だ。そこから脱することができたということは、つまりはもっとこの世界について知ることができるという事だ。

 知りたいことは山ほどある。

 今が何年なのか、お母さんは何者なのか、前世と今世ではステータス以外にも違うところは無いのか。

 あげればキリがない。


 ただ、直近で考えなければいけないこともある。

 それは、父親についてだ。

 病院で俺が産まれた時から今に至るまで、俺は父親の存在を確認できていない。

 そのうえ、お母さんが誰かと連絡を取り合っているところも見ていない。

 普通、父親なら子供が産まれればもし産まれる瞬間に駆けつけられなくとも、できる限り早く駆けつけるものだろう。

 だが、いくら待っても父親は現れなかった。


 そうなると考えられるのは、そもそも父親がこの家にいないという可能性だ。

 死別、離婚、あるいは最初から結婚していない。

 他にも、仕事か何かの都合で長期間家を空けているという可能性もある。

 候補だけならいくらでも出てくるのだが、どれも確証には至らない。

 しかし、これまでのことを鑑みて、少なくとも居ないと考えるのが自然だろう。


 ただ、今の俺には情報が足りなすぎる。

 元いた世界と違う世界に来てしまっている以上、何が起こるかなんて分からない。もしかすると、この世界では結婚という概念が無いとかそういう突飛な出来事だって起きうるのだ

 だからこそ、今はできる限り情報の収集をしよう。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 この家に来てから2週間程が経過した。

 その間、俺は可能な限り情報の収集を行った。

 とはいえ、生後間も無い赤ちゃんにできることなどたかが知れてる。ベッドから出ることはおろか、寝返りを打つことさえままならない。

 《身体》のスキルを持っているとはいえ、流石にそこまで自由にはできない。

 というか、あまりそのレベルをあげすぎて生後2ヶ月とかで歩き始めるとかになったらそれこそ意味が分からないため、それをしようとは今のところは考えていない。


 そんな中でも分かったことは何個かある。

 まず、以前俺たちを家まで送ってくれたみこちゃんという女性、彼女はどうやらお母さんの仕事相手のようだ。

 会話を盗み聞きした感じだと、仕事への復帰や今後の予定について頻繁に話していた。

 その職種についてはまだ分からないが、話を聞いている限りだと、一般の職業という訳では無いようだ。

 それに、みこちゃんとお母さんの距離感も普通の同僚と言った感じでもないようだし、わかったこともあったが、更に謎は深まってしまった。


 もうひとつわかったことといえば、今が何年かだ。

 これに関しては《視力》のレベルが上がったことによってベッドから壁に貼られてあるカレンダーが見えるようになったことによってわかった。

 どうやら今は……1990年らしい。

 前世の俺が産まれた年と同じだ。

 月は9月のようだ。


 これは……かなり大きな情報だ。

 今まで、この世界が前世とどれほど違うのか分からなかった。言葉も日本語だし、病院の設備も少なくとも俺が見る限りではそこまで違和感はなく、日本らしき場所で生活していることも間違いなさそうだった。

 ここまで共通しているとなると、この世界は前世とは完全に別の世界というより、前世と非常によく似た世界……パラレルワールドのようなものなのだと考えられる。

 だとすれば、今後のことについて俺はある程度だとすれば、今後のことについて俺はある程度知識を持っているということになる。

 もちろん、前世と全く同じ歴史を辿る保証はない。ステータスの有無という大きな違いがある以上、細かな部分ではかなり変化している可能性もあるだろう。

 それでも、これから流行るものや発展する技術、起こる出来事について多少なりとも知っているのは大きい。

 ……まあ、今の俺はその知識を活かす以前に、自力でベッドから降りることすらできないんだけどな。

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