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一日一善を繰り返していたら人生が変わった件 〜現代日本に赤ちゃんとして生まれ変わったら、善い行いをするとスキルが獲得できるようになった〜  作者: 黒飛清兎
中学生編

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75話 早まったか?



「わかったよぉ、それじゃあ科学実験部の主な活動はパソコンに関するものってことで構わないよ」

「本当ですか!」


 突然の方向転換に少し驚きながらも、俺は喜びの声を上げる。

 しかし、その顔に浮かべられた笑みに俺は警戒を強めた。


「ふふ、だけど、ちょっとだけお願いがあるんだぁ」

「お願い……ですか?」


 案の定の提案に露骨に顔をしかめると、松戸先生は愉快そうに笑いながらパソコンを操作する。


「実はねぇ、科学実験にもパソコンって結構使うんだよぉ〜」

「……そうなんですか?」


 俺が聞き返すと、松戸先生は嬉しそうに頷いた。


「そうそう、例えば実験で得られたデータを記録したり、分析したり、あとは実験装置そのものをパソコンで制御したりもするんだよぉ」


 そう言いながら、松戸先生はパソコンの画面を俺の方へ向けてくる。

 そこには、何やら大量の数字が並んだ表と、複雑なグラフが表示されていた。


「これ、何のデータですか?」

「ん〜、温度変化の記録だねぇ。一定の条件で物質を加熱した時に、どんな変化が起こるのか調べてるんだよぉ」

「へぇ……」


 俺は画面を覗き込む。

 どうやら、一定の間隔で温度を測定し、その数値を記録しているらしい。


「今はねぇ、測定した数値を手動で入力してるんだけど、これが結構面倒でねぇ」

「あぁ……なるほど」

 

 確かに、これだけの量のデータを一つ一つ入力するのは相当な手間だろう。

 しかも、実験中に温度が変化するたびに記録しなければならないとなると、それだけでかなりの時間を取られてしまうはずだ。


「だからねぇ、測定器からパソコンに直接データを送って、自動で記録できるようにしたいんだぁ」

「……つまりそのためのプログラムを作ってほしいってことですか?」

「そういうこと〜!」


 松戸先生は嬉しそうに手を叩く。


「もちろん、私も多少はプログラミングができるんだけどねぇ、専門はそっちじゃないから中々上手くいかなくて……」

「なるほど……」


 俺は少し考え込む。

 確かに、これまで俺が開発してきたソフトウェアとは少し毛色が違う。

 今までは基本的にパソコンの中だけで完結するものを作ってきたが、今回は外部の測定器と接続し、そこから送られてくる情報を処理する必要がある。

 当然ながら、測定器との通信方法やデータの形式についても調べなければならないだろうし、場合によっては、今まで使ったことのない知識も必要になるかもしれない。


 …………だが、面白そうだ。

 プログラミングの勉強をしていればもちろんパソコンで使うソフト以外にも機械などのプログラミングについても学ぶ。

 しかし、それらをお金にするのは俺の身一つでは少々難しいため、やってこなかった。

 だが、今回は少し事情が違う。

 何せ、実験に必要な機材は既に揃っているようだし、俺が負担するのはプログラミングの部分だけでいいのだ。

 それならば、今まで経験したことのない分野に挑戦するいい機会になるかもしれない。


「……分かりました、面白そうですし、やってみますよ」

「本当? やったぁ〜!」


 俺が了承すると、松戸先生は嬉しそうに両手を上げた。


「んふふ〜、これで研究が進むねぇ!」

「まぁ、絶対にできるとは限りませんけどね」


 実物を見てみなければ何とも言えないし、そもそも俺はこの分野については初心者だ。

 流石にあまり期待されすぎても困る。

 ……それにしても、研究か。


「…………あれ?」


 俺はそこで、今更ながらある疑問を抱いた。


「先生、ちょっと聞いてもいいですか?」

「ん〜? なになに〜?」

「……何で先生って研究なんかしてるんですか?」

「……ほぇ?」


 松戸先生はきょとんとした顔を浮かべる。


「いや、だって先生、中学校の理科の先生ですよね?」

「そうだよぉ?」

「だったら、普通は授業の準備とかが仕事なんじゃ……」


 もちろん、中学校の理科教師が個人的に研究をしてはいけないという決まりはないだろう。

 だが、一般的に研究を仕事としているのは大学の教授や研究機関に所属している研究者達だ。

 少なくとも、中学校の理科準備室を研究室に改造して、何やら本格的な実験を行っている教師というのは、かなり珍しい存在だと思う。


「ん〜、別に先生だって研究していいでしょ〜?」

「いや、それはそうですけど……」

「それにねぇ、私、元々は大学で研究してたんだよぉ」

「……え?」


 思わぬ言葉に俺は目を丸くする。


「大学って……大学の研究室ですか?」

「そうそう〜、昔はそこで色々と実験してたんだぁ」

「へぇ……」

「けどぉ~、追い出されちゃった☆」

「えぇ……何やったんですか」


 俺がそう問いかけると、松戸先生は遠くを見つめる。

 この部屋窓無いから壁を見つめてる感じになっているが、ともかくそれについては答えてくれないようだ。

 ……早まったか?

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