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一日一善を繰り返していたら人生が変わった件 〜現代日本に赤ちゃんとして生まれ変わったら、善い行いをするとスキルが獲得できるようになった〜  作者: 黒飛清兎
中学生編

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73話 甘い理科準備室



 俺は異様な雰囲気を放つ理科準備室の扉の前にたっていた。

 異様な雰囲気……というか異様な匂いがする。

 理科準備室から香ってくるとは思えない何とも甘ったるいような匂いだ。


「……完全にクッキーの匂いなんだけど?」


 俺は不思議に思いながらも、扉をノックする。

 すると、部屋の奥からか細い声が聞こえてきた。


「……は、はーい、開いてますよぉ……」

 

 ……何とも気の抜けた声だ。

 俺は少し不安になりながらも、ゆっくりと扉を開ける。

 すると、そこには何とも奇妙な光景が広がっていた。

 まず目に入ったのは大量の段ボール箱と、その中に入った大量のお菓子だ。

 チョコを中心としたそれらは子供からすれば夢のような光景のように見える……ここが理科準備室だということを除けば。

 さらに、壁際には謎の機械が何個もあり、サイエンティストのラボのような様相だ。

 ……ここ、中学校だよな?


「すみません、松戸(まつど)先生はいますか?」

「居ますよぉー」


 奥の方から長い髪の毛と白衣がチラチラと見えているのはわかっているが、一応形式的に先生を呼ぶと、返事をしながらパタパタと俺の方へかけてきた。


「えーっと、君はぁ……1年生の子かな?」

「あ、はい」


 曇った丸眼鏡を拭きながら松戸先生はキョトンとした顔をする。


「ん〜? なんの用かなぁ?」

「その、少し相談があるんです」

「相談? 私にぃ?」


 心底不思議そうにしながらも、俺が本当に何かを相談したいんだとわかると、松戸先生はにやりと笑って俺の事を抱き上げた。


「ちょ、何するんですか!?」

「まぁまぁ、とりあえずこっち座っててね〜」

「いや、自分で歩けますから! 降ろしてください!」

「んふふ〜、遠慮しなくていいんだよぉ〜」

 

 いや、遠慮とかそういう問題じゃないんだけど!?

 俺の抗議を完全に無視した松戸先生は、そのまま部屋の奥へと進んでいく。

 その道中、いくつもの段ボール箱や謎の機械の間を器用にすり抜け、最終的に部屋の隅に置かれたソファへと俺を降ろした。

 

「はい、到着〜!」

「……どうも」

 

 ……なんなんだ、この人、距離感バグりすぎじゃないか?

 他の先生に変わった先生と言われるのも無理はないかもしれない。

 そんなことを考えながら周囲を見渡してみると、どうやらこの一角だけは休憩用のスペースになっているらしい。


「あ、アレルギーとかないよねぇ?」

「あ、はい」


 松戸先生は俺にそれだけ聞くと、奥にあった謎の機械の扉を開け、中から綺麗に焼きあがったバタークッキーを出した。

 ……多分、その機械そのための用途じゃないだろ、というかあの匂いはやっぱりクッキーだったのか。


「梨花(りか)特製のバタークッキーだよ〜、脳に直接届くよ〜」

「えっ、それ安全なんですか?」

「多分ねぇ〜」

「いや、多分って……」

「んふふ、大丈夫だよぉ、ちゃんと私も食べてるから〜」

 

 そう言うと松戸先生はクッキーを一枚つまみ、口の中へと放り込む。

 ……まぁ、本人が食べているなら大丈夫か。

 俺も恐る恐るクッキーを手に取り、口に運んだ。

 

「……美味しい」

 

 口の中に広がるバターの香りと、サクサクとした食感。

 正直、理科準備室の謎の機械から出てきたものとは思えないほどの完成度だ。

 

「でしょ〜? 温度管理を徹底してるからねぇ、そこら辺のお店には負けない自信があるよぉ」

「へぇ……凄いですね」

「んふふ〜、もっと褒めてくれてもいいんだよぉ?」


 凄いには凄いが、なんというか、それここでやっていいのか?

 ここはどう考えても松戸先生の私室などでは無いわけだし、ここまで私的利用して怒られないのだろうか……いや、多分一悶着はあっただろうな。


 

「それで、相談ってなんなのかなぁ?」

「あ、そうでした」

 

 危ない危ない、危うく目的を忘れるところだった。

 俺は一度咳払いをすると、松戸先生に向き直る。

 

「実は、僕、パソコン部を作ろうと思ってるんです」

「……パソコン部?」

 

 松戸先生は首を傾げる。

 

「はい、それで、顧問の先生を探してまして……担任の先生に相談したら、松戸先生の名前をあげていたので……」

「ん〜、なるほどねぇ……」

 

 松戸先生はそう呟くと、何やら考え込むように顎に手を当てた。


「いや、私ね? 理科部を作りたいんだよね……だから色々と子供たちを攫っ、ゲフンゲフン、勧誘してるんだけど、中々集まらなくてね」

「……今、攫うって言いませんでした?」

「ん〜? 気のせいじゃないかなぁ?」

 

 いや、絶対に言っただろ。

 

「それでねぇ、どうせならパソコン部じゃなくて理科部にしない?」

「えぇ……」

 

 それでは本末転倒じゃないか。

 俺が困惑していると、松戸先生は何かを思いついたかのように手を叩いた。

 

「そうだぁ! じゃあ、科学技術部っていうのはどうかなぁ?」

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