71話 さらばバレー部
色々ありはしたが、俺の中学校生活は始まった。
これから様々な困難が俺に降り掛かってくるだろうが、それと同じくらい楽しいことが待っていると俺は確信している。
具体的にその内容として、小学生の頃からやりたいと考えていた事があった。
俺は放課後、陽芽と悠莉を引き連れて体育館の扉を開ける。
すると、中からは俺よりも何十cmも身長の高い先輩達が、バスケットボールを巡り激しく闘っている様子が見える。
……そう、部活動である!
小学生時代は俺の高すぎる身体能力は化け物扱いされる可能性があったが、中学校に入ったからには多少それを解放してもスーパー中学生として扱われるだけでおかしな扱いはされないだろう。
「あれ、君達は……部活動見学かな?」
「あ、いえ、僕はバスケにはあまり興味なくて……」
そう、俺が興味があるのはバスケではない。
俺のその様子を見て先輩は一瞬で俺への興味を無くし、その代わりに俺の周りにいる2人へと話しかける。
「じゃあ、そこの女の子2人は、マネージャーとかって……」
「あ、僕もはじめと同じところ行くから結構です」
「私も結構です」
2人にキッパリと断られた事で先輩は意気消沈した様子で練習に戻って行った。
なんというか、ちょっと申し訳ない。
「うーん、目当てのは今日じゃないみたいだね?」
「そうだね、ちゃんと確認しとけば良かった……」
気が早ってしまい部活動見学期間が始まった瞬間にすぐさま体育館に来たはいいものの、これじゃあなんの意味もない。
興味のないバスケの見学をするのは他の本当にバスケ部に入りたい人の席を奪ってしまうことにもなるので、今日は一旦体育館から出て家に帰る事にした。
「っと、その前にとりあえず日程だけ確認しとくか」
体育館の使用日程も決まっているだろうから今週のうちには見学の日程が入るはずだとは思うが、何らかのイレギュラーによって今週はやってないとかの可能性もあるから、確認は必要だ。
俺は体育館の入口付近に貼ってある部活動見学期間の日程の紙を見に行った。
「…………あれ?」
俺はそれを見て頭に疑問符を浮かべる。
なぜなら、そこに俺が求めていた表記……バレー部の表記が無かったからだ。
「いやいや、そんな馬鹿な……」
バレー部といえばある程度の人気があるスポーツのはずだ。
それなのに、その部活が無いはずがない。
俺は一抹の不安を覚えながらも、もう一度よくプリントを見る。
しかし…………。
「無い……なんで無いんだ!?」
俺は混乱したながらプリントを何周も見回す。
そんな俺の様子を陽芽と悠莉は不思議そうに見つめている。
「えっと、はじめ、何探してるの?」
「バレー部だよ、バレー部の案内を探してるんだけど、どこにも……」
「え? 何言ってるの? この学校バレー部無いじゃん」
「…………え?」
悠莉の発言に俺は思わず固まる。
俺は最初からバレー部に入る気で居たから、この学校の部活動について特に調べてはいなかったが、まさか無いなんてことあるのか?
俺のそのキョトンとした顔に陽芽が小さく笑う。
「ふふ、はじめが失敗するのって初めて見たかも」
「たしかに! テストとかもいっつも満点なし、なんでもできますって感じだったもんね!」
なんだか褒められてるようで貶されてるような感覚なのだが、気のせいだろうか……?
いや、今はそんなことどうでもいい。
肝心なのはバレー部だ。
前世では中高バレー部だったのもあり、その経験で練習をほとんどせずとも無双でき、その上身体能力も高いため、低い身長が故にリベロにされてもスーパーレシーブを繰り返し、チームを勝利に導く……なんて妄想をしていたのだが、まさかそれが出来ないのか……?
その為に小学生のうちにバレーのルールを再確認し、頭の中で何度もシミュレーションを繰り返していたというのに、その時間は全て無駄だったというのか……?
無いなら作ればいいとも考えられるが、はっきりいってバレー部は個人競技ではなく、最低でも6人は必要な競技な為、ここから人を集めてバレーをするというのは難しい。
というか、ここまでごちゃごちゃ言ってはいるものの、そのまでの情熱は無い。
「ま、元気だしてよ、頭撫でてあげるからさ」
「私も撫でる」
「…………」
2人とも、俺を元気付けようとしてくれてるのはわかるんだが、そうやって俺にくっついてくる度に周りの視線が痛いのはわかってるのか……?
2人の顔を見ると、心配しているのかと思いきやめちゃくちゃ笑顔だったので、もしかしたら分かっているのかもしれない…………。
ともかく、俺の華々しい中学校生活はまたもや出鼻をくじかれるのであった。




