68話 バレた
そんな事もあり、俺と悠莉の仲はグッと縮まった。
だが、それでもところ構わずくっついてくる訳ではなかった。
中学校へ進学するまでにまた色々と一悶着あったが、それでも悠莉がくっついてるのは夜ぐらいであり、人目に付く所ではそういう事はほとんどくっついたりはしてきていなかった。
それじゃあ何故くっつくようになってしまったのか。
その原因は陽芽にあった。
中学校の入学式が終わり、初めてクラスメイトとの顔合わせが行われたのだが、その際、俺と陽芽と悠莉は偶然同じクラスになることができた。
仲のいいメンバーで揃う事ができた為喜んでいたのだが、事件は起こる。
「…………ねぇ、はじめ、悠莉と何かあった?」
顔合わせの日の帰り道、3人で下校していると、陽芽が顔に貼り付けたような笑顔を浮かべながら俺に聞いてきた。
何かあったと言われればあり過ぎた位なのだが、何故か俺の本能がそれをそのまま伝えてはいけないと警告を発していた為、俺は何とか誤魔化すことにした。
「あー、別に何も無かったよ」
「え? はじめ、そんな事は……むぐっ!?」
余計な事を言おうとする悠莉の口を塞ぎ、俺はもう一度誤魔化す。
「ほら、ちょっと遊んだりしたくらい!」
「んー、んーっ!」
「ふーん、そっか」
陽芽の瞳からハイライトが失われる。
俺は冷や汗をかきながらも何とか当たり障りのない会話を続けて家へと向かう。
「じゃ、じゃあ俺こっちだから!」
俺はそう言いながら、いつも通り帰り道の分かれ道で右に曲がろうとする。
これで何とかこの場から逃げ出すことができるはずだ。
しかし、そう思った矢先、陽芽が俺達のことを呼び止める。
「ねぇ、確か悠莉の家ってそっちじゃないよね? って言うか、小学校の頃は帰り道逆方向だったよね? なんで一緒に帰ってるの?」
「それは、僕はじめと……」
「あー、今日うちで遊ぶ約束してて!」
俺は苦しい言い訳を重ねる。
普段の俺であればもっとマシな言い訳を考えられるはずなのだが、今日に限っては何故か良い言い訳が思いつかなかった。
「……じゃあ私も遊びに行っていい?」
「…………」
「いい?」
「……うん」
まぁ、こうなるよな。
俺は小さくため息をつきながら再び歩き出す。
まぁ、こうなってしまった以上は仕方がない。
別に陽芽を家に招くこと自体に問題があるわけではないし、悠莉と一緒に暮らしていることも、いつかは話さなければならなかった事だ。
だが、それは今ではない。
確証は無いが、今陽芽にそれがバレてしまえば確実に悪い事が起こる。
そのため、今は何とか誤魔化さなくては行けない。
家に帰ると、2人の女の子を連れてきた俺にお母さんは衝撃を受けた様子で固まった。
「しゅ、修羅場!?」
何か聞き捨てならないような発言が聞こえたような気がしたが、今の俺はそれ所ではない。
俺は素早い身のこなしで陽芽を俺の部屋に誘導し、悠莉を悠莉の部屋に誘導する。
「ねぇ、はじめ」
「ん? どうしたの?」
「……なんで悠莉だけ別の部屋なの?」
「…………」
確かに、普通に遊びに来たのであれば、わざわざ別々の部屋に案内する必要なんてない。
だが、そこをなんとか誤魔化さなくては未来は無い。
「あー、ほら、悠莉はちょっと用事があるみたいでさ!」
「……用事?」
「そうそう! だからそれが終わるまでは2人で遊ぼうよ!」
「…………」
陽芽の目はもうハイライトが消えきって漆黒みたいになっている。
俺は冷や汗を流しながら、陽芽の意識を悠莉の部屋に向かわせないように扉側の床に座った。
しかし、いつもはベッドに座っている俺のその様子に違和感を覚えたのか、陽芽は俺の方へと歩いてくる。
そして、俺の制止も間に合わず、陽芽は俺の部屋から出ていき、そして、まっすぐ悠莉の部屋へと走り出した。
「…………はじめ、なんで隠してたの?」
「……ごめんなさい」
悠莉の部屋を見た陽芽はにこやかに笑いながら俺の方を振り返る。
表情は笑顔のように見えるのに、何故か氷のような冷たい印象を受けるその表情に、俺の口はすぐさま謝罪の言葉を紡ぐ。
「ちょ、待って、はじめ見ないで! まだ着替えてるから!」
悠莉が部屋の奥から叫ぶが、今の俺にはそんな事を気にしている余裕なんて無かった。
「……ねぇ、はじめ、悠莉ってここに住んでるの?」
「……はい」
「いつから?」
「……春休みからです」
「ふーん……そっか」
陽芽はそう呟くと、しばらく考え込むような仕草を見せた。
そして……。
「ひぐっ、なんで……なんで言ってくれなかったの!」
泣き出してしまった。




