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一日一善を繰り返していたら人生が変わった件 〜現代日本に赤ちゃんとして生まれ変わったら、善い行いをするとスキルが獲得できるようになった〜  作者: 黒飛清兎
中学生編

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67話 《癒し》の力



 俺はこめかみを抑えながら起き上がる。

 すると、布団が捲れた事により悠莉も目を覚ます。


「んぅ……寒いぃ」


 そう言って布団をもう一度被ろうとする悠莉から勢いよく布団を奪い取る。


「ちょ、何するのさ!」

「それはこっちのセリフだ!」


 ぶーたれる悠莉を無理やり俺のベッドから引きずり下ろし、敷布団の上に正座させ、俺はベッドの上に登る。

 いつもは悠莉の方が身長が高いのでこうやって見下ろす形になるのは少し新鮮だ。


「それで、申し開きは?」

「えと、やっぱり離れてたら眠れなくて……」


 悠莉はバツが悪そうにしながら視線を逸らす。

 昨日の夜、あれだけの攻防を繰り返し、別々で寝るという約束をしたというのに、俺が寝た後にこっそりと俺の布団に潜り込んできたのだ、もっと反省して欲しい。


「はぁ、やっぱりこれからはお母さんと一緒に寝てもらうしか……」

「い、いや! もうこんな事しないから、一緒に寝て欲しい!」

「…………」

 

 固い意思を持ってそれを断ろうとするが、俺はこういう姿に弱く、ついつい許してしまった。


「はぁ、わかった、次やったら本当にお母さんと寝てもらうからな?」

「わかった、ありがとう!」


 そう言いながら悠莉は嬉しそうに俺に抱きついてくる。

 何か違和感を感じながらも、俺は慣れた様子で話を続ける。


「それで、今日は眠れたの?」

「えっと、はじめが眠るまで僕も全然寝れなかったんだけど、はじめが寝てからちょっと布団にお邪魔したらもう凄い寝れたの!」

「……それは良かった、けど次からはやめるんだぞ?」

「え、あぁ、うん、勿論」


 歯切れの悪い様子に疑惑の目を向けながらも、とりあえずは本人ももうやめると言っているのだから信じようと思い、その日もふたりで俺の部屋に寝る事にした。

 まぁ、正直なところ、また同じことを繰り返すような気もするが、流石にあれだけ念を押したのだから大丈夫だろう。

 そして次の日。


「むにゃむにゃ……」

「…………」


 予想通り、悠莉は俺の隣で眠っていた。

 俺はすぐさま悠莉を叩き起し、昨日と同じように正座させる。


「ごめんなさい! もうしないから!」

「……信用出来ない」

「この通り! お願い!」

「…………」


 手を合わせて懇願する悠莉にまたもや俺は負けてしまい、寝れない時に俺の部屋に来ることを許可してしまう。

 そして次の日。


「すぴー」


 また次の日。


「んむぅ、もう食べれない……」


 更に次の日。


「むにゃ、はじめー、それアイスじゃなくて羊だよー」


 …………うん、もう駄目だ、こいつ。

 俺は隣で気持ちよさそうに眠っている悠莉を見ながら、大きくため息をついた。

 結局、悠莉はあれから毎日のように俺の布団に潜り込んでくるようになってしまった。

 その度に叱り、反省させ、二度としないと約束させているのだが、翌朝には何事もなかったかのように隣で眠っている。

 …………いや、そもそも毎回許してしまっている俺にも問題があるのかもしれないが。


「悠莉、起きて」

「んぅ……あと五分……」

「だめ、早く起きて」

「じゃあ……あと十分……」

「増やすな!」


 俺は悠莉の肩を揺すり、無理やり目を覚まさせる。


「ふぁぁ……おはよう、はじめ」

「おはようじゃないよ! 何回目だと思ってるの!?」 「えっと……二回目?」

「違う! 7回目!」


 こいつ、やっぱり反省してないな。

 俺は今日こそは許さないと心に決めた。


「……悠莉、今日こそは本当にお母さんと寝てもらうからね」

「えぇ!? そ、そんなぁ! あ、謝るから!」

「駄目、もう決めたから」

「うぅ……」


悠莉は今にも泣き出しそうな表情を浮かべる。


「てかそもそもなんですぐ俺の布団に入ってくるんだ、別に敷布団に居てもすぐそばに居るんだからそんなに変わらないだろ」

「それは違うよ! 何かね、はじめに抱きついてたらすっごい落ち着くんだよね。いつもちょっと安心したらすぐ出ようとは思ってるんだけど、抱きついた瞬間になんかほわーってなって、すぐ寝ちゃうの!」

「ほわーってなる?」


 俺は一瞬意味が分からなかったが、少し考えることによりひとつの事を思い出す。

 それは、《癒し》のスキルの事だ。

 これは俺が人に与える精神的な癒しの効果を増加させるスキルのようで、このスキルがある事により、悠莉は俺に抱きつきたいと思ってしまっているのだろう。

 そうならば、俺の方から寝かしつけてあげれば解決するのではないだろうか。

 要は、悠莉が眠るまで俺が傍に居てあげればいいのだ。

 流石に一度眠ってしまえば、わざわざ俺の布団に潜り込んでくることもないだろう。

 俺がその旨を悠莉に伝えると、悠莉は目を輝かせた。


「えっ!? いいの!?」

「うん、その代わり勝手に俺の布団に入ってこないこと、いいね?」

「うん!」


 うむ、我ながらいいアイデアだ。

 これでこの問題は解決するだろう。

 そうして、その日の夜。


「ほら、もう寝る時間だよ」

「はーい!」


 俺は悠莉の布団の横に座り、頭を優しく撫で始める。

 すると、悠莉は嬉しそうに目を細め、しばらくすると静かに寝息を立て始めた。


「すぅ……すぅ……」

「おぉ、もう寝たのか」


 思った以上に効果は絶大だったようで、ものの数分で眠ってしまった。

 俺はこれで一件落着と思い、自分の部屋に戻ろうとするが、問題はまだ起こる。


「んぅ……はじめぇ……」


 突然、悠莉が俺の腕に抱きついてきたのだ。


「ちょ、悠莉? もう寝たんじゃ……」


 返事はない。

 どうやら眠ったまま、無意識に抱きついてきたらしい。

 俺は何とか腕を引き抜こうとするが、思いのほか力が強く、少し手荒くしなければ外れそうに無かった

 それから色々と試してみるが、結局、俺は悠莉を起こすのも可哀想だと思い、そのまま隣に横になることにした。

 そして翌朝。


「えへへ、やっぱりはじめと一緒だとよく眠れるね!」

「…………」


 …………あれこれ何も解決してなくないか?

 

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