64話 女装
毒牙にかかっているのが悠莉だけではないというのは、どう考えてもいいことではないが、今回に限っては好都合だった。
何故なら、揺るぎない証拠を抑える事ができるからだ。
俺は調査を初めてからすぐに購入したビデオカメラを持って今日も孤児院に潜入していた。
目的はずばり、あのロリコン職員に突きつけ、脅しの材料とすることのできる決定的証拠、犯行現場の音声付きの映像を入手する事だ。
この時代ではまだCGの技術もそれほど高く無いため、映像や音声は証拠として現代と比べれば非常に信用の出来るものとなっている。
だからこそ、それを手に入れることにより脅しの材料を手に入れようとしているわけだ。
あのロリコン職員に証拠を叩きつけ、出来れば自主退職までは追い込みたいと考えている。
ただ、それをやろうとすると1つ問題がある。
それは、どうしても被害者が出てしまうということだ。
そうなってしまえば、俺が自ら事件解決に乗り出している意味が無くなってしまうし、本末転倒だ。
だが、もちろん俺がそんなことを許すはずがない。
そのため、俺は徹底的に妨害する事にした。
今日はちょうどその日であり、案の定ロリコンは1人の女の子を連れて洗面所へと向かった。
俺はそのあとをこっそりとつけ、一緒に洗面所へとはいる。
流石にある程度の人数が居る為、この孤児院の洗面所は普通の洗面所よりも大きく、何とか俺が隠れることができる場所もあったため、作戦実行にはピッタリの場所だった。
「ねぇパパ、このままだと私男の子になっちゃうってほんと?」
「うん、そうだね、けど、女の子のままで居られる方法もあるんだよね」
「ほんと!?」
「あぁ、その為にはまず服を脱いで貰わなきゃいけないんだ、だから……」
ロリコンがそこまで言いながらも手を女の子の胸付近へと近づいていたため、俺はたまらず行動を起こす。
コンコンコン
俺はことが本当に起こってしまいそうな前に、ドアをノックした。
潜入の際には外ではなくことが起こるであろう内側に居る為、ノックは内側からする事になるが、興奮しているロリコンにはあまりその区別が付いていなかったようで、特に違和感を感じている様子も無く、ただ邪魔されたことに腹を立てて洗面所から外へ出ていった。
こんな事を繰り返していると、徐々に証拠は集まっていった。
どうやらロリコンが犯行に及ぶのは他の職員が居ない時間だけのようなのだが、その時間はあまり長くは無いため何度も邪魔をしていれば、結局何もできないまま他の職員が戻ってきてしまうという訳だ。
もちろん、何度も同じような事をしていれば怪しまれる可能性もある。
だが、今のところその心配は無さそうだ。
そもそも、あの男は自分が誰かに監視されているなんて夢にも思っていないだろうし、仮に誰かが邪魔をしているのだと気付いたとしても、まさかそれが子供の俺だとは思わないだろう。
そんな事を続けて早1週間、中学校入学までには事を終わらせておきたいと考えていた俺は少しギリギリを攻めながらも、しっかりと被害が出る前には妨害を行うという事を繰り返し、十分なまでの証拠を手に入れることに成功した。
これでようやく本題に入れる訳だ。
俺は今まで撮影した映像を確認し、証拠として十分に使えることを確かめると、再び孤児院へと向かった。
目的はもちろん、あのロリコン職員を脅すためだ。
とはいえ、別に暴力を振るうつもりはない。
そもそも、俺がわざわざ証拠を集めたのも、そういった面倒事を避けるためなのだから。
「……あの、少しいいですか?」
俺は《声術》を使い、屋外業務をしていたロリコンにできる限り女の子のような声を出して話しかけた。
「ん? 君は……ここの子じゃないよね?」
「はい、ちょっとお話がありまして」
「んふふ、良いよなにか相談があるなら奥で聞くよ」
ロリコンは鼻の下を伸ばしきって俺を孤児院の奥へと誘った。
非常に気色悪いが、まぁ、作戦は成功だ。
普通の姿で言っても話ぐらいは聞いてくれるだろうとは思っていたが、より確実にするために、俺は少しおめかしをしてきた。
具体的に言うと、悠莉に服を借りて女装をしてきたのだ。
俺は高い魅力のステータスを持っているが、それに加えて中性的な顔立ちと未発達な体を持っている。
そのため、こうやって悠莉の服を着て髪の毛をしっかりと下ろせば、かなりの美少女に見えるだろう。
それに加えて俺の磨きに磨いた《演技》を使うことによって、クオリティはさらに高まる。
さて、そろそろ仕上げと行こうか。




