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一日一善を繰り返していたら人生が変わった件 〜現代日本に赤ちゃんとして生まれ変わったら、善い行いをするとスキルが獲得できるようになった〜  作者: 黒飛清兎
小学生編

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59話 卒業


「卒業生、入場!」

 

 体育館に響いた先生の声と共に、俺達は一列になって歩き出す。

 周囲から聞こえてくる拍手、在校生や先生達、そして保護者達の視線を受けながら、俺はゆっくりと用意された席へ向かった。

 胸元には卒業生を示す花飾りが施されており、服装も今日は普段とは違い、少しだけかしこまったものだ。

 俺もとうとう、小学校を卒業する。

 

「…………長かったなぁ」

 

 思わず、小さな声が漏れる。

 この世界に生まれ変わった時のことを考えれば、それこそ気が遠くなるほど昔のことのように感じる。

 当時は子供の頃の日々は長いと言われてもはっきりとそれを自覚したことはなかったが、こうやって転生すると、改めてその長さを実感することになった。


 幼稚園の頃はあれだけ大泣きしていた陽芽は今ではその影も無く、笑顔を浮かべながら式に臨んでいた。

 なんなら俺の方が少し涙ぐんでいるほどだ。

 ちなみに、6年生でまた同じクラスになった悠莉は友達も多かった為か、周りの友達が泣き止む程にギャン泣きしていた。

 どうやら、仲の良かった友達が私立の少し遠くにある中学校に入学するから離れ離れになってしまうとかで、今日が最後の日になってしまうためここまで大泣きしているらしい。

 そんな可愛げのある姿には好感が持てる。

 そんな事を考えているうちに、式は淡々と進んでいった。

 

「卒業証書、授与」

 

 その言葉と共に、俺達は名前を呼ばれた順番に一人ずつ壇上へと上がっていく。

 六年間通い続けた学校、毎日のように歩いた廊下も、何度も授業を受けた教室も、こうして卒業してしまえば、今までのように当たり前に来る場所ではなくなる。

 そう考えると、急に寂しさが込み上げてきた。

 

「紅月、一」

「はい!」

 

 名前を呼ばれ、俺は椅子から立ち上がる。

 壇上へ向かい、校長先生の前まで歩いていく。

 そして差し出された卒業証書を両手で受け取った。

 6年間優等生ムーブを取り続けた結果、先生からの信頼も厚くなったようで、卒業証書授与のトップバッターを任されることになった。

 

 

「卒業、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

 

 深く頭を下げ、壇上から降り自分の席へと戻り、改めて手に持った卒業証書を見る。

 たった一枚の紙、それなのに、妙に重く感じた。


「…………卒業かぁ」


 前世でも当然、小学校を卒業した経験はある。

 だから今回が初めてという訳ではない。

 それでも、やはり感慨深いものがあった。

 何せ今回は、赤ん坊から人生をやり直し、その上で迎えた二度目の小学校卒業なのだ。

 入学した頃なんて、周囲の子供達に合わせながら生活するだけでもそれなりに苦労していた気がする。

 ちょっとやり過ぎたっ結果として習い事をさせられたり、先生から頼み事をされたりもした。

 今思えば、随分と面倒なことをしていたものだ。

 ……まぁ、途中からかなり開き直っていた気もするけど。


「卒業生代表、答辞」


 そんなことを考えているうちに、式はさらに進んでいく。

 壇上では代表の生徒が、これまでの学校生活について語っていた。


 聞いているうちに、自分自身の記憶も次々と思い出されていく。

 楽しかったことばかりではない。

 面倒だったこともあったし、前世の精神年齢を持つ俺からすれば退屈に感じることも多かった。

 それでも……。


「……悪くなかったな」


 少なくとも、俺にとってこの六年間は無駄ではなかった。

 陽芽と過ごした時間も、悠莉や他のクラスメイト達との時間も。

 習い事やコンクール、パソコンを買うために必死になっていた時期も。

 全部ひっくるめて、今の俺を作っている。

 やがて答辞が終わり、校歌を歌い、最後に先生から卒業生退場の言葉が告げられた。


「卒業生、退場!」


 俺達は再び立ち上がり、入場した時と同じように、一列になって体育館の出口へと向かって歩いていく。

 ただ、入ってきた時とは明らかに気分が違った。

 これで、本当に終わるのだ。


「…………」


 出口が近付く。

 その途中、保護者席へ視線を向けると、お母さんの姿が見えた。

 目元をハンカチで押さえながら、それでも俺と目が合うと満面の笑みを浮かべて手を振ってくる。

 ……いや、泣きすぎじゃない?

 こっちまで泣きそうになるからやめてほしい。

 俺は苦笑しながら、小さく手を振り返し、そして体育館を出る。

 外から差し込む春の日差しが、妙に眩しかった。


「終わったぁ……」


 廊下へ出た瞬間、俺は大きく息を吐く。

 四月からは中学生、行動範囲も広がり、出来ることも今まで以上に増えていくだろう。

 小学生という制約がある以上、どれだけお金を稼いだとしても、お母さんからの心配は大きく、1人でできることは少なかった。

 しかし、中学生になればそれも少しはマシになる。

 俺は手に持った卒業証書を見下ろしながら、少しだけ口元を緩める。

 二度目の人生、その最初の大きな区切りが、今日ようやく終わったのだった。


 これにて小学生編完結でございます。

 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 物語の位置づけ的には大体起承転結の承が終わったところ位なので、良ければぜひこの先も読んでくれると嬉しいです。

 また、ブクマや評価、感想、レビューなどもお願いします!

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