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一日一善を繰り返していたら人生が変わった件 〜現代日本に赤ちゃんとして生まれ変わったら、善い行いをするとスキルが獲得できるようになった〜  作者: 黒飛清兎
小学生編

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57話 卒業へ



 それからの生活は一言で表すと、順調といった感じになるだろう。

 資金を得ることが出来たということはつまり設備投資ができるということだ。

 最初に揃えられた環境というのはその当時にしては十分なものであったとしても、それから時間が経てば一瞬で環境は変わってしまう。

 特にこの時代だとそれは顕著だ。

 

「うおぉ……速い……!」

 

 新しく買い替えたパソコンの前で、俺は思わず感動の声を漏らした。

 以前まで使っていた物も決して悪い物ではなかった。

 むしろ、当時としては十分すぎるほど役に立ってくれたと言っていい。

 だが、ソフト開発を本格的に行うようになってからは話が変わった。

 少し複雑な処理をさせるだけで待ち時間が発生する。  複数の作業を同時に進めようものなら動作が重くなる。  容量だって、作ったデータを何も考えずに保存し続けられるほど潤沢ではない。

 前世なら数秒で終わっていた作業に何分も待たされるなんてことも珍しくなかった。

 昔ならそれでも使えるパソコンがあるだけありがたいと我慢していただろう。

 しかし、俺は金を手に入れた。

 ならば、いつまでも古いものを使っている意味も無いため、こんな高価なものを買ってもらったのに少し悪いように思うが、思い切って買い換えてしまった。


 その効果もあってか、俺のソフト開発は順調に進んでいた。

 前に作ったソフトは競走の末に誰にも使われなくなったりもしたが、その度に新しいソフトを販売する事により、俺の資金はついに一千万円に迫る程に膨れ上がっていた。


 とはいえ、金が増えたからといって俺の生活が大きく変わったわけではない。

 朝になれば学校へ行き、授業を受ける。

 放課後になれば陽芽達と遊び、家に帰ってからは勉強やソフト開発。

 休みの日には新しいソフトの構想を練ったり、時には丸一日何もせずに過ごしたりもした。

 そんな、ごく普通とは少し言い難いながらも、俺にとっては当たり前となった日々。

 それは驚くほどの速さで過ぎていった。


 4年生、5年生と時が経つにつれて同級生達もどんどんと大人びていった。

 かく言う俺はまだ成長期が来ていないからなのか分からないが、何年経ってもあまり劇的に身長が伸びることは無かったが、それでもまぁ、数cmは伸びた。

 そんな事を悩んでいるうちに、時は更に過ぎ去り、気づけば6年生、卒業の時期になっていた。


「そういえば陽芽さ、幼稚園の卒園の時、俺と違う小学校に行っちゃうって勘違いして大泣きしてたよね」


 卒業という言葉からふと昔のことを思い出し、俺がそう口にすると、陽芽は一瞬きょとんとした後、少しだけ頬を膨らませた。

 

「……そんな昔のこと覚えてるの?」

「そりゃ覚えてるよ。あれだけ泣かれたら忘れられないって」

 

 あの時は大変だった、最近ではそんな様子もすっかりとなりを潜めたが、今も同じように流れでもしたら当時以上に大変だっただろう。

 まぁ、もう笑い話だろう。


「けど、もう大丈夫、ずっと一緒だもんね?」

「うん? あぁ、まぁ、同じ中学校には行くよ?」


 何か少し不穏な気配を感じたが、気のせいだろう。

 ずっと一緒といえば、この6年間、陽芽と俺はずっと同じクラスになっていた。

 普通なら凄い偶然だねで済む話なのだが、陽芽のお母さんの話なども考えると、何かやったんじゃないかと思ってしまう。

 まぁ、流石に学校のクラス分けにまで手を出しているとは思いたくないが……何故かあの人ならやりかねないと思えてしまうのが怖いところだ。

 そんな事を考えながらも、卒業に向けた準備は着々と進んでいった。

 卒業文集を書いたり、教室の飾り付けをしたり、卒業式の練習をしたり。

 今まで何度も見てきた行事ではあるが、いざ自分が卒業する側になると、やはり少しだけ感慨深いものがある。


入学した頃は、この六年間が途方もなく長いものに感じていた。

 だが、いざ終わりが見えてくると、むしろ短かったようにすら思える。

 この学校で友達ができて、色々なことを学んで、コンクールに出て、パソコンを手に入れて、ソフトまで作るようになった。

 思い返してみれば、我ながら随分と色々なことをやったものだ。

 

「……六年間か」

 

 小さくそう呟きながら、自分の手を見る。

 入学したばかりの頃と比べれば、身体も多少は大きくなった。

 それに、成長したのは何も身体だけではない。

 毎日欠かさずスキルを獲得し、必要に応じて伸ばし続けてきた。

 途中からは一つのスキルを限界近くまで上げるようなことも試したし、将来必要になりそうな能力を優先的に鍛えるようにもなった。

 そう考えると、今の俺は入学した頃とは比べ物にならないほど変わっているはずだ。

 

「そういえば、最近ちゃんと全部確認してなかったな」

 

 普段からスキルの増減自体は見ている。

 だが、ステータス全体をじっくり眺める機会というのは、意外と少ない。

 どうせなら、小学校生活が終わるこのタイミングで一度確認しておくのも悪くないだろう。

 六年間で、俺がどれだけ成長したのか。 

 

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