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一日一善を繰り返していたら人生が変わった件 〜現代日本に赤ちゃんとして生まれ変わったら、善い行いをするとスキルが獲得できるようになった〜  作者: 黒飛清兎
小学生編

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56話 流石にありえない



「紅月さん、この書類は一体なんなんですか?」


 俺とお母さんは今、絶賛税務署の職員さんに詰められている。

 職員さんは少し高圧的に俺たちに接するが、あまり彼を責めないであげて欲しい。

 何故なら、どう考えても俺達が送った書類の内容がおかしなものだからだ。


「あのね、つくにしてももう少しマシな嘘をついてください、小学生の息子がこれだけの大金を稼いだとか……流石にありえないですよ」


 そう、この確定申告は俺名義で行っている。

 稼いだのは俺なのだからそれは当然のことなのだが、それを書面に直すと、小学三年生の息子が自作ソフトを販売して半年で百何十万を稼いだ、とかいうなかなかに意味の分からない文が出てくる。

 芸能活動とかならまだ分からなくもないが、ソフト開発でとなればますます意味がわからないだろう。


「うちの子が嘘ついてるって言いたいんですか!?」


 お母さん、ちょっと待ってその反応はおかしいよ。

 流石にこれに関してはこっちに説明責任があるし、まず疑われてるのはあなたですからね?

 職員さんは可哀想なことにお母さんの勢いに押されて少したじろぎながらも、自らの責務を全うしようとする。


「流石に信じられませんよ、うちにもそちらのお子さんと同じくらいの年齢の息子がいますが、最近やっと掛け算割り算ができるようになったと喜んでいるんですよ? それなのにその子がプログラム言語を習得して販売できるレベルのものを作り出すとは到底思えません」

「いやいや、うちのはじめは天才ですから! そこら辺の子と比べられたら困りますよ!」


 お母さん、ステイ、流石にそれは失礼だ。

 ただまぁ、このままだと埒が明かないというのも事実だ、何とか職員さんに信じてもらえる方法は無いものだろうか?

 お母さんと職員さんの会話は徐々にヒートアップし、このままでは喧嘩に発展するんじゃないかという段階に来ていた。


「それともなんです? 今ここで何か作ったりでもしてみますか? それができるなら私も認めますが」

「えぇ、いいですよ! ほらはじめ、やっておしまい!」

「え、あぁ、うん」


 おぉ、これはラッキーだ、確かにこの場で何かプログラミングをすることが出来ればそれで万事解決だ。

 

「じゃあ、パソコンを貸してもらってもいいですか?」

「えっ」

 

 職員さんが一瞬固まる。

 どうやら勢いで言っただけで、本当に俺がやるとは思っていなかったらしい。

 

「いや、何か作ればいいんですよね?」

「ま、まぁ……そうですが」

「ならお願いします」

「…………分かりました」

 

 若干納得していなさそうな顔をしながらも、職員さんは俺達を近くに置かれていたパソコンの前まで案内してくれた。

 俺は椅子に座り、早速中身を確認する。

 当然だが、俺が普段使っているような開発環境は入っていないが、簡単なゲームを作る程度ならそういったものが無くともある程度なら作ることができる。


「じゃあ、これ使っていいんですよね?」

「え、えぇ……壊さないでくださいよ?」

「流石に壊しませんよ」

 

 俺はメモ帳を開くと、そのままキーボードへ指を走らせる。


「…………」

 

 後ろから視線を感じ、振り返ってみると、職員さんが腕を組みながら俺の画面をじっと睨みつけていた。

 どうやら俺が本当にプログラムを書けるのか、最後まで見届けるつもりらしい。

 

「はじめ、頑張って!」

「うん」

 

 お母さんだけは完全に授業参観のノリである。

 さて、何を作ろうか。

 別に大したものである必要はない。

 俺にプログラミングの知識があることを証明できればそれで十分なのだから、単純なものでいい。

 ということで、俺は画面上に表示されたボタンを押すだけの簡単なゲームを作ることにした。

 画面に出た円をクリックすると得点が加算され、円が別の場所へ移動し、それをもう一度クリックして別の場所へ移動するというのを繰り返し、制限時間以内にどれくらいの円をクリックできるかどうかを競う反射神経ゲーだ。


「……できました」


 最後の処理を終え、職員さんにそれを見せる。


「えっ、あぁ、完成ですか」


 職員さんは何が起こっているのかよく分かっていなかったようで、俺がゲームを完成させたのを見て首を傾げながら席を代わった。


「とりあえず、プレイしてみてください」

「わ、わかりました」


 職員さんが画面のスタートボタンを押すとゲームがスタートし、簡単なゲーム性なのもありすぐにその遊び方を理解し、かなり真剣にやり始めた。

 何度かプレイし終わると、職員さんは神妙な面持ちでこちらへ振り返った。


「これは……今ここで作ったんですよね? 何か見たりもしないで」

「えぇ、見てたじゃないですか」

「そうよ!」


 お母さんがこれでもかと胸を張る。

 職員さんはしばらく画面と俺を交互に見た後、悔しそうに話し始める。


「……分かりました、あの書類の件は認めます……失礼いたしました」

「最初からそう言ってるじゃないですか!」

「お母さん、もういいから」


 ともかく、これでようやく話を信じてもらえたらしい。

 確定申告をするだけでここまで苦労するとは思わなかったが、どうやら無事に最初の関門は突破できたようだ。

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