49話 キャンプ
まぁ、考えてみればこれだけ機能をてんこ盛りにして無料で配布されてしまえばかなり使われるというのは何もおかしなことは無い。
前世の記憶があり、高性能なものを知っている分、それに近付けるという事が出来てしまうため、この世界ではまだアイデアすらもない機能まで追加することができる。
勿論、知っているからといって簡単に作れる訳ではなく、実際、今回もかなり苦労した。
だが、何を目指せばいいのか分かっているというのは、それだけで大きな差になる。
だが、これ程までの反響が来るとは思わなかった。
「うわぁ、もっと早い段階で有料にしておけば良かったかなぁ?」
有料にしてしまえば一気に利用者は少なくなるだろう。
だが、それでも今の利用者の一部が金を払ってくれるだけで、それなりの額になる。
「うーん……」
俺は画面に表示されたダウンロード数を眺めながら唸る。
今から全部有料に切り替えるという手もある。だが、それをやれば今まで無料で使っていた人達から反発される可能性もある。
それに、そもそもここまで広がった一番の理由は無料だったからかもしれない。
「無料だから試してみようって人も多かっただろうしなぁ」
そう考えると、単純に有料にすれば良かったという話でもない。
むしろ、無料で利用者を増やしたからこそ、ここまで反響が大きくなったとも言える。
「……よし、今回は学ばせて貰ったということで、このまま無料配布にするか!」
ここで無理に金を取ろうとして、折角増えた利用者を減らしてしまう必要もない。
それに、今回のソフトのおかげで得られたものはかなり多かった。
実際に一つのソフトを完成させた経験や、使ってもらった人からの感想、そこから改良を重ねた経験、そして何より、自分の技術がどこまで通用するのかを知ることができた。
「これだけでも十分元は取れてるな」
なら、金を稼ぐのは次からでいい。
今回作ったものは、そのまま無料で使ってもらう事にし、その代わり、次に作るものは最初から金を取ることを前提にする。
「よし、次は本気で稼ぎに行くぞ」
そうして俺は二本目のソフト開発に踏み切った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「はじめくん、おはよう」
通学中、いつもの待ち合わせ場所で陽芽と合流し、一緒に学校へと向かう。
いつもの日課だ。
俺達は3年生になったが、またもや俺と陽芽は同じクラスになった。
ここまで来ると、先生達が裏で何かをやっているんじゃないかと勘ぐってしまう程だ。
残念な事に悠莉は別のクラスになってしまったが、相変わらずちょっかいはかけてくる。相変わらず休み時間になるとこちらの教室まで遊びに来るし、帰り際に待ち伏せされることもある。
クラスが離れた程度では、あいつには大した問題ではないらしい。
本当なら学校に行くのも惜しいほどだが、陽芽や他の友達に会ったりするのも中々に楽しいので、変に休んだりはしていない。
少し歩いたところで、陽芽が何かを思い出したようにこちらを向いた。
「あ、そうだ、はじめくん」
「ん?」
「今度の休み、旅行行かない?」
「……旅行?」
これまた唐突な誘いだ。
以前から陽芽は唐突に家に来たり、遊びに誘ってきたりすることはあったが、いきなり旅行とは……小学生の範疇を超えている。
「うん、今度お母さんとお父さんとキャンプに行くの、だから、はじめくんも着いてきてくれたら嬉しいなって」
「あぁ、そういうことね」
おそらくは旅行の話をされたため、とりあえず俺にも着いてきて欲しいと思っていま話したのだろう。
そのため、多分陽芽の両親は俺がついてくるなんて事は全く聞かされていないのだろう。
「……それ、先にパパとママに聞いた方がよくない?」
「え?」
「え、じゃないよ」
俺が呆れ気味にそう言うと、陽芽はしばらくきょとんとした顔をした後、ようやく意味を理解したのか「あっ」と声を漏らした。
「そうだった」
「やっぱり聞いてなかったんだね……」
それにしてもキャンプか、うちではあまり旅行にいかないから、今世では初めてになるだろう。
それに、考えてみれば、陽芽のお母さんなる人とはあったことがない。
家などに遊びに行っても基本的にお父さんしかいないし、入学式などにすら来ていなかった。
「そういえばさ、陽芽のお母さんってどんな人なの?」
「ママ?」
「うん、俺会ったことないなって」
俺がそう聞くと、陽芽は少し考えるように首を傾げた。
「んー、優しいよ?」
「へぇ、いつも家にいないの?」
「お仕事で帰ってくるの遅いこと多いよ、でも今度はお休みなんだって!」
「なるほどね」
まぁ、この時代では珍しい感じの家庭なんだろうな。
何はともあれ、久しぶりのキャンプに胸を踊らせながら、俺と陽芽は学校へ向かった。




