48話 初めてのソフト
俺が最初に作ることにしたのは、インターネット上で何度も入力する情報を自動で入力してくれるソフトだった。
インターネットを使っていると、個人情報などの情報を入力する機会は意外と多い。
現代ではPCに元々内蔵されている機能でこれを自動で入力してくれていたが、この時代ではそういったものはほとんど存在していない。
前世ではほとんど意識していなかったが、便利な機能が無くなってみるとそのありがたみがよく分かる。
だが、無いのなら作ればいいのだ、今の俺にはそれができる。
とはいえ、この世に無いものを作り出すというのはなかなかに難しいことだ。
それをする為の直接的な知識を得られる場所は何処にもなく、それまで得た知識を応用して新しいものを自ら作り出さなくてはいけない。
「ま、最初から完璧なんて求める必要は無いからな」
前世で使っていたような入力欄を自動で判別し、そこに適した情報を入力するといったものを作れと言われれば流石にそれは厳しいだろう。
いずれできるようにはなるだろうが、今はそこまで時間をかけるのも惜しい。
ならば、もっと単純なものを作ればいいんだ。
「これでよしと」
数日かけ、俺はソフトを何とか実用可能レベルまで仕上げることに成功した。
性能でいえば本当にちょっと便利になる程度のものではあるが、それでも実際に使ってみると、中々に悪くない。
初めて作ったまともなソフトにしては十分だろう。
「さて……次はこれをどうやって配るかだな」
ソフトが完成したところで、自分一人で使っていては金にはならず、金にするには他の人間に使ってもらう必要がある。
現在、インターネット上には個人が作成したソフトを公開している場所がある。
要はそこに俺が作ったソフトを投稿し、色んな人に使ってもらえればお金になる訳だ。
「ま、そう上手くはいかないだろうけどな」
俺が今回作ったソフトでお金を取ろうとするのはかなり難しいだろう。
たった数十秒の時間の短縮のためにお金をかける人などほとんどいないからだ。
そのため、本当は有料にしてお金を取りたいところではあるが、まずは使ってもらい、どんな反応が来るのか試してみようと思い、初めは無料で公開することにした。
「さて……」
俺は椅子の背もたれに身体を預ける。
ここから先は、俺に出来ることは少ない。
使ってもらえるかどうか、便利だと思ってもらえるかどうか、それは実際に公開してみなければ分からない。
「まぁ、一人でも使ってくれれば十分かな」
初めて作ったソフトだ。
いきなり何百人、何千人に使われるなんて期待はしていない。
そう思いながら、その日はパソコンの電源を落とした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
翌日、習い事から帰ってきた俺は早速パソコンを開いてみた。
そして、昨日公開したソフトのページを確認した。
「おぉ、思ったより使われてるじゃないか!」
俺は喜びと感動で思わずガッツポーズを取った。
一日で俺が作ったソフトがダウンロードされた数は5、決して多い数ではない。
だが、それでも多少使われたというのは大きな一歩だ。
しかも、ダウンロードした人の中には感想まで残してくれている人がいた。
「どれどれ……」
俺は少し緊張しながら、その内容を確認する。
その内容は、俺が想定していた使用用途とは少し違う使い方をしていた人の物のようではあり、その使い方をしている場合はこのソフトは使いにくいといったものだった。
俺が推奨している使い方をそのまましてくれれば良いとも思いはしたが、確かにその機能があれば便利だなと思うものではあった。
「…………やりますか」
俺は小さく呟き、再びパソコンへ向き直った。
せっかく感想をくれたのだ、それに、実際に使っている人間から出た意見というのは、俺一人で考えているだけでは得られない。
ならば、試してみる価値はある。
「ここをこうして……いや、これだと逆に使いづらいか」
要望通りに機能を追加するだけなら、それほど難しくはなかった。
だが、今まで使っていた人にとって操作が複雑になってしまっては意味がない。
開発は一番最初にソフトを作った時よりもかなり難航した。
しかし、その分俺の技術も凄まじい勢いで伸びていた。
失敗は成功のもととはよく言ったものだと思う。
それからもトライアンドエラーを繰り返し、ソフトの更新を繰り返し行い、最終的にはかなり前世で使っていたようなものに近しい仕上がりまでその性能を向上させることができるようになっていた。
そして、それ程までの性能のソフトを開発する事ができたということは、当然ながら利用者の反応も大きく変わるということだ。
「……え?」
久しぶりに公開ページを確認した俺は、その数字を見て固まった。
ダウンロード数は、いつの間にか数千件を超えていた。
「……伸びすぎだろ」




