47話 ソフト開発
パソコンを購入してから数日後。
「お、おぉ……」
俺は自分の部屋に置かれたパソコンを前に、思わず感嘆の声を漏らした。
大きな本体、机のかなりの部分を占領する分厚い画面、そして、その前に置かれたキーボードとマウス。
前世で使っていた物と比べれば、何世代前なんだと言いたくなるような代物だが、今の俺にとっては、間違いなく宝物だった。
「ついに……ついに来た!」
俺はすぐにパソコンに飛びつき、電源をつける。
「やりすぎはダメよ?」
「わかってるわかってる〜」
お母さんから待ったがかかるが、今の俺は止められはしない。
ブゥンという駆動音と共に本体が動き始め、しばらくすると画面が表示される。
遅い。俺が前世で初めて使ったパソコンでももっと動作が早かったはずだ。
だが、それは別に問題ではない。
俺が今やろうとしているのは、最新のゲームを動かすことでも、巨大な映像を編集することでもなく、プログラムを書くことだ。
俺はパソコンを操作しながら映像記憶の能力を使用し、プログラミングの本を見る。
映像記憶は使い方によっては本をいちいち開かなくても良くなるため、こういう少しの面倒くささも解消してくれる。
「これをこうして……」
頭に浮かぶ通りのコードを打ち込んでいく。
非常に簡単なプログラムとはいえ、初めての経験なため、少し緊張する。
知識としてはこの位は初歩中の初歩だが、実際に打ってみるのでは感覚が違い、思ったよりも速くは打てない。
だが、それでも確実にコードは完成していく。
「これでよし……と」
コードを書き終え、それが本当に動くかどうか確認する。
今回書いたのは本当に簡単なもので、数字の足し算が出来る程度のものだ。
数字を何個か打ち込み、実行する。
「……お」
画面に計算結果が表示された。
当然、答えは正しい。
たったそれだけのことだ。
小学生でもできるレベルの暗算をわざわざコンピュータに計算させた、それだけのことだ。
だが、自分で打ち込んだコードが実際に動いたという事実に、思っていた以上の感動があった。
「ふふ、素晴らしい」
無限に上がっていくのではないかと錯覚してしまう程上がっていく口角をそのままに、俺はさらに他のコードを打ち込みまくり、自分ができることを増やしていく。
そうして夢中になっているうちに、気が付くとかなりの時間が経っていた。
「はーじーめー?」
「はいっ! すみません!」
いけないいけない、もっとやりたい気持ちはあるが、約束を破る訳にもいかない。
名残惜しいが、今日はここら辺でやめにしておこう。
しかし、それにしても最初のうちは上手くいっていないかと思っていたが、やっているうちにすぐ技術を習得できることに気づいた。
スキルの効果が大きいだろうが、そのものを楽しんでいる者は習得が早いとも言うし、それだけ熱中していたということでもあるのだろう。
そんなこともあって、思ったよりも早いうちに計画を実行できそうだと俺はほくそ笑んだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
それからは家にいる時間は全てをプログラムに捧げた。
まぁ、やっていることは本を読むことからパソコンをいじることに変わっただけなんだけどね。
ただ、効率は断然良くなった。
インターネットを使用する事が出来るのもあり、情報収集の効率も一気に向上したことにより、累乗的に俺のプログラミングライフは充実していた。
俺は驚異的な速度でプログラミング技術を習得していき、ものの数ヶ月でとある計画を実行出来るレベルまで向上した。
「そろそろ、なんか作るか!」
そう、何らかのソフトを作るという計画だ。
もちろん、これが最終目標という訳では無い。
ソフト開発というのはある程度のお金持ちにはなれるかもしれないが、かなり限界はある。
そのため、それは通過点として経験と多少の金銭を得るという目的がある。
俺は自分の記憶と今調べたものを照らし合わせ、まだ夜に発表されていなそうなアイデアを書き出していく。
ゲームなどを作るのはまだハードルが高いとはいえ、ちょっとしたアイデアですぐ作れそうな便利アプリのようなものであれば今の俺でも十分作れる。
前世の記憶があるため、パソコンを使用している時に前世ではもっと便利だった物を作るという事ができるため、アイデアはほぼ無限にあると言ってもいい。
しばらく候補を書き出した後、その中の一つに目が止まった。
「……これなら、いけるな」
必要な技術は今の俺でも十分足りているし、何よりこの時代にはまだ似たような物がほとんど存在していない。上手く作れれば、多少なりとも金になる可能性もあるだろう。
俺は紙に書いたその案を丸で囲み、すぐさまキーボードへと手を伸ばした。
「よし、決めた。最初はこいつを作ろう」
こうして俺の初めてのソフト開発が始まった。




