43話 2年生
次の日から早速俺は他のコンクールについて調べ始めた。
俺は様々な習い事をしているという事もあり、そう言う情報は比較的得やすい立場にある。
先生達は依然から俺の能力を見込んで様々なコンクールなどへの出場を勧めてきていたため、俺がちょっと情報が知りたいと言えばすぐさま大量の情報を渡してくれた。
この勢いならすぐにパソコンを手に入れるだけの資金は手にはいるだろと考えていたが、すぐに現実を見させられる結果となってしまった。
そう、コンクールで金を稼ぐのは非常に効率が悪いという事だ。
まず、交通費だ。
大きなコンクールであればあるほど東京などの都心で行われることが多く、そこまで向かう交通費がかなりかかってしまう。賞金を差し引くとプラマイゼロどころかマイナスになるものばかりだったのだ。
次に賞金の少なさだ。
まず、小学生のコンクールでは直接的賞金が出るものは少ない。
ものによっては商品券や奨学金等が出るものもあり、交通費を最大限抑えればプラスになるものもあったが、そういったものは極わずかであり、しかもお母さんに負担をかけてしまえば我が家全体で言えばマイナスになるようなものばかりだったのだ。
その為、目標のパソコンまではかなりの年月がかかりそうだった。
やらないよりはマシと色んなコンクールを受けては見るものの、優勝出来ないものもあり、はっきり言って上手くいっているとはあまり言えなかった。
だが、それ以外に稼げそうなものも思いつかないため、とりあえずはそうやってちまちまと稼ぎ続けていた。
そうして、コンクールに出ては少しずつ賞品や奨学金を貯め、空いた時間にはプログラミングの本を読み進める日々が続いた。
もちろん、その間にも学校生活は普通に進んでいく。
そうしているうちに季節は巡り、冬が終わり、雪も少しずつ溶け始め、俺たちはついに2年生になった。
「はじめ君、今年も同じクラスだね」
「そうだね、よかったよかった」
そう言って陽芽は俺の腕に抱きつく。
今日は始業式、クラス替えが行われるため、名簿を二人で見に来ていた。どうやら俺達は今回も同じクラスらしい。
時間が経つ事に陽芽のスキンシップは多少落ち着いて来てはいるが、それでも俺から離れようとは一切しない。クラスが違ったらどうなっていたことやら。
「…………」
そして、廊下の影からこちらを伺っている女の子が一人。
……悠莉だ。
悠莉はあの時ちょっかいをかけてきたっきり俺達をからかったりはしてこなくなった。
しかし、俺達への関心は何故かある様で、1年生のうちはこうやってコソコソと俺達の様子を伺ったりしてきている。
名簿を見ると悠莉の名前もあり、どうやら俺達3人はまた同じクラスになったようだ。
「……悠莉、何やってるのさ」
「どわぁっ!?」
《隠密》の力を使えば、追尾されていたところでその道のプロでも無い限りは追尾を撒き、そのうえで背後を取ることくらい容易だ。
今回はその力を使って悠莉の背後に周り突然声をかけてみた。
「な、なんでもない!」
そう言って悠莉はそそくさと教室へ逃げていく。
最初のうちは俺が悠莉を脅したからその復讐をするために俺達のことをつけているのかと思っていたが、どうやら違うようで、おそらくは友達になりたいとかそういう感じなんだろう。
だからこそこうやって話しかけてあげているのだが、一向に仲良くなれる気配は無い。
…………まぁ、反応が面白くてちょっといたずらしているからって可能性もあるかもしれないけどな。
教室に入り、席が決まっている為、その席に座る。
出席番号的にやはり前に陽芽、後ろに悠莉といった席順になっており、先程逃げた悠莉が強制的に俺のすぐ側に来ることになってしまい、気まずそうにしている。
出来る限りこっちを見ないようにする為か、隣の席にいる子に話し掛けて俺の方を見ないようにする徹底っぷりだ。
ま、別にいいけど。
しばらくすると教室に先生が入ってくる。去年とは違う人だ。
今日は自己紹介等が中心で、授業はしないらしい。
去年も似たようなことをやったな、と少し懐かしく感じる。
一年前はまだ学校というもの自体に慣れていなかったが、今ではすっかり日常の一部だ。
だが、2年生もはっきり言ってやる事は変わらない。
方針が決まっている以上、特別何かをすることもないだろう。
検証も殆ど済んでしまったし、あとはパソコンを買えるようになるまでコツコツと努力を続けるだけだ。
そう思いながら2年生も俺は過ごしていたのだが、意外なタイミングで計画を立て直さなければいけなくなってしまった。
「…………これは、明らかにおかしいよな」
夏になり、水泳の授業が始まった日。
俺はプールの中、水中でそう呟いた。




