42話 収穫
北海道行きの便に乗りながら、今回の事について思案する。
今回、俺は完全に敗北した。スキルなどの理由もあり、技量だけでいえばどう考えても俺が勝っているのに関わらずだ。
だが、考えて見ればこの世界の人間がスキルを持っていないと確定した訳ではない。
この世界ではステータスは見れない。だが、だからといってスキルが無いとは限らないのだ。
そう考えれば俺が負けた理由も考えられる。
巧はもしかしたら俺よりも高レベルのスキルを所持していたという可能性だ。
それなら俺が負けたということに納得はいく。
だが、それ以外にも可能性はある。
スキルに由来しない巧由来の能力が俺よりも高かったかだ。
前世での技術と言うのはスキルによるものに加え、その人間がもとより持っている能力を足したものだ。
その為、スキルがあったとしても、元々の能力があまりにも酷い場合は一般人よりも技量が低かったりもした。
まぁ、それが何とかなるように生まれて直ぐに測定をおこなっていたのだが、逆の事もある。
スキルが無いとしても元の人間由来のスキルが異常なまでに高ければ成り上がれる事もある。
考えて見れば、この世界にスキルが無いと考えるのもおかしな話だ。
スキルが無ければこの世界が前世と同じレベルの技術力を持っていることに説明がつかない。
説明をつけるとすれば、この世界にスキルなる物はないが、前世よりも人間由来の技量が高いとかだろうか?
いや、かなり有り得るな。
ともかく、今回の件で俺はとある事に気が付いた。
そう、俺が元来才能の無いレベルをあげたところで秀才になる事はできても天才になるのは難しいということだ。
確かに更にレベルをあげれば勝てる可能性はある。
俺は毎日スキルを手に入れられるが、スキルはかなりの数があり、その全てを天才達に勝てるレベルまでレベルをあげる事が出来るかと言われればかなり厳しいだろう。
俺が将来大金を稼ぐ為にはその業界で上位程度では足りない。
最上位、1位でなくてはならない。
そうなれば俺がやらなければいけないことは自ずと定まってくる。
取捨選択だ。
全てを伸ばそうとするから中途半端になる。ならば、必要なものだけを選べばいい。
今までは新しいスキルを手に入れる時はあげても大丈夫そうなものは満遍なくレベルをあげるようにしていた。
だが、これからは天才達に打ち勝てるように絞って上げていくべきだ。
そして、俺はその天才達を雇う立場に立つんだ。
……今回の収穫で一番大きいのは、その天才と接触出来た事かもしれない。
「……九州か」
友達になろうと言われたが、流石に家の距離がかなり離れている。
どうやら、巧は九州に住んでいるようだ。
距離が離れすぎているため、頻繁に会うことはできないが、コンクールなどに出ていれば偶に会うことになるだろう。
連絡先もとはいっても、当然ながら俺も巧も携帯電話なんて持っていないため、家の電話番号だ。
巧は確実に天才だ。あの才能に年齢を重ねる事によって技術が追いつけば日本に収まらないレベルに大成するかもしれない。
今のうちにそんな人材とコネが作れたというのが一番の収穫かもしれない。
ただ、コネだけを持っているだけでは活かしきれない。
それを使いこなすだけの能力が俺にも必要だ。
「俺も頑張らなきゃなぁ」
このコンクールに出ることを決めたその原因であるプログラミングの勉強を頑張る事が、今の俺にとって最優先だろう。
必要なスキルでいえば《器用》《記憶》《創造》《知能》《言語術》《算術》《学習》《集中》辺だろう。
これ以外でもまだ所得していないスキルで必要なものが出てくるかもしれない。
ま、とにかくお勉強と並行してお金稼ぎをしようって事だな。
今回のコンクールでは奨学金30万円を獲得するはずが、10万円まで落ち込んでしまった。
あと何個かのコンクールを優勝すればパソコンにも届くと思っていたのがだ、そう甘くもないようだ。
それに関しては今回で思い知った。
だが、コンクールは何個もある。絵画以外にもお金が得られる物は探せばあるはずだ。
優勝ができなくとも、数を打てば何とかパソコンまで届くはずだ。
何せ、俺は無数のスキルがある。
天才には勝てなくとも凡夫には簡単に勝ててしまうからな。
そう考えると、今回の敗北もそこまで悪いものではなかったのかもしれない。
俺より上がいると知れたし、これから何を伸ばすべきなのかも少し見えてきた。
なら、あとはやるだけだ。
「まずは、パソコンだな」
窓の外に広がる大空を眺めながら、俺は改めてそう決意した。




