4話 俺だけのステータス
ステータスが存在しない。そう考えれば今までのことは全て説明がつく。
なにも元の世界と全く同じ世界に生まれ変わったとは限らない。生まれ変わりなどという非現実的な出来事が起こってるわけだから、この世界が元の世界と似た全く別の世界だったとしても何もおかしくはない。
もし、この考えが全て正しいのであれば、それは喜ばしいことであると同時に不安材料が生まれることでもある。
ステータスがあるからこそ前世は冷たい世界だったように感じる。それがもっと暖かな世界になってくれたのだとしたらそれは良い事だ。
しかし、もしも前世とこの世界が全く別の世界なのだとしたら前世の記憶があるせいで生きにくくなってしまう可能性だってある。
感情の乱高下に赤ちゃんのこの体が自動的に鳴き声をあげると、お母さんが甲斐甲斐しく俺をあやしてくれる。
少々申し訳ないと思いつつも、お母さんの存在は赤ちゃんにとっては絶大であり、少しあやして貰えるだけでごちゃごちゃとした感情がみるみるうちにまとまっていく。
まぁ、そんなこと赤ちゃんである今のうちに深く考えた所でできることは無い。精々周りの声に耳を傾けたり周囲をできる限り見渡して情報を収集するくらいしかできないだろう。
ただ、そんな中でも唯一今すぐ確かめられることはある。
それは、ステータスを見るということだ。
もしかしたらステータスというものそのものが無くなっているかもしれない以上確認する必要がある。
つい先程見ないようにしようと決めたところだが、状況がここまで変わってしまえば見るしか無くなってくるだろう。
緊張でまた泣き出してしまいそうになりつつも俺は前世で何度も行った作業を行う。
(ステータス)
頭の中でそう唱えると、目の前には見慣れた青いホログラムが浮かび上がってきた。
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紅月 一
身体:3
知能:76
精神:45
魅力:135
運 :120
【スキル】
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ステータスが表示されてしまった事に少々落胆しつつも、その内容を見てしまったことにより俺は硬直してしまった。
全てがおかしい訳ではない。身体と魅力、運の数値は何もおかしくはない。普通だ。
しかし、おかしいのは知能と精神の数値だ。
成人のステータス平均がだいたい100くらいであるため、この数値がものすごく高い訳では無い。むしろそれと比べれば低い。
しかし、基本的に赤ちゃんならそこの数値はどれだけ高くても一桁を逸することは無い。
そのため、赤ちゃんでこの数値は明らかにおかしい。
……恐らく、記憶を保持した状態で生まれ変わっている影響なのだろうが、それがまさかこんな形で反映されているとは。
成人と比べると低いというのは単に脳が未熟であったり、身体が不安定なためそれが精神にも及ぶからなのだろう。
スキルが無いのは少々残念だが、まぁ、それに関してはある方が珍しいのだから、そこまで落ち込むことでもないだろう。
参考までに前世のステータスを見るとこんな感じだ。
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新家 勤
身体:97
知能:109
精神:135
魅力:90
運 :95
【スキル】
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かなり平均的な成人男性な感じのステータスだ。
これに比べると大人になっても変わることの少ない魅力や運のステータスが高くなっているため、かなり上出来だと言えるだろう。
だいたい人間の最高峰と言える数値は200くらいであるから、そんな中で魅力は今見ればなかなかいい方だ。学校でちょっとモテる程度の男子にはなれるかもしれない。
さて、ステータスは悪いものでは無かった訳だが、こんな衝撃的な内容になってしまった以上、もしステータスの測定が行われた場合大騒ぎになるだろう。
研究所とかに連れてかれて色々面倒なことになってしまうかもしれない。
これに関してはもう祈るしかないな……。
一旦一段落したところで……まぁ、少し大きく息を吐く程度の動きだが、ため息をつくと、お母さんはその小さな動きに反応して心配そうに俺を抱き上げる。
ごめんよ、別にどこか悪い訳では無いんだ、ただちょっと癖で…………。
前世では苦労の耐えない生活を繰り返していた訳で、こういうことが癖になってしまったのだ。
そんな前世の嫌な思い出を振り返っていると、ふと1つの前世の習慣を思い出した。
一日一善。
これだけは欠かさずおこなってきた訳だが、赤ちゃんになってはそんなことも満足にはできそうにない。
どうしたものかなどと考えていると、お母さんは俺の事をひょいと抱き上げた。
「この子、すっごい険しい表情してるけど……ま、まさかどこか悪いとか!? ど、どうしよう、ナースコール……?」
あぁ、まずいまずい、本格的にお母さんが不安になり始めてしまった。どうにか安心させなくては。
俺はできる限りの笑みを浮かべながらお母さんに手を伸ばす。とはいえ特に身体が上手く動いている訳ではないため、腕をフラフラと動かしているだけではあるが、それでもお母さんは多少安心してくれたようだ。
「……ふふっ、大丈夫って事? ママを安心させてくれようとしてるんだね…………けど、やっぱり不安だからナースコールは押すね!」
「あぅ」
突然のナースコールに飛んできた看護師さんに大丈夫だと宥められやっと心から安心したお母さんは俺に向かって満面の笑みを浮かべる。
抱き上げられることによってやっと良く見えたその顔を見て、不意に思ってしまった。
…………この顔を曇らせてはいけない。
たとえ身体が動かなくて何も出来ないとしても、この人に精一杯の愛情を持って接する。それが今の俺にできる一番の善行なのだと。
俺は頑張って作った笑みでは無く、心からの、愛情出でた笑みを浮かべ、そのまま眠りについた。
その瞬間、開きっぱなしのホログラムの画面には1つの変化が生まれていた。
【スキル】
《好感度補正LV1》




