31話 歴史I
数日経ち、俺は無事図書室から目当ての本数冊を借りてくる事に成功した。
小学生でこういった本に興味がある子は少ないのか、目当ての本が先に借りられたりはしていなかった。
借りてきたのは、日本の近現代史について書かれた本が中心だ。
とはいっても、当然ながら大学の教科書みたいな専門書ではない。小学生向けに簡単な言葉でまとめられた歴史の本や、写真が多めに載っている資料集、それと少し難しめの歴史事典などだ。
まぁ、この程度のものがあれば、前世との歴史の相違点などはある程度知ることができる。
家に帰り、とりあえず日本の歴史が古代から書かれているような教科書に近いものを読んでみた。
違いでいえばステータスが存在していないくらいでそれ以外の歴史は殆ど変わらなかった…………世界大戦以前までは。
まずは前世の記憶の確認をしておこう。
前世での歴史ではまず、第二次世界大戦に日本は負け、連合国による占領を受けることになった。
その後、戦争によってボロボロになった日本は復興を始める。そして、その途中に日本の科学者の一人がステータスを測定することのできる機械を発明した事により、日本の復興は一気に進み、一時期はアメリカに迫る世界二位の大国となった。
その機械が発明される以前はステータスを自分で見ることは出来たものの、他者がそれを客観的に見ることは出来なかった。
そのため、本人が嘘をつくことによって自分には高いステータスやスキルがあると騙し、高いポジションへと至ったり、逆に本当にそれらを持っている者が少しの失敗でその力を疑われ、不当な扱いを受けることもあった。
しかし、機械の発明によりステータスを測定できるようになると、そういった非効率的な事態は極めて起こりにくくなった。
日本はその技術をある程度の時期まで独占し、異常なまでのスピードでの復興を成し遂げ、その後はステータス測定の技術を外交カードとして保持し、その技術が世界に浸透した現代でも超大国の一国として君臨する事になっていた。
しかし、この歴史書に書かれている内容は、俺が知っている歴史とは全くもって違うものになっていた。
まず、初めに違ったのは日本の降伏の時期だ。
この世界の日本は前世よりも数ヶ月遅く降伏したらしい。その理由は恐らくステータスが存在しないからとかいう理由では無く、前世の日本でも起こりえた事がこの世界では本当に起こってしまった……という事だろう。
たかが数ヶ月といえど激しい戦闘が続く世界大戦でのその時間は多くの悲劇を産んだ。
まず、俺の世界では起こらなかったはずの本土決戦が行われ、日本の領土の多くが焦土と化した。
日本は自爆攻撃などを何度も仕掛け、米軍に多大な被害を出し、それに呼応するようにアメリカからの攻撃も激化し、双方の死者数は俺が知るものよりも遥かに大人数になってしまっていた。
更に、その数ヶ月で対日参戦していたソ連軍は、俺の知っている歴史よりも遥かに深く日本領へと進攻していた。
前世でもソ連は終戦間際に対日参戦し、満州や南樺太、千島列島などへ侵攻している。しかし、この世界では日本が降伏するまでに更に時間がかかったことで、その進軍を止めるものがなくなってしまったらしい。
ソ連軍は樺太を南下し、千島列島を占領。そして、ついには北海道への上陸まで開始した。
「……マジかよ」
思わず声が漏れる。
そこから先の記述を読む速度が自然と上がっていった。
北海道北部への上陸から始まったソ連軍の進攻は、日本軍の激しい抵抗を受けながらも徐々に南下。最終的に日本が降伏した時点では北海道のかなりの地域がソ連軍の占領下に置かれていたという。
だが、そうなると今俺が居る場所はどうして日本の領土となっているのだろうか?
今まさに俺がこの歴史書を読んでいるこの場所こそ北海道なのだ。
まさかソ連が一度占領した北海道を、そのまま何事もなく日本へ返したとも思えない。
俺は先を急ぐようにページをめくった。
そして、その疑問の答えはすぐに見つかった。
「……やっぱり、そうなるよな」
戦後、北海道を占領していたソ連は、その地域を自らの勢力圏として維持しようとした。
一方でアメリカも、日本列島全体を一つの国家として統治することを望んでいたらしく、当然ながら両国の間では激しい対立が起こった。
しかし、つい先ほどまで世界規模の戦争をしていたというのに、今度はアメリカとソ連が直接戦争を始める訳にもいかない。
そのため最終的には、既に占領していた地域をそれぞれの陣営が管理する形で落ち着いたらしい。
前世で言うところのドイツや朝鮮半島に近い状況だ。
北海道以北の日本領土はソ連の影響下に、それ以外の地域はアメリカを中心とした西側諸国の影響下に置かれることになった。
そして数年後、北海道には社会主義国家が成立した。
「それが、日本人民共和国……か」
今回と次回、長引けばその次までが世界観解説回になります! こういう情報は小出しにするより一気に出した方がいいと思いまして、こういう形になりました!




