29話 孤児院
尾行がバレたところで何があるという訳でも無いのだが、何となくこのままバレずに尾行しきってやろうという男心が働いてしまったせいで今俺は周囲からかなり後方を歩いている。
陽芽もいるため、本当にこれくらい距離をとっていなければバレてしまうのだ。
陽芽は別に騒がしくするタイプでもないとはいえ子供だ。尾行するために隠れたりはうまくできないし、なんなら尾行すること自体伝えてないからな。
とはいえ俺には《視力》のスキルや《隠密》のスキルもあるため、後方から尾行するなど造作もないことだ。
演技力もあってか陽芽も俺の行動を不審に思うことも無い。我ながら完璧な尾行だ。
そんな調子で歩くこと10数分。俺の予想では、家族集団というのは一種の互助的な集まりであり、その地区などの子供たちが親しくして一緒に登校をするなどしているのだと思っていた。
しかし、尾行することによって、その予想が間違えていたという事が発覚した。
「…………全員、同じ家に入ったな」
そう、十数分歩き、解散するでもなくその集団は同じ家に入っていったのだ。
まさか、本当に家族だとでも言うのだろうか?
色々な考察が頭を巡るが、どれも正解だとは思えない。
「……ちょっと近くまで行ってみるか」
「ん」
陽芽の返事を聞き、俺達は少し時間を置いてからその建物へと近づいていく。
遠目から見た時は普通の大きな一軒家に見えていたが、近づいてみると少し印象が違った。まず、とにかくデカい。
二階建てなのは周囲の家と変わらないが、横幅が明らかに普通の住宅ではない。
そして決定的だったのは、入口の横に取り付けられていた看板だった。
「……若葉孤児院?」
そこには大きな文字でそう書かれていた。
そうか、孤児院か……それならある程度のことは合点が行く。
そこで過ごしている仲間たちを家族と呼ぶのも、そこに暮らしている子供たち十数人で登校するのもおかしくはない。
だが、おかしな点もいくつかある。
まず、人数がおかしい。
学校に孤児院から来ている子供が十数人居るというのは少し多いかもしれないがおかしなことではない。
地域によっては何もおかしくはない。
しかし、俺がちらっと見ているだけでもそんなような集団はだいたい5団くらいは居た。下校時間が上級生とでは違うため、同じだけいるとすればその倍はいてもおかしくない計算だ。
人数にすると100人を超えるだろう。
「……流石に多すぎないか?」
いくら孤児院が近くにある地域とはいえ、一つの小学校に百人近い孤児が通っているというのは、俺の感覚では明らかに異常だ。
この学校の生徒数は少し多めに感じるが、それでも1学年に60人程度、全学年を合わせても400人は超えない。
100人という数字が正しいのなら、全校生徒の中でもかなりの割合を占めることになる。
それに、この若葉孤児院だけで全員を受け入れているとも思えない。
目の前の建物は確かに大きいが、それでも百人以上の子供が生活できるほどの広さには見えなかった。
「なら、他にも何個も施設があるのが自然……か」
俺が見た集団は全員がこの孤児院へ向かって帰っていた訳ではなく、色んな方向へと帰っていた。
施設が何個もあるならそれには説明がつくだろう。
だが、施設が何個もあるということ自体不自然だ。
俺はもう一度『若葉孤児院』と書かれた看板を見る。
考えてみれば、この世界に生まれてから前世との違いらしい違いをほとんど見つけられていなかった。
細かな違いこそあれど大枠では前世の日本と変わらない。だからこそ、俺はいつの間にかほとんど同じ世界なのではないかと考え始めていた。
だが……本当にそうなのだろうか?
もし孤児院に暮らす子供の数が前世より遥かに多いのなら、それは単なる文化の違いでは済まない。
何か、そうなるだけの理由があるはずだ。
「……調べる必要があるな」
今まではあたりをつけることすら出来なかった図書館での調べ物だったが、今回の尾行によって明確な指標を得ることができた。
孤児院、またそれに付随して、その孤児院が大量に存在している理由……つまり歴史などを調べればもしかしたら前世と違う所を見つけられるかもしれない。
「……はじめくん? どうしたの?」
「ん? あぁ、いや、ちょっと考え事してた」
「ふーん……帰ろ?」
「う、うん」
容赦の無い陽芽の一言にたじろぎながらも、時間が多くない事も事実であり、俺は陽芽に手を引かれる形で帰路についた。
結局、今日分かった事は多くない。
むしろ新たな謎が増えたばかりだった。
だが、ようやく掴んだ手掛かりだ。この違和感の先に何があるのか、少し楽しみになってきた。
ちなみに、ブクマや評価が来たらリアルでガッツポーズしてます。
寝転がりながらスマホいじってるせいでガッツポーズした時に思いっきり顔にスマホ落としたことあります。




