28話 尾行
入学してからある程度の時間が経ち、俺が学校に慣れた……というかお母さんが息子の1人での外出に慣れ始めた頃、俺はとある作戦を決行することにした。
それは、あの家族集団の真相に迫るため、彼らの家について行くという事だ。
俺はほぼ毎日習い事がある為殆どの日はお母さんに送り迎えしてもらっている。
しかし、1日だけ時間の都合上、一度家に帰ることのできる日がある。
だからその日は俺一人で家に帰る事ができるのだ。
そうなれば、多少家に帰るのが遅くなっても習い事が始まる前に家に帰ればそこまで怒られることもないだろう。
少し心配させてしまう可能性もあるが、こればっかりは目を瞑って欲しい。
そんな訳で作戦を決行することにした訳だが、特に難しいことは無い。クラスメイトが含まれる家族集団に俺もついて行くと言うだけだ。
距離に関しては前もって聞いておき、10分もかからない場所にあり、その上俺の家と学校の間くらいの場所にあるとの事なので、それならばなんの問題も無い。
帰りの会が終わると、俺はいつものようにランドセルを背負い、例の家族集団にいるクラスメイトの元へ向かった。
「ねえ、今日一緒に帰ってもいい?」
「いいよ〜」
拍子抜けするほどあっさりと許可が出た。
まあ、別に家に遊びに行かせてくれと言った訳ではない。途中まで一緒に帰るだけなのだから、断られる理由もない。
これまでの学校生活ではしっかりと優等生ムーブをすると同時に交友も忘れない事によって周囲からは嫌われないようにもしているから、なんか嫌だからハブるとかも無いからな。
許可が出た為、その集団について行こうとするが、後ろからランドセルを捕まれ動きを止められる。
「はじめくん……どこ行くの?」
「あぁ、今日はみんなと一緒に帰ろうと思って……」
「…………陽芽とは一緒に帰ってくれないの?」
「あー……」
陽芽と一緒に帰るのは日常となっていたからか、この計画に陽芽はなんの違和感も無く一緒に行くというていで計画を立てていた。
だから、てっきり普通に着いてくるのもだと思っていたのだが…………。
「陽芽も一緒に帰ろうと思ってたんだけど……」
「2人がいい」
「……そっかー」
困ったな、このままここで一悶着していればあの家族集団はさっさと帰ってしまうだろう。
そうなれば検証ができるのはまた1週間後。その時もこの調子だとあの家族集団と一緒に帰るのは難しいかもしれない。
陽芽が居るせいで……と考えてしまうのもなんだか嫌だし、何とかついて行く方法を考えなければ…………。
そう思い色々考えてみるが、いい案は浮かばない。
陽芽はその間も俺のランドセルの肩ベルトと腕を一緒に抱くことによって俺から一切離れないようにしている。
「はじめ、まだ?」
「あ、ちょっと待って!」
声を掛けられてそちらを見ると、家族集団は既に帰る準備を終え、教室の出口へ向かっていた。
「もう時間だから帰るからね〜」
「あっ……」
そういいながら家族集団は雑談をしながら教室を出ていってしまう。
まずい、このまま見失ってしまえばこの計画は失敗。1週間後も同じようになってしまう可能性が高い。
「陽芽、とりあえず帰ろうか」
「二人で……?」
「うん、二人で帰ろう」
俺が歩き出すと、陽芽もランドセルと腕を抱えたまま一緒についてくる。
廊下に出て少し急ぎ足で進むと、前方に先ほどの家族集団の姿が見えた。
よし、まだいるな。
そのまま少し歩く速度を上げ、追いつこうとして、ふと足を止める。
…………いや、別に追いつく必要なくないか?
別に彼らと仲良く話すのが目的というわけじゃあない。目的はただの調査だ。それなのに、彼らに一々許可をとって同行させてもらう必要なんてあるのだろうか?
別に尾行するのはグレーゾーンではあるものの、直ちに犯罪になる訳ではない。というか、帰り道も一緒なのだから普通に帰ってましたでなんとかなる。
家に入ったりしたい場合はちゃんと仲良くなったり許可を取る必要があるが、今回はまずそんな時間は無いし、普通に外観を見て少し観察したい程度の目的しかない。
だったらこのまま普通に尾行する方が楽なのではないか……?
そう考えると、一気に気が楽になった。
俺は陽芽に「今日は少し遠回りしよう」とだけ伝え、家族集団とは距離を空けたまま後を追う。
陽芽は二人で帰れると分かったからか特に文句も言わず、俺の腕にくっついたまま上機嫌そうにしている。
こうして、当初の予定とは少し違う形にはなったものの、計画は敢行される事になった。
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