25話 調子乗りました
それから数日間、同級生に聞き込みを続けてみるも、やはりその家族集団について有益な情報を得られることは出来なかった。
だが、少なくとも前世とは違うところを見つけたのだから、これについて詳しく探ることは間違いなく必須だ。
ただ、まだ今は1年生だ、まだまだ時間はあるし焦る必要は無い。今はこの小学校生活を楽しむとしよう。
そんなわけで、一旦は情報収集については積極的に動くことを控え、普通の小学一年生として過ごすことにした。
とは言っても、別に平凡な子供になるつもりは一切ない。これから本格的に授業が始まっていくだろうし、いっちょ暴れてやろうじゃないか。
まずは算数だ。
始まりは一桁の足し算からで、謎の算数おはじきのようなものを使わされた。周りのみんなが苦戦したり、おはじきを咥えている間に俺はしっかりと課題に取り組んでおいた。
「うん、よく出来ました!」
先生は素早く課題を終わらせた俺を褒め、俺を見本にして周りの子にも教えていた。
うむ、嬉しいけど何も驚かれていないな。出来れば「な、何なのこの子、凄すぎる!?」みたいな反応が欲しい。
よし、もっと暴れてやるぞ。
次は国語だ。ひらがなの練習や、自分の名前を書く所からはじまったのだが、流石にその程度が出来ないはずもなく、サラサラっとワークなどに字を書いてみせた。
「す、すごい……私より上手いんじゃ……」
ふふん、すごいでしょ。
それにしても、《描画》のスキルがあるからか、ガチで綺麗な時になってしまった。ここまで来ると少しやりすぎかもしれんな。ハッハッハ。
ただ、このくらい褒められた方が楽しい。
本当なら力があるのにそれを発揮できない生活が続いていたのもあって、俺は少しずつ調子に乗り始めていた。
図工では…………。
「な、なにこれ、すごい芸術的なんだけど……いやいや、まさか……適当に書いただけ……よね?」
《描画》のスキルがあるため、俺の絵はかなりハイクオリティなものに仕上がっており、そのクオリティが故に逆に適当に書いたと思われていた。
こんなの俺でも描けると言われるアート作品みたいなものだな。
また、音楽では…………。
「す、すごい、楽譜通りに弾けてる……どころか声量まで完璧にコントロール出来てる!? 記号が読めてるってこと!?」
楽器を使うスキルは持ち合わせていなかったため、見ただけで楽譜が読めるとかはなかったが、その代わりに《器用》があるおかげで楽器はしっかりと使うことができ、また、《声術》のスキルがあるおかげで息の使い方は完璧にすることができた。
また、体育では…………。
「ぜ、全部A…………可愛らしいし、勉強も凄いできるから運動は苦手かと思ってたのに…………」
流石に俺の身体能力では中学生とかが出すような点数を出してしまうため何とかセーブしたが、それでもしっかりと全ての数値が1年生のAランクに達するようにしておいた。
もちろん、50m走などもぶっちぎり1位だ。
子供のうちは運動が出来る子がクラスカーストで上位に行けるというのは常識なので、これはマストだ。
そんな感じで、俺は小学校に入って早々、勉強も運動も芸術も出来る万能優等生ポジションを確立することに成功した。
何をやっても褒められ、クラスのみんなからも憧れられる。まぁ、はっきりいって最高でしたね!
え? なに? 大人気ないって? そりゃ……子供だもん、小学一年生に大人気ないなんて言う人居ませんよガハハ。
そうやって、最初の数週間は非常に楽しく過ごさせて頂きました。
…………そう、最初の数週間は。
「……はじめ! 迎えに来たよ!」
「…………えっと、今日はなんだっけ?」
「今日はそろばんよ!」
「…………分かった」
ランドセルを背負い直しながら、俺は小さくため息をついた。
そう、俺が調子に乗って色々な才能を見せつけた結果、お母さんはとんでもない行動に出たのだ。
「こんなに何でも出来るなら、色々やらせてあげた方がいいよね!」
そんな純粋な善意のもと、俺の放課後は習い事で埋め尽くされた。
何とか交渉して運動系のものは外させて貰ったが、それでも週6回、みっちりと習い事をさせられる羽目になってしまった。
お母さん……それ令和だと虐待って言われてもおかしくないっすよ…………。
まぁ、自分の蒔いた種だ、こうなってしまえば文句も言えず、俺は習い事を渋々ちゃんと受けることにした。
とはいえ、習い事だって無益な訳では無い。色々な事に触れることによって将来の未来は大きく開かれる訳だし、精神が大人の俺はその有益さもバッチリわかっている。
放課後の情報収集時間も減ってしまうわけだが……まぁ、今はしっかりと習い事に行くことにしよう。




