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一日一善を繰り返していたら人生が変わった件 〜現代日本に赤ちゃんとして生まれ変わったら、善い行いをするとスキルが獲得できるようになった〜  作者: 黒飛清兎
乳幼児編

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15/33

15話 結婚?



 受付を通ると、俺達は幼稚園の真ん中にある広間のような場所に通された。

 そこにはもう既に入園式を執り行うために沢山の園児とその保護者が集められていた。

 俺たちも同じように受付にて渡された座席表を見ながら自分たちに割与えられた席へ座り、待機する。

 俺たちが入ってきた時にはまばらに埋まっていた座席だったが、それも式が始まる数分前にはほとんどの席がきっちりと埋まっていた。

 当然俺の隣の席も埋まったのだが……1つ問題があったを


「…………じー」

「…………」


 ……隣の席の女の子がさっきからずっと俺の事を見てくるのだ。

 凝視しているというのが正しいのだろうか?

 静かにちょこんと座席に一人で座っているのは3歳児にしてはかなりお利口さんな部類には見えるが、それでも俺の事を瞬きもほとんどせずに見つめ続けるなんてのは少し奇妙に映る。

 俺、何かやっちゃいました?

 演技もしっかりしていたし、そこまで怪しまれるような事もしていないと思うのだが…………?


 そんな事を思いながらも時間は経っていき、遂に入園式は始まった。

 とはいえ、入園式では園長先生が何か喋ったりはしているものの、それのほとんどは園児に向けられたものでは無いため、話半分で聞き流していた。

 そんな事よりも隣の女の子だ。

 式が始まれば違う方向を向いてくれるかと思っていたが、そんな様子は一切なく、式が始まってからも変わらず俺の方を見つめてくる。

 俺はできる限り目が合わないように気をつけて、園長先生の話を聞いている振りをしながら女の子の様子を伺っていた。


 ま、まぁ、見られているだけだ、これ以上何もされないのであれば何も問題は無い。

 何かあったとしてもこれから同じ幼稚園に通うのだから、何とかその時に話し合いでもすれば大丈夫だろう。

 ……と、思っていたのだが。


「……んしょ」

「…………?」


 ん? なぜ降りた?

 女の子は自分の席を降り、トコトコとこれの方向へと歩いてくる。

 そして……俺の前で止まった。


「…………じっ」


 な、何故にそんな事を……?

 流石に目の前に来られては無視するわけにもいかず、仕方がないので話しかけることにした。


「な、なに?」

「…………じーーっ」


 俺の問に対して返答はない。しかし、女の子は俺を凝視するのを辞めず、なんなら少しづつ俺に近づいてきている。

 こ、怖いんですけど? 何なんだこの子は?

 俺がどうしようかと困っていると、女の子は何かを決意したかのように大きく息を吸い、そして……俺の方へ向かって飛び込んできた。


「…………えいっ」

「ちょ、うぇっ!?」


 殴られでもするのかと思い思わず顔を背けるが、痛みのようなものは一向に感じられない。

 それどころか、どこか温かな感触に包まれているような……?


「…………?」


 不思議思い、恐る恐る顔を戻してみる。

 …………すると、そこには俺の胸元に顔を埋めながら俺に抱きついてきている女の子の姿があった。


 …………うん、なんで?

 なんで俺はいきなり抱きつかれてるんだ?

 えっと、俺たちって初対面だよね? 基本的に俺は外に出たりしてないから、外で会ったとかの可能性も限りなく少ないはずだ。

 一旦避けてもらおうにも今俺は椅子の上だ。

 園児用の椅子な為、そこまで高くは無いが、下手に退かして頭でも打たれでもされては困る。

 戸惑いながらも、俺は会話によって避けてもらうために、対話を試みる。

 

「よ、避けて?」

「…………や」

「怒られるよ?」

「…………や!」


 俺がそういう度に女の子は俺に強く抱きついてくる。

 くっ、もう俺にはどうにもできないのか!?

 かくなる上は……大人に何とかしてもらおう!

 俺は横に座っているお母さんに助けを求めるべく、そちらへ顔を向ける。

 …………しかし、そこに待っていたのは感動して口元を抑えながら目を輝かせているお母さんの姿だった。


「……は、はじめくん……もうお友達作っちゃうなんて……やっぱり天才…………っ!」


 ちぃっ! ダメだこれは、助けを求められるテンションじゃあない!

 みこちゃんは…………ダメだ! 真面目に園長先生の話を聞いていてこっちを見ていない! あの話真面目に聞いてる人居たんだ!?

 と、なればもう頼れる大人はこの子の親しか居ない!

 そう思いながら最後の望みをかけて反対側に居るであろう女の子の親の方向を向く。

 …………しかし、そこに居たのは大号泣するイケメンパパだった。


「ぐぅっっ! 陽芽ちゃん、もう男作ってくるなんて…………流石パパの子だっ! だ、だけど早すぎないかぁっ!?」


 そっちもかよ!?

 くっ、右を見ても左を見ても、まともに助けてくれそうな大人が一人もいないじゃないか!

 ……もういい、こうなったら式が終わるまでこのまま耐えてやる。


「…………」

「えへへ」


 俺が諦めて前を向くと、胸元の女の子は満足そうに笑った。

 そして、小さな声で一言。


「ぼくと、けっこんしよ?」


 入園初日、俺は早くも、とんでもない子に目をつけられてしまったらしい。

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