11話 はいはい解禁!
育児本を読むことができたことによって、俺のこれからやる事のビジョンがかなり明確になった。
…………まずは、ここからあと数ヶ月はだらだらしますっ!
ま、そこまでは割と元々考えていたことだが、そこからが重要だ。
生後5ヶ月。
早ければこの位の頃にはもう出来る子であればはいはいをしているらしい。つまり、これくらいならある程度はいはいできても不自然ではない。
そのうえ、お母さんは育児初心者だ、多少動きすぎたところでそれが異常かどうか分からないはずだ
はいはいをするという節目のイベントは慎重にいかなければいけないが、それ以降は多少やりすぎてもなんとかなるだろう。
そうと決まれば、これからは多少《身体》のスキルもレベルアップさせておいた方が良いかもしれない。
いざ動けるとなった時に出来ることを広げる為にもこれは必要だ。
とんでもなく強化してしまわないように気をつければあとは演技で乗り切れる。
そうと決まったらあとは実行あるのみだ。
スキルのレベルアップ条件は相手を思っての行動……恐らくは誰かの為になる行為だろうということはわかっているが、それをコントロールして手に入れるというのは難しい。
どうやらその判定は一日に1回しか無いようだし、慎重に確実にやっていこう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
2ヶ月はあっという間に過ぎ去った。
現在は生後5ヶ月……スキルレベルを見るにぴったしその年齢……いや、月齢だ。
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紅月 一
身体:20
知能:82
精神:55
魅力:146
運 :120
【スキル】
《好感度補正LV28》《視力LV27》《聴力LV26》《身体LV12》《癒しLV40》《夜目LV5》《魅力LV11》《器用LV1》
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まぁ、見ての通り、身体はちょっと伸ばしすぎたかなって感じですはい。
多分今なら頑張れば立ち上がれてしまうのではないかという程までステータスが伸びてしまいました。
ただ、ギリ演技で何とか持ちこたえられそうなレベルではあるのでセーフだ。
それと、追加点で言うと《魅力》と《器用》だろう。
まず、《魅力》はステータスの名前を冠するスキルであるため、そのままその数値分ステータスが上乗せされている。
146……かなり顔が良いと言われる部類だ。
ここら辺が芸能人などになるのを進められるラインだろうな。
お次は《器用》だ。これは割とどんな職種にも使える有用なスキルだったはずだ。効果は名前の通りのシンプルなもので、器用さが上がるスキルだ。
どうして獲得できたは分からなかったが、手に入れられるのなら積極的に獲得していきたいスキルだ。
さて、スキルの紹介はこれくらいにして、メインイベントに移ろう。
今俺はちょうど生後5ヶ月、ついにはいはいができるようになったのだ!
まずは一発かまします。
少し力めばスルッと出てきてくれた。
そして、一泣きします。
「うぇぇぇん! うぇぇぇん!」
完璧だ。
我ながら随分と手慣れたものになったものだ。
生後五ヶ月も赤ちゃんをやっていれば、自分の要求に応じて泣き方を微妙に変えることくらい朝飯前である。
まぁ、お母さんがそれを完全に理解できているかどうかは分からないが、かなりの精度で当ててくる。お母さんの勘とかいうやつだろうか?
「はーい、どうしたのー?」
少しするとお母さんが部屋へ入ってきた。
「お腹空いた? それとも……」
俺を抱き上げた瞬間、お母さんの動きが止まる。
「…………あっ」
気づいたようですね。
「はじめ君、やったなぁ?」
「あぅ!」
やりました。
「もう、仕方ないなぁ」
そういいながらもお母さんは嫌な顔ひとつせずに俺のオムツを交換してくれる。
いやぁ、出さなくてもいい時に出してしまって申し訳ない。
けど、これからいいもの見せるので許してくださいな!
オムツを変え終わると、お母さんはスっと汗を拭い、俺の太ももをぷにぷにした。
お母さんは最近これにハマっているらしい。
だけど、今日は止めてもらおう、もっといいものを見せてあげるからな!
「……ぁ!」
「えっ……痛かった? ご、ごめんね!?」
いや、大丈夫! 大丈夫だからそんな泣きそうな顔をしないで!
こうなったらもうはいはいをするしかないな!
お母さんの手から抜け出し、マットの上にごろんと寝転がった俺はゆっくりとうつ伏せになる。
ここからが本番だ。
お母さん、見ていてくれよ?
うつ伏せになった状態でそのまま手を前に突き出し、地面を押し上げる。そのまま少し体が起き上がった状態で膝をまげ、そして……膝と手に力を込め………!
「……んぅ!」
1歩踏み出す!
「……え?」
お母さんが驚きの声をあげる。
まだまだいけるぞと言わんばかりに声をあげながら、1歩、また1歩とはいはいを続けていく。
「ちょ、ちょっと待って!?」
ようし、食いついた。
そこから何歩か歩みをすすめ、そこらで力尽きたように地面にベチャッと倒れ込む。
あまりスイスイ進見すぎても不自然だからな。
あくまで、今日初めてハイハイができるようになった赤ちゃん。それが俺だ。
「は、はいはい!? 今はいはいしてる!?」
正確にはまだ少しずり這いっぽい動きを演じている訳だからはいはいでは無いような気もするけど、まあ細かいことはいいでしょう。
「はじめ! もう一回! もう一回やって!」
お母さんが慌てて俺の正面へ回り込み、その場にしゃがみ込む。
「ほら、こっちおいで!」
お母さんは両手を広げ、期待の眼差しをこちらに向ける。
なるほど、そこまでされたら行くしかないな。
俺は再び腕と足に力を込める。
「そう! そうそう!」
あまり歩きすぎると不自然だが、この顔を見れるならいいかと思い歩みをすすめる。
「頑張れ! 頑張れはじめ!」
「ぁぅ!」
力いっぱい進む……演技をしてさらに進んでいき、ついにはお母さんの膝元まで辿り着いた。
「…………っ!」
次の瞬間、俺の体が持ち上げられる。
「すごい! すごいよはじめ!」
「きゃっ!」
「もうはいはいできるの!? 天才じゃん!」
いやぁ、そこまで言われると照れますな。
「どうしよう!みこちゃんに電話しないと! ……いや、まずは動画か!」
そう言って、お母さんは俺を抱えたまま慌てて部屋を出ていった。
少しすると、本当に大きめのカメラのようなものを持って戻ってくる。
「よし! もう一回やってみよう!」
お母さんはベッドの前に陣取り、完全に撮影体勢へ入った。
いや、これ以上はちょっと不自然でしょうよ、初めての子供にそんな無茶させちゃ…………。
「すごい……すごいよはじめくん!」
…………こんな期待の眼差しで見られちゃ、やめられないじゃないか。
俺はその眼差しに応えるべくもう一度はいはいする。
その度にお母さんは思いっきりはしゃぐ。
……まあ、これだけ喜んでくれるなら多少やりすぎてもいいか。
こうして俺の初はいはい披露会は、しばらく続くことになった。
そしてこの日を境に、俺はようやく堂々と家の中を動き回れるようになった。 つまり、今まで届かなかった場所にも、自分の意思で近づけるよつになったのだ。
……さて、まずはどこから調べてみようか。




