笑神へのカウントダウン!
あれから3日が過ぎており、笑神試験の1次試験が始まっていた。
天界のあちらこちらから、我こそは笑いの才能があると自負する天使たちが集まっていた。
「いつも通りやれば大丈夫だって」
笑友使は冷静に笑望使に何度も説明していた。
「そんなことしたら、合格するやんか?アホなん?自分?」
「だから、お前に笑いの才能はない!絶対に。自信を持っていつも通りやれって何度も言ってるだろ!落ちたいんだろ?」
「あ、ここか試験会場は。分かったって。ちゃんとやるから、心配すんなって」
笑望使はやれやれという表情をしながら、試験会場に入って行った。
笑友使の必死の説得もむなしく、笑望使は全く理解していなかったが、笑友使は心配はしていなかった。
「まぁ、あいつの才能だと何をやってもだめだから、大丈夫か。確実に不合格になるだろう」
「只今より、笑神試験の1次試験を開始いたします。1次試験は筆記試験です。笑いの基本を問う問題ですので気楽に解答してください。解答時間は30分です。それでは始めてください」
試験会場では1次試験の筆記試験が始まっていた。
「ふん。笑神に最も近いといわれているこの俺が瞬殺したるわ」
そう言いながら笑望使は迷うことなく解答した。
開始10分程度で何人もの天使が解答終了で退室していく中、笑望使も負けじと速攻で退出した。
「で、ちゃんと適当に解答してきたのか?」
「大丈夫や。とんだ茶番に付き合わされたけど、1次試験で不合格になるわけにはいかへん。とりあえず最終試験までは残らなあかん。俺のプライドが許さへん」
「お前、状況を理解しているのか?さっさと落ちろよ!ひとみさんのところに行けないんだぞ?」
「分かっとるわ。でも俺のプライドが許さへん。絶対に最終試験まで残るんや」
――あっ、こいつ本物だ――
笑友使が笑神試験に関して、深く考えることを辞めた瞬間だった。
「はぁ~、もう好きにしろ」
「あ、1次試験の結果発表の時間や。えーっと、番号は....あった。あったで笑友使。よし。次は2次試験やな。行ってくるわ」
そして次々と笑望使は試験に合格し、ついに最終試験までたどり着いた。
「ついに来たか。自分の才能が恐ろしい」
「お前、本当にわかっているのか?ここが最後だぞ、最後!」
「分かってる。手を抜いてすべってくるよ。あっ!そうや。ええこと思いついたわ。全力を出せばええんや」
「ん?どういうことだ?笑望使?」
「わからへんのか?笑友使?ええか、俺が本気でやったら、あのじじい共にはレベルが高過ぎて理解でけへんやろ。だから見事に不合格を勝ち取るという寸法や。今の笑神の中に爆笑神がおらん時点でたかが知れてるやん。ほな、いっちょレベルの違いを見せてくるわ~」
笑望使は自信に満ち溢れた顔をして、最終試験に入って行った。
「どこからあの自信が出てくるんだ?アイツは」
笑友使はあきれた顔をしながら、笑望使の背中を見送っていた。
最終試験場の試験官席には、すでに一笑神、歓笑神、大笑神、朗笑神の4人が座っていた。
「それでは、笑神試験の最終試験を始めます。ここまで来た天使の皆さん、持ち時間は各自3分です。その3分間、全力でネタを披露してください。では早速1番の方から始めましょう。前に出てきてネタを始めてください」
司会者に促され、1番目の天使から順番にネタを披露し始めた。4神はそれぞれの名前の通りの笑っていた。
一笑神は常に、にっこりと笑っており、歓笑神はネタを見ることに喜びを感じ、その場を楽しんで笑い、大笑神は大声で笑い、朗笑神は、ほがらかに笑っていた。
そして、ついに笑望使の順番が回ってきた。
(ついにこの時が来たか。笑神たち、そしてこの会場にいる才能を持たぬ天使たちよ、この笑望使様の才能に恐れおののくがいい!)
「202607番、笑望使です。ネタを始めます」
今日はいつも以上に天界は静かで平和だった。
「――では以上を持ちまして、笑神試験を終了とします。結果は後日お伝えします。天使の皆さん、お疲れさまでした」
集まった天使達もバラバラと試験会場を後にした。
「よぉ、お疲れ笑望使!うまくいったか?」
「もちろんや。全員俺のネタのレベルの高さに恐れをなしとったわ。これでばっちり不合格や!」
「会場を静かにしたのか?」
「もちろんや。あれだけのハイレベルなネタは、あいつらには理解でけへん。静まり返っとたわ!」
(やっぱりすべってたんだな)
笑友使は結果オーライだと思った。
「で、いつ結果発表なの?」
「しらん。後日や言うとったわ。結果別にもうええやろ。それより、ひとみさんや。わが愛するひとみさんが今どうなってるんや。様子見てくるわ」
「ちょっと待て!一人で行くな!変態!」
笑望使と笑友使は久しぶりに鬼塚ひとみの様子を見に行った。
――深夜1時過ぎのオフィスには、当たり前のように照明がついてた。そして永遠に終わることのないキーボードのタイプ音だけが響いていた。
「あ、ひとみさんや。やっぱり今日も綺麗や...ひとみさんはホンマ、美人さんやわぁ~」
ゴッ!硬いものが勢い良くぶつかった音がした。
「ふぅ~。あんなに顔を近づけやがって。ゴミが」
笑友使の足元には超大型の鉄製ハンマーが転がっていたが、笑望使の姿がオフィスから消えていた。
「何すんねん?自分!頭おかしいんか!?」
ボロボロの姿をした笑望使が笑友使に詰め寄った。
「何だ。もう戻ってきたのか。もっと強く振り抜けばよかったな、お前が気持ち悪いことするのが悪いんだろ」
「覚えてろよ。いつか復讐してやるからな。それより、ひとみさんや。やっぱり、あれから1回も笑ってへんわ。どないしょ」
「あんなちょっとほほ笑んだぐらいじゃ、だめだよ。爆笑ぐらいさせないと」
「ふん。笑友使、安心しろ。目の前におるやろ。笑いの天才が」
「え?どこに?ひょっとして、お前の事か?だとしたら、いい病院紹介するけど?そこでMR検査した方がいいな」
「いい加減、認めた方がええで。俺は笑神試験にエントリーされるぐらいの才能を持ってるんやで」
「うぜぇ、余計うざくなった。はぁ~、それじゃあ、さっさと鬼塚さんを爆笑させてこいよ。天才!」
「言われんでも、そのつもりや。でも今日はあかん。準備が必要や」
「どうした?あの変態人形がいるのか?」
「ちゃうわ。ひとネタでは爆笑させるんは無理や。ひとみさんの感情は無に近い。まずは感情を揺さぶってから、一気に押し切らんと爆笑させられへん」
「なるほど。一理あるな。アホはアホなりに考えてるんだな」
笑友使は少し関心した。
それから直ぐに、笑望使と笑友使は天界に戻った。
「どうやって、ひとみさんの感情を揺さぶるかが問題や。笑わせるのは俺の才能をもってすれば余裕やからな」
「得意のすべり芸な。あれは一級品だ」
二人が作戦会議をしていると、知らない天使がやってきた。
「笑神試験の結果でーす。どうぞ」
そう言い、笑望使に封筒を手渡した。
「ペラペラだな。まぁ、そりゃそうか。不合格通知だもんな。ペラペラが普通か。おい、どうしたさっさと話しの続きをするぞ」
「...格や」
「えっ?何?不合格だろ。何をもたついているんだよ」
「合格やねん!どないしょう、笑友使!これ見てや!」
手渡された1枚の用紙には確かに合格の2文字が刻まれていた。




